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10周年の節目を迎えたF/CE.のこれまでとこれから。
F/CE. 10th PROJECT

10周年の節目を迎えたF/CE.のこれまでとこれから。

「振り返ると、やっぱり感謝しかないですね」。ブランド誕生10周年という節目を迎えて、〈エフシーイー(F/CE.)〉のデザイナーである山根敏史さんはそう語りました。これを記念して、「F/CE. 10th PROJECT」と題した企画をスタート。作家やアーティストなどが集まるイギリスのコミュニティ「ダイヤルハウス」をテーマに合計7ブランドとコラボレートし、ウェアからアウトドアギアに至るまで、さまざまなアイテムをリリースします。そのプロジェクトについてはもちろんのこと、ブランドのこれまでや未来について、山根さんに語ってもらいました。

  • Photo_Takuroh Toyama(Portrait)
  • Text_Yuichiro Tsuji
  • Edit_Ryo Muramatsu

お互いの表現していることは崩したくなかった。

ー 今回コラボレートしたブランドは、どんな想いでお声がけされたんですか?

山根:先ほども話した通り、この10年間でたくさんの方々と一緒にお仕事をさせてもらって、ぼくの中でいろんな組み合わせが浮かんでいたんです。ただ、今回のフィロソフィーを共有できる人とやりたいと思いました。それが〈マウンテンリサーチ〉の小林さんであったり、〈ディガウェル〉の西村くんでした。

ー ものづくりはどのように進行したんですか?

山根:デザインはお任せなんですが、生地は〈エフシーイー〉のオリジナルです。きちんとテーマを理解してもらった上で製作を進めました。お互いの色というか、表現していることを崩したくないというのが前提としてあったんです。

例えば、〈ディガウェル〉の場合はテーラリングが得意だから、「ダイヤルハウス」のコミュニティにいる人が外へ出かけるときの正装の服をお願いしたいと伝えて。そうしたら彼なりにそれを解釈して、イギリスでの正装はワークウェアなんじゃないかということで、〈ヤーモ〉というワークウェアをつくっている工場に生産してもらったら面白いと思う、というような答えが戻ってきたんです。

ー なるほど。

山根:〈ヤーモ〉はイギリスのノーフォークという港町にあるんです。そこでブルーワーカーたちの作業着をつくってるんです。なのでこのトリプルネームのアイテムに関しては、〈ヤーモ〉にある型を〈ディガウェル〉がデザインを編集して、うちの生地で縫ってもらったという流れですね。工場の人たちは「こんなツルツルした生地は縫えない」なんて言ってたんですけど、仕上がりはやっぱりすごく堅牢でいいですね。

DIGAWELL × YARMO × F/CE.
〈ヤーモ〉のボイラースーツを〈ディガウェル〉流にアレンジ。生地は〈エフシーイー〉が「帝人」と開発したオリジナルの「SOLOTEX」を使用。「シワになりにくくて、糸の組成によるストレッチ性もある素材です。基本はワークウェアなので、濡れたらすぐ乾くというのもポイント。とはいえ化繊に見えないところがこの生地のいいところですね」と山根さん。ワークウェアのような野暮ったさは解消されるも、縫製などのクオリティはそれと同等で堅牢なのも魅力的。ボイラースーツ ¥58,000+TAX、ドレス ¥45,000+TAX

ー 〈ディガウェル〉とはレコードバッグもつくったんですよね?

山根:そうなんです。これは絶対につくりたいもののひとつでした。西村くんはヴァイナルコレクターでもあって、めちゃくちゃ掘りまくってるんですよ。ぼくもレコードが好きですし、「レコードバッグでビールとかランチボックスが運べたら最高だよね」なんて話からこれをつくることになりました。

ー プリントされているグラフィックや文字には、どんな意味が込められていますか?

山根:RIAAカーブというもので、レコードの決まりを示すものみたいで、ぼくは知らなかったのですが、さすが西村くんという内容のグラフィックになっています。文字は「CRASS」のメンバーがつくったフォントがあって、それを使っています。著作権フリーで解放されています。

ー DIYというか、そうした精神が見え隠れしているところがユニークですね。

山根:アナルコ(無政府)パンクスってすごいですよね。自分たちで居住スペースをつくって、そこで自給自足して、こうしたフォントまで自分たちでつくっちゃうっていう。

DIGAWEL × F/CE.
「〈ディガウェル〉の西村くんはヴァイナルコレクターで超レアなレコードもいっぱい持ってるんです。音楽というのはぼくたちの共通点で、それでつくることになりました」と山根さんが語るアイテム。7インチ、12インチのレコードバッグをベースに、ソフトクーラーボックスの構造で製作。プリントにはコミュニティの創設者であるバンド「CRASS」のオリジナルフォントを使用。ヴァイナルバッグ ¥7,000+TAX(12inc)、¥5,000+TAX(7inc)

コミュニティの中心人物の服は小林さんにお願いしたかった。

ー 一方で〈マウンテンリサーチ〉に関しても、やはりアナーキーな姿勢を感じるブランドですね。

山根:そうなんです。〈マウンテンリサーチ〉の小林さんはぼくらが〈ノルディスク〉のお店をスタートするときにお世話になった方で、プライベートでもよくご飯に連れて行って下さるんです。独自の哲学を持っていらっしゃって、〈マウンテンリサーチ〉が発信するメッセージに共感することが多くてお願いさせてもらいました。

ー アナーキストシャツとボンテージパンツですね。

山根:ぼくの中で〈マウンテンリサーチ〉といえばこのアイテムなんです。でも小林さんに「これとこれでお願いします」と言うのはやっぱり勇気が必要で…(苦笑)、それでも伝えたら「いいよ」って快く引き受けてくれました。

Mountain Research × F/CE.
〈マウンテンリサーチ〉の定番ともいえるアナーキストシャツとボンテージパンツを〈エフシーイー〉のオリジナルの生地で製作。山根さん曰く「シャツはすごく大柄なバッファローチェックの生地で、尾州で織っているものです。生地の取り都合も悪いし、普通だとつくってもらえないような生地なんですが、無理を言ってわがままを聞いてもらっています(笑)」とのこと。パンツはオリジナルのバーズアイ「SOLOTEX」を使用。左ポケットには両ブランドのロゴをプリントしている。アナーキーシャツ ¥38,000+TAX、ボンテージパンツ ¥42,000+TAX

ー 〈ディガウェル〉とのコラボアイテムが正装なのに対して、こちらのアイテムは何かストーリーがあるのでしょうか?

山根:コミュニティの中心的な人物が着る服が欲しくて、だからこそアナーキストシャツとボンテージパンツなんです。

ー 今回のコラボレート全体を見渡すと、ネイビーやブルーが基調になってますよね。これには意味があるのでしょうか?

山根:これは「ダイヤルハウス」とは関係ないんですが、ロイヤルブルーはイギリス王室を表す色であったり、国旗にも使われている一方で、労働者の色でもありますよね。そうした二面性を表現したかったんです。〈エフシーイー〉のインラインではあまり馴染みがないんですけど、そういう意味でも特別な色になったと思います。

垣根を乗り越えてできるという点も自分たちらしい。

ー 先ほど「コミュニティで使うツールとして」というお話がありましたが、〈ノルディスク〉や〈ヘリノクス〉とコラボレートしているところも山根さんらしいなと思いました。

山根:〈ノルディスク〉というブランドに出会ったことも、この10年で大きなターニングポイントになりました。ぼくらのひとつのDNAとして、やっぱり “機能” というのは外せないんです。〈ノルディスク〉は色で完全別注させてもらったんですけど、〈ヘリノクス〉は今回はじめての取り組みなんですが、自分たちのオリジナルの生地を使わせてもらって、インラインよりも強度が高くて軽いアイテムをつくることができました。

どちらもブランドの本国の方と直接話をしたんです。やりとりは当然英語になるんですけど、10年の間に海外のお客さんも増えて、うちも英語を話せるスタッフが増えたからこそできたコラボレートだと思ってます。そうした垣根を乗り越えてできるという点も、自分たちらしいかなと。

