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航海をともにした2人の言葉で紡ぐ、ナナミカ ニューヨークができるまで。
Hello, nanamica NEW YORK!

航海をともにした2人の言葉で紡ぐ、ナナミカ ニューヨークができるまで。

昨今のアウトドアブームよりずっと前から、アーバンアウトドアを標榜してきた〈ナナミカ(nanamica)〉。これまで24カ国に販路を築き、その名を世界に知らしめてきました。そして2020年8月、ついに海外初出店を果たしたのです。選んだ地は大都市、ニューヨーク。コロナ禍という荒れ狂う大波に見舞われながらも、めでたくオープンを迎えた「ナナミカ ニューヨーク」。代表の本間永一郎さんと、店舗設計を手がけた建築家・クマタイチさんに、その苦難な道のりについて聞きました。

移動できるし大きさも自在。仮設の雰囲気を持った“海の家”を作った。

ニューヨーク店の内観。大きな窓と高い天井で、開放感のある空間設計になっている。

ー 店舗の内装は、どのように決まっていったんでしょうか?

本間:最初に2人で話したときに、日本でこれまで作ってきた店舗よりも、少しモニュメント性みたいなものを出したいというようにお願いしました。とくにうちは「海」というキーワードを大切にしているので、そこからのインスピレーションも期待しつつ。とはいえ、あまり細かく指定はせずに、タイチくんから出てくるものも楽しみにしていました。

ー クマさんは、それを受けてどう感じて、どう表現しようと思ったんでしょうか?

クマ:まず受け皿になるようなものを作りたいと思ったんです。それは、普段から空間を作るときには大事にしていることでもあって。もうひとつが家具を作るようにデザインしたいとも思いました。

ゆくゆくはこの場所で、ワークショップやイベントも開催する予定。

クマ:つまり、たまたまそこにあるけれど、そこじゃなくても成立するような内装にしたかった。そこに「海」というキーワードを重ねて、海の家を連想するような、仮設っぽい雰囲気を表現しようと思ったんです。このアイデアはもっと小さいところで実現できるし、もっと大きくすることもできる。そうしたフレキシビリティーを感じさせる空間になっていると思います。

ニューヨーク店で限定販売されるTシャツ。

〈hibi®〉に別注したマッチ型のお香は、オープン記念のノベルティとして配られている。

ー 日本のブランドである〈ナナミカ〉の店舗を、日本人であるクマさんが手がける。そんな日本感も、内装から感じられます。

クマ:あまり派手なことをしているわけじゃないですが、今回は日本人のチームで進めたこともあって、ちょっとしたディテールに、日本的な要素が自然と表れているかもしれません。棚のつくりとか、壁のざらつきの感じとか。「和」そのものではないけれど、そうした手触りは随所に、どことなく感じられるはずです。

ー そういう意味では、ニューヨーカーには新鮮に映りそうです。

クマ:先ほども話したように、個人的には、空間としてのみ成立するものを作るのにはあまり興味がなくて、あくまで受け皿を作りたいと思っています。なので、コンテンツが入ることではじめて完成と言える。いわば「素うどん」みたいな。そういうイメージは常に意識していました。

ー トッピング次第で表情も変わるし、どんどん美味しくなっていくような。

クマ:でも、出汁自体もめちゃくちゃ美味い、みたいな。

本間:そういえば、ふたりで、よくうどん屋で打ち合わせしてたよね。

クマ:でしたね(笑)

洋服作りと同じ。できあがる頃には次の店舗のことを考えてる。

ー ふたりにとって、ニューヨークはどんな場所ですか?

クマ:向こうで生活していると、自分が外国人だっていう感覚を忘れちゃうんですよね。あまりにもいろんな文化や、ひとが混在しているから。たとえば日本には新大久保みたいな外国人街がありますけど、ちょっと特殊で独立した場所のイメージがあるじゃないですか。でも、ニューヨークにある中華街もイタリア人街も、街のパーツの一部という感じ。ひとも然りなんでしょうね。

本間:日本も、昔に比べてずいぶん多様化したとはいえまだまだです。大きな流れに全体が染まってしまう風潮がどうしてもあります。でもニューヨークは、それが常に10色も20色もある感じがする。パワフルでチャレンジングな気風も好きです。ビジネスにおいては強烈な面もあって、日本人みたいに大人しいと会話にならないと思うこともありますが、そのエネルギーにも刺激をもらってます。

ー オープンを迎えて間もないですが、今回タッグを組んだことへの手応えは感じていますか?

本間:タイチくんと一緒に作り上げたことで、新しい価値が生まれているんじゃないでしょうか。じつは、これまで国内の店舗デザインにおいては、あえて同じものを作ってこなかったんです。家族でも、親子や兄弟で顔が違っているように、店舗にもそれぞれ個性を持たせていました。でも、これから増やしていく海外店舗については、コアの考えをキャリーしていこうと考えています。

クマ:先ほどの受け皿の話にも通じますが、基本的には場づくりをしたいんです。だから、単純に洋服を見やすい空間にするだけでなく、場としての居心地のよさは追求したつもりです。あと、いまはネットで簡単に洋服を買える時代なので、お客さんやショップスタッフ、ブランドとの接点になるような場にしたかった。しかも今回の場所は自宅と事務所の間のロケーションだったので、「自分が行きたいと思えるかどうか」も意識しました。これからどんな場所になっていくのかは、僕自身が一番楽しみにしているところです。

※ニューヨークはいま、コロナの新規感染者数が落ち着き、経済活動も徐々に再開しています。「ナナミカ ニューヨーク」もコロナが落ち着くまでは、時間を短縮しての営業です

INFORMATION

nanamica NEW YORK

住所:125 Wooster St., New York
電話:+1-347-274-8300
公式ウェブサイト

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