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リブートするアメリカ最古級のカットソーブランド。フルーツオブザルームの過去・現在、そして未来。
FRUIT OF THE LOOM by Vintage Buyers

リブートするアメリカ最古級のカットソーブランド。フルーツオブザルームの過去・現在、そして未来。

1851年にアメリカのロードアイランド州で創業したカットソーブランドの〈フルーツオブザルーム(FRUIT OF THE LOOM)〉。アンダーウェアやTシャツの老舗であり定番のブランドとして親しまれてきましたが、日本国内では数年前よりリブランディングを実施。160年を超える歴史をもとに、現代のライフスタイルにフィットするべく新たな展開を試みています。そこで、ヴィンテージ市場で見かけることも多い〈フルーツオブザルーム〉の現在・過去・未来と魅力について、ヴィンテージウェアに精通する〈ミスタークリーン(Mr.Clean)〉の栗原さんをお招きして語って頂きました。

PROFILE

栗原道彦

1977年、千葉県生まれ。95年に原宿の名店「ロストヒルズ」に入社し、バイヤーとして活躍。2011年に独立し、フリーランスのバイヤーとして活動を開始。2018年には自身のショップ「Mr.Clean」を立ち上げる。数多くの古着の中から手触りだけで珠玉のヴィンテージをピックアップする様子から“ゴッドハンド”の異名を持つ、ヴィンテージのスペシャリストとして知られている。

90年代のフルーツオブザルームは抜群のシルエット。

ー まず、ヴィンテージ市場での〈フルーツオブザルーム〉の立ち位置について教えてください。

栗原:古着の市場で出てくる〈フルーツオブザルーム〉のTシャツだと、いわゆるプリント用のボディとアンダーウェア用のボディの2種類をよく見かけます。実際にぼくも手持ちのTシャツを確認したら、20枚ぐらい〈フルーツオブザルーム〉のアイテムを持っていました。そう考えると、やはり古着市場で〈フルーツオブザルーム〉の存在感はかなり大きいですね。

ー 栗原さんがヴィンテージのTシャツを買うときはボディのブランドや質に注目して買うのでしょうか?

栗原:基本的にはプリントに注目して買いますね。ただ、〈フルーツオブザルーム〉だけに限らずTシャツ全般に共通する話なのですが、同じサイズでも時代によってシルエットが異なるんです。そのため、現地のスリフトショップやディーラーのストックルームに行った時はTシャツが吊るされた状態で袖とネックを見て年代を確認し、気になる年代のものはプリントをチェックするようにしています。

こちらのボディはシングルステッチの袖やネックリブの幅から90年代のものとわかる。

ー いま栗原さんが気になっているヴィンテージTシャツの年代はありますか?

栗原:10年ほど前は70年代頃のアイテムをよく着ていましたが、今はもうほとんど手放してしまいました。逆に今は90年代頃のアイテムを着ることが増えましたね。90年代のTシャツは全般的にシルエットがワイドで身幅の割に着丈が短めなのですが、他のTシャツブランドと比べると〈フルーツオブザルーム〉のTシャツは着丈が長めで着やすいシルエットなんです。

ー 確かに当時モノのほかのブランドと比べて着丈が長く、着やすい印象があります。

栗原:ファッションブランドというよりもデイリーウェアブランドとしてのこだわりがあったからなのか、あまり流行に左右されないタイプのブランドなんでしょう。特に90年代の〈フルーツオブザルーム〉のXLは個人的にも好きなシルエットですね。他の年代よりも大きめにつくられているので、サイズ感的にもいまの雰囲気にマッチしているんだと思います。

ー 最近は90年代頃のアイテムも古着市場では人気ですものね。

栗原:そうですね。特にTシャツに関しては、80年代以前のモノよりも90年代や2000年代のアイテムに注目が集まっています。特にバンドTやアート系のTシャツなど、グラフィックの良さだけじゃなくバックボーンとカルチャーが存在するアイテムが人気です。

ー 栗原さんのコレクションも、古いものというよりは90年代前後のものがほとんどですよね。しかもどれもアートやサブカルチャーが背景にあるものばかり。お気に入りを幾つか紹介していただけますか?

栗原:では今日持ってきた中から5枚ほど選んでみましょうか。

栗原さんのショップ『Mr.Clean』の由来となったアメリカの洗剤メーカーのキャラクターをパロディ化したTシャツ。

栗原:90年代頃の〈フルーツオブザルーム〉のロンTをボディに使用し、アメリカのストリートブランドがプリントしたものです。ロンTなのも当時っぽいですよね。もともとは白人のキャラクターなのですが、黒人にアレンジされています。

犬をモデルにポートレートを撮影する写真家、ウィリアム・ウェグマンのフォトプリントTシャツ。

栗原:アメリカでは美術館のスーベニアショップ等で販売されていたものですが、90年代には日本のセレクトショップでも取り扱われていました。左のTシャツは着るとネクタイを締めているように見えるなど、ウィットが効いています。

モーリス・センダックの絵本『かいじゅうたちのいるところ』のプリントTも見つけたら必ず手に入れるモチーフだそう。

栗原:左のTシャツはアメリカの劇団のツアーTシャツのようです。買い付けではTシャツを何万枚もチェックしますが、モーリス・センダックのTシャツが見つかるのは年に数着です。

イラストレーター、ケン・ブラウンのグラフィックTシャツはコピーライト表記から91年以降のものとわかる。

栗原:スペイン語の男性名詞と女性名詞につける冠詞の違いをフラッシュカード風にイラストで説明したものです。ケン・ブラウンはセサミストリートの制作等もしていました。

シアトルにあった覗き部屋のスタッフTシャツは“HAVE AN EROTIC DAY!”
というキャッチコピーとTMマークが入るところがお気に入り。

栗原:本当は商標を申請してないのに、洒落でTMマークをつけているのかもしれません。 同じシアトル出身のバンドであるニルヴァーナのアイコンと似ていて、一説によるとこのニコちゃんが元ネタになったとも言われているようです。

左から80年代、同じく80年代、2000年代、90年代頃のタグ。
「基本的に古ければ古いほどフルーツの絵柄がリアルになります。
BESTの文字が入る黒タグはコットンポリ混紡のボディに使われていたものになります」

ー 実はあまり〈フルーツオブザルーム〉に対してボディそのものに年代ごとの違いがあるとは思ってなかったので、意外でした。

栗原:まったくそんなことありませんよ。40年代頃のヘンリーネックや50年代頃のスウェットシャツも見かけますし、60年代頃まではミリタリーやカジュアルなシャツ等も存在していて古着市場に出てきます。サーマルやパーカなども存在しています。

50年代の〈フルーツオブザルーム〉のスウェットシャツ。
ほかのブランドに比べて着丈が長く着易いシルエット。出てきても無地のものがほとんどなため、
栗原さん曰く「運動着ではなく普段着として愛されていたのだろう」とのこと。

ー Tシャツは馴染み深いですが、ヴィンテージスウェットの質も高いですね。

栗原:ただ、やはり〈フルーツオブザルーム〉が古着市場で存在感を放ちはじめるのは、70年代から80年代にかけてプリントTが登場するようになってから。60年代頃までのプリントTシャツってカレッジ物やミリタリー物、企業物ぐらいしかなくて、それ以降にグラフィック系のバンドTやブランドもののシャツが出て来るんです。70年代に〈フルーツオブザルーム〉から派生したプリント用ボディのラインを立ち上げるまでアンダーウェアが中心だったのに、短期間でそこまでシェアを獲得できたのは凄いですよね。

ー これも〈フルーツオブザルーム〉のクオリティの高さゆえ、といったところでしょうか。

栗原:70年代になるとTシャツを肌着や運動着ではなくファッションとして1枚で着るのが当たり前になるので、ちょうどその時流に乗れたということなんでしょうか。あとはポケTもフルーツは70年代頃までスクエアポケットだったので、それも古着市場で人気があります。

ー そう言えば、〈フルーツオブザルーム〉のボディを使ったカレッジ物は見かけない気がします。

栗原:確かにそうですね。スポーツに強いブランドはアスレチックウェアとして大学生協などで販売されていたけど、〈フルーツオブザルーム〉は量販小売店での取り扱いがメインだったという風に販路が違ったんだと思います。なので、70年代頃の〈フルーツオブザルーム〉ボディの場合は小ロットで刷られたのであろう企業系のプリントが施されたTシャツが多いですし、スウェットシャツでも〈フルーツオブザルーム〉のボディでカレッジのプリントが入ったアイテムはほぼ見ないですね。

ー いまでもアメリカ国内で〈フルーツオブザルーム〉の取扱量が多いのはウォルマートなのだそうです。

栗原:そうなんですね。スーパーマーケットで〈フルーツオブザルーム〉のパックTが山積みされている姿はアメリカらしくて壮観ですよね。印象的なロゴですし、売り場でもものすごく目立ちます。あと、なんとなくブランド名が人の名前じゃないところも好きなんです。

INFORMATION

FRUIT OF THE LOOM ZOZO

zozo.jp/shop/fruitoftheloom/

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