NORDISK × F/CE.
コミュニティに必要な居住スペースとして〈ノルディスク〉の定番テント「REISA 6」を今回の企画のために完全色別注。「少しならデザインをいじれるということだったんですが、ぼくらはテントづくりのプロフェッショナルではないので、あえてそのままにしました。それは、ドーム型テントのパイオニアである〈ノルディスク〉に敬意を払う意味もあります。コヨーテは〈エフシーイー〉でもよくアクセントに使っている色ですね」と山根さん。レイサ 6 ¥165,000+TAX

Helinox × F/CE.
〈ノルディスク〉と同様、コミュニティに必要なツールとして〈ヘリノクス〉のタクティカルチェアとテーブルを別注。「これは生地をオリジナルのものに変えてもらいました。横糸にコーデュラナイロン、縦糸には防弾チョッキにも使われるスペクトラ糸を使用していて、強度が高く軽量な生地なんです。それを確認するための生地の強度テストがあったんですが、ちゃんとパスしました」とのこと。ポールのグリーンは「レジメンタルタイのような色合いの緑で、イギリスのアイビーを表現しています」。タクティカルチェア ¥19,000+TAX、タクティカルテーブルM ¥23,000+TAX

ー 〈アンブロ〉もはじめての取り組みですか?

山根:そうですね。「ダイヤルハウス」って誰でも泊まれるんです。それで、やっぱりそこに集まるのはパンクスなどが多い。おそらくフーリガンも来ているんじゃないかと思って、彼らがスポーツ観戦のときに着ているジャージを絵として思い浮かべました。ベースになっているのは1998年のイングランドナショナルチームのユニフォームで、ベッカムがキャプテンをやっていた頃のものなんですが、それがすごいかっこよかったんです。

ー それをロイヤルブルーで表現したんですね。

山根:それに加えてシルエットやパターンに関してもこちらで引いています。街着としてきちんと着られるようにアレンジしました。

UMBRO × F/CE.
今回の企画ではじめてコラボレートした〈アンブロ〉。1998年のサッカーW杯でイングランド代表が着ていたユニフォームをアレンジ。「フーリガンがこのユニフォームを着ているのを見て、かっこいいと思って別注しました。ブランドロゴの下にあるパッチは、パンクスの缶バッジのようなイメージです。少し厚みのあるプリントで、側面をよく見るとオレンジ色になっています」。トラックジャケット ¥29,000+TAX、トラックパンツ ¥28,000+TAX、チームジャケット ¥24,000+TAX

ー 〈オルフィック〉は「BACK DROP BOMB」のヴォーカルである白川貴善さんのブランドですよね。ここもなんとなく山根さんとの繋がりが見えます。

山根:そうですね。ブリティッシュトレーナーがぼくは好きで、この靴のサンプルをたまたま貴くんが履いてたんです。「それ、めっちゃいいですね」っていう話をして、「実はこういう企画があるんですけど」と相談したら、一緒につくらせてもらうことになって。靴をやるならシューズメーカーとやりたいというのがあったので、ちょうどいいタイミングで貴くんと話ができました。

ORPHIC × F/CE.
ブリティッシュトレイナーをベースにした〈オルフィック〉の一足に、山根さんのアイデアを重ねたアイテム。「メッシュ部分にフィルム状の生地を重ねることで防水性を高めました。通気性のない生地なので服には使われないんですが、靴やバッグのパーツとして使うのは面白いかなといろいろ試行錯誤しました。こうやって生地の可能性を実験的に追求するのも好きなんです」と山根さんが教えてくれた。ブリティッシュトレーナー ¥27,000+TAX

INFORMATION

ROOT 

住所:東京都渋谷区代官山4-5 J&Hビル 1階
電話:03-6452-5867
オフィシャルサイト
10th 特設サイトページ

※ご紹介した「F/CE. 10th PROJECT」はバイナルバッグが7月23日(木)から発売。その他のアイテムは予約受け付け中。7月23日から26日(日)の連休中は全ラインナップを「ROOT」でチェックできます

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