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FEATURE
YOONがアンブッシュ®を通して見つめ直した、日本のルーツ。
AMBUSH® 2020AW COLLECTION

YOONがアンブッシュ®を通して見つめ直した、日本のルーツ。

7月11日に幕を開ける、“カントリーサイド” と題した〈アンブッシュ®︎(AMBUSH®︎)〉の2020年秋冬コレクション。世界基準のファッションアイコンとして、多くの人がその動向を追うYOONによる最新のクリエイションとは? そして、〈ディオール メン(DIOR Men)〉ジュエリーディレクター就任の経緯、世界の構造すら変わってしまいそうなポストコロナ時代のブランド像まで、いま気になることすべてを語ってもらった。

  • Photo_Koichiro Iwamoto
  • Text_Kenichiro Tatewaki
  • Edit_Ryo Muramatsu

PROFILE

YOON

〈アンブッシュ®︎〉クリエイティブディレクター。2008年にジュエリーブランド〈アンブッシュ®︎〉をスタート。後にアパレルの展開も始め、ブランドを拡大しながら、2018年4月には〈ディオール メン〉のジュエリーディレクターに就任。今年の1月には、〈アンブッシュ®︎〉が「ニューガーズ グループ」の一員になることを発表した。

 

東京を拠点にするブランドとして、日本のルーツを採り入れたかった。  

ー 2020年秋冬コレクションのテーマは “カントリーサイド”。2019年春夏コレクションの “WAVES” を拝見したときも感じたのですが、普段メディアやイベントを通してお見かけしているYOONさんのイメージからすると、そういったナチュラルな世界観は少し意外な印象を受けました。これらは、プライベートで過ごす時間から影響を受けているのですか?

YOON:そうですか?(笑)。普段は朝4時半とか5時には起きて、いろいろなものを観たり読んだりしてインプットの時間に充て、そのあともずっとスタジオに籠っているからあまり休みが取れないんですけど、オフのときは旅行するのが好きで。自分が行ってみたかったところなど、何か理由を見つけて旅行するようにしています。今回の場合は、生地のリサーチや職人さんと会いたかったこともあり、2019年夏に行われたパリメンズファッションウィークが終わってから一週間ほどスタッフ数名と国内の地方を周ってきました。そのときに感じたことがコレクションに反映されています。

ー どんな事柄から影響を受けたんですか?

YOON:カントリーと謳ってはいますが、服から直接ではなく、影響を受けたのはメンタルの部分。普段の私たちの生活と比べて、時間がゆっくり流れている感じが気持ちよくて。ファッションの世界って未来のこと、将来のことばっかりじゃないですか? 一年半前から次のコレクションやプロジェクトの準備を始めて、この時期までにこれ、その次はあれって。常に次、次、次ばかりで、“いま” という時間を忘れてしまうことがあったんです。それがビジネスだからもちろんしょうがないんですけど、結果だけじゃなくてプロセスを楽しむことも大事なんじゃないかとふと思いました。いろんなことが頭のなかでグチャグチャになったときに、時間が止まっているような田舎のマイペースさが心地よかったんです。

“カントリーサイド” をテーマにした〈アンブッシュ®〉の2020年秋冬コレクション。

ー 最近はあえて特定のテーマを設けずにコレクションを発表するブランドも多いなか、〈アンブッシュ®〉に関してはYOONさんの実体験が基になっているんですね。

YOON:そうですね、エレメントとして取り入れています。でも、最近は少し考え方が変わってきました。少し前までは、例えるならハリウッド映画のようにクライマックスに向けて駆け抜けていたんですけど、あるとき昔から好きだったウォン・カーウァイ監督やデヴィッド・リンチ監督の作品を改めて観ることがあったんです。彼らの映画って、ストーリーがありそうでないじゃないですか? ときにはキャラクター設定と辻褄が合ってないこともあったり。でも裏を返せば、一瞬一瞬を大切にしているんですよ。それらが全部収まってひとつの映画になっていることに美しさを感じて。私も同じように試したくなって、テーマに捉われず、わざとノリでやっている部分もあります(笑)。実際にその場にはいるけど、次来るんだったら何を持っていくかとか、楽しく想像しながらアレンジしました。

ー そのアプローチ方法を採り入れたのは、今回のコレクションから?

YOON:はい。前回までの方が、ひとつのコレクションとしての世界観はより意識していました。例えば、“WAVES” だったら、ハワイに住んでいたこともあるくらいで、よく行っていたし、ストーリーとして完成させたかった。2020年春夏コレクションなら、オリンピックの話もあったから東京、かつアニメなどのカルチャーを形にしたかったんですが、今シーズンはよく言えば締まりのない、フランス映画みたいなやり方でもいいのかなって(笑)。

ー “カントリーサイド” と聞いたとき、勝手にYOONさんの故郷であるシアトルも関係しているのかと想像しました。

YOON:正直そのときはシアトルのことは全然考えていなかったんですけど、無意識のうちにリンクしていたかもしれませんね。私の実家は、周囲に自然しかない田舎なんです。本当に静かで、昼間でも聴こえてくるのは鳥の声くらい。子どものときはそれがすごく嫌で、ファッション雑誌を読みながら「なんで私はここにいるんだろう」とか考えてたほど(笑)。でも、大人になったいまでは自然に囲まれる素晴らしさが理解できるし、仕事に忙殺されていたからこそそういった環境を探していたのかもしれません。

素材や配色などにMA-1らしさを残しつつも、フロント部分には着物の前合わせのディテールをプラス。着物コートは、和服から着想を得た今シーズンを象徴する一着。コート ¥110,000+TAX

イージーパンツとデニムパンツをミックスしたハイブリッドなアイテム。YOONが “世界一” と認める国内のデニム工場によるジャカード織りで、雲のようなノスタルジックな柄を表現した。パンツ ¥65,000+TAX

地方で偶然見かけたブルーシートに着想を得てつくられたウィメンズのコート。ブルーの色味はもちろん、AQUA DIMAという柔らかくも防風防水性を持ち、耐摩耗性に優れた素材感にもその名残を感じる。コート ¥100,000+TAX

ー 服のディテールに話を移すと、和のエッセンスが随所に見られます。1990年代後半のジャパニーズカルチャーをインスピレーション源に選ばれるデザイナーは多くいますが、それよりも前の時代にフォーカスされた理由は?

YOON:それが自分のベースだから、ですね。〈ディオール メン〉に関わるようになって、ああいう大きなヘリテージブランドは自分たちのルーツをすごく大事にしてることを肌で感じたんです。アジア人にはそれがあまりない。私は韓国にルーツがありますが、東京を拠点にするブランドとして、日本のルーツを大事にすべきだと思ったんです。それを、いま形にしている自分たちの世界観の一部にしたい。

ー ぼくらが生きている時代に限定するのではなく、広義での日本のルーツというか。

YOON:日本製のデニムのクオリティは世界でもトップクラスだし、京都で見た刺し子の技術も本当に素晴らしかった。いままでは新しいもの、将来のことばかりを考えていた反面、日本のルーツにある答えを探してこなかった気がするんです。「古いからダサい」ではなく、日本ならではのいいところを自分たちのものにしたかったんですよね。

INFORMATION

AMBUSH® WORKSHOP

住所:東京都渋谷区渋谷1-22-8
営業:12:00~20:00
電話:03-6451-1410

www.ambushdesign.com

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