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コモリとウィズム、感覚的なイズム、ユナイトデニム。
COMOLI × WISM

コモリとウィズム、感覚的なイズム、ユナイトデニム。

〈コモリ(COMOLI)〉と「ウィズム(WISM)」。幾度となくセッションを重ねてきた両者による新たなプロダクトが、この度リリースとなります。今回つくられたのは“デニム”という普遍的なアイテム。「自分のブランドで5ポケットのデニムパンツをつくってこなかった」と語るのは、デザイナーである小森啓二郎さん。一方で「小森さんがつくるデニムが欲しかった」と話すのはショップのコンセプターである堀家龍さん。このアイテムが生まれた背景には、独自の関係性を築いてきた二人だからこそ理解し合える、あくまで“感覚的”なセンスの符合がありました。そうした分かち合いはどのようにして生まれたのか? 今回の別注デニムを軸に、二人の関係性に迫ってみましょう。

  • Photo_Shinji Serizawa(except official look)
  • Text_Yuichiro Tsuji
  • Edit_Ryo Komuta

自分でやってみたいと思わないと別注はやらない。

ー そうして蜜月関係を築きながら、これまでにも何度か別注企画はされていますよね。

小森:はい。ただ、基本的にぼくは別注をやりたくないんです。インラインの展示会が終わったら、すぐに次へと切り替えたいので、別注をやると引きづられちゃうんですよ。でも、バイヤーさんに話をされるとやりたくなってしまう。

ー それは面白そうな企画だからということですか?

小森:そうですね。企画をするのが上手なバイヤーさんが何名かいて、そのうちのひとりが堀家さんなんです。基本的に自分で着たいものや、つくりたいものしかつくってないので、「アニバーサリーなんでやってください」と言われても自分としてはピンとこないんです。「このアイテムのこのサイズが欲しい」とか「こういう形が欲しい」って言われると、アリかもしれないと思うんです。今回のデニムもそのパターンですね。

小森:結果的にそうしたアイテムが次シーズンのアイデアにつながったりもして。だから別注は、自分でやってみたいと思わないとやらないです。

堀家:前に企画を断られたことがあるんですよ。元ネタとなる服を持って「これをベースにこういうアイテムをつくりたい」という話をしたら、2週間くらい経って「それは単なるリプロダクトになってしまう」というのを丁寧に伝えてくれて。

小森:それを伝えるのにすごくドキドキしたんですよ。怒られないかなって(笑)。

堀家:怒るわけないじゃないですか(笑)。正直、腑に落ちてなさそうだったし、進行しない可能性もあるっていうのはなんとなくわかってたんです。それをすぐに言えなくて、気を使ってるんだろうなと思ってましたよ。

堀家:でも、そこでフラれた経験があるからこそ、次からは思ったことをぶつけようと思えたんです。シンプルにそれを着たいっていう気持ちを伝えようって。

小森:気持ちをぶつけてくれるバイヤーさんは、本当にその服が着たいんだろうなっていうのを感じるんです。その上でぼくも「いいな」って思えたらやりたくなるというか。ビジネスの匂いがするとあんまりできなくて。

アパレル史上、いちばん穿きたいデニム。

小森:今回のデニムも、最初は断ろうかと思ったんですよ。デニムは定番ブランドでいいじゃんって思ってたんです。〈リーバイス〉とか、〈リー〉、〈アーペーセー〉があれば十分だし、わざわざ自分でつくる必要がないと感じていて。

ー それにも関わらず今回実現したわけですよね。堀家さんは最初にどのように企画を持ち込まれたんですか?

堀家:インラインでやっているバギーテーパードの5ポケットパンツがあるんです。モールスキンでつくられているものだったんですけど、シルエットがすごくいいなと思っていて。でも、モールスキンだと穿ける時期が限られるじゃないですか。だから小森さんがつくるデニムが欲しいっていう話をさせてもらって。でも、なんか腑に落ちていなくて(笑)。だから正直、半々くらいかな、もしかしたらつくれないかもