PROFILE

愛知県出身。数々のブランドの要職を経て、独立。現在は〈エフシーイー(F/CE.®)〉のデザイナーを務める。2017年にはデンマークのアウトドアブランド〈ノルディスク (NORDISK)〉世界初のオフィシャルコンセプトストアを東京にオープンさせる。バンド「toe」のベーシストとしても活躍。ファッションに限らず幅広いフィールドで才能を発揮している。
PROFILE

京都府出身。セレクトショップ「ジャーナル スタンダード」のプレスとして活躍後、独立。現在はファッションを中心としたフリーランスのディレクターとして様々なブランドの商品企画やビジュアルディレクション、PRで敏腕を振るう。一方、ナオキ・クゼ名義でミュージシャンとしての活動もしており、ライブ活動のほか、楽曲配信などもおこなっている。
バッグから服をつくるという作業は慣れていた。
ー はじめに、山根さんが〈マウンテンスミス〉のアパレルラインのディレクションをおこなうことになった経緯を教えてください。
山根:ブランドからお声がけをいただいたというのが理由です。こういうお話をいただくときに、まったく知らないブランドは受けないようにしているんですが、ぼくはむかしこのブランドのバッグを使ってたことがあるんですよ。中学生の頃かな? ヒップバッグの印象がとにかく残ってて。

ー ブランドの代名詞的存在でもある「ランバーパック」ですかね。
山根:このブランドのヴィジュアル撮影の際にスタイリストの高橋ラムダくんと話をしていたら、彼もむかし使ってたということでした。
久世:ぼくも学生時代に私服登校の学校に通ってて、カバンも自由だったんですけど、当時はアウトドアファッションが流行ってて友達が何人か〈マウンテンスミス〉のバッグを使ってました。たまに古着屋とかでも見かけますよね。
山根:そうそう。でもむかし使ってたというくらいで、久しぶりに名前を聞いて思い出しました。やるからには本筋をハズすようなことはしたくなかったので、アメリカにある本社を訪ねたんです。
ー コロラド州のゴールデンですね。
山根:そうです。すごく小さな街で、こじんまりとやっているような会社でした。社員6人くらいで手の届く範囲でビジネスをしているという感じ。商業的になると、よくも悪くもそれがプロダクトに反映されてしまうけど、〈マウンテンスミス〉はむかしからあるアイテムをすこしずつ自分たちの手でアップデートしながら大切にしているというか。それがすごくよくて。

山根:本社を訪れると手厚く迎え入れてくれて、むかしの資料やアイテムのアーカイブを見させてくれました。それによってぼく自身もグッと力が入ったというか、がんばっていいものをつくろうという気持ちを更に加速させました。
先ほども話したようにぼくらの世代はみんな使っていたブランドだし、そのアイコニックな部分を崩さないように大事にしながらデザインしよう、と。
ー とはいえ、〈マウンテンスミス〉はもともとバッグブランドですよね。そこから服をつくっていく難しさがあったと思います。
山根:そこは割とスムーズに考えられました。思えば、ぼくらが普段やっていることと同じなんです。〈エフシーイー〉もはじめはバッグブランドとしてスタートしたので。
ー なるほど。まったく畑が違うというわけでもないと。
山根:そうですね、バッグから服をつくるという作業は慣れていたんです。だから同じ落とし所を見つけられたというか。たとえばこれがランニングブランドで、そうした服をつくってくれと言われたら難しいんです。ぼくは普段走るわけじゃないので。でも〈マウンテンスミス〉の場合はすごく自然でした。

画面上で情報を整理しているだけじゃなにも生まれない。
ー 先ほどブランドの古い資料やアーカイブもご覧になられたという話がありました。そこから得られたものはありましたか?
山根:欧米では大半のブランドがサステナブルな取り組みをおこなっています。〈マウンテンスミス〉も同様で、とくにこうしたアウトドアに関わりがあるブランドは機能を最大限に引き出すために化学繊維を主力で使うし、環境などそうした問題に配慮していかないといけないことがスタンダードになっていて、大手アウトドアショップに商品を卸せないということもあるみたいなんです。だから服をつくる際も、そうしたブランドのアイデンティティは守ろうと思いました。
ー 山根さんご自身もそうした取り組みに対してもともと関心はあったんですか?
山根:取り組んでいく中で徐々に関心が生まれたという感じです。いろんなブランドと関わらせてもらうなかで、アニマルフリーに取り組んでいたり、今回のように環境に配慮したものづくりをしていたりするのを見ながら、気持ちがどんどん膨らんでいきました。出来ることが最大限にあるので、まずは自分たちもファッションを通してお客さんにそうしたことを伝えないといけない立場にあるというのは感じてます。

ー コロラドに行ったことで、より身が引き締まった感覚ですか?
山根:そうですね、大きな収穫でした。資料やアーカイブ、現行のアイテム、そしてスタッフがどうゆう働き方をしているのかというのを見ることで、〈マウンテンスミス〉がどんなことを大事にしているのか、その根っこの部分に触れることができました。それを知っているのと知っていないのではつくるものに大きな差が生まれると思うんです。
ー そうしたフィジカルな感覚が大切ということですね。
山根:ぼくは決して器用なほうではないので、実際にこの目で見ないと形にできないんです。コロラドへ行って、スタッフと面と向かって話したり、町の空気を感じたりしながら、「こうゆう環境で〈マウンテンスミス〉は生まれているんだな」というのを感じてはじめてそれをアイテムに落とし込めるんです。パソコンの画面上でいろんな情報を整理しているだけじゃなにも生まれないんですよ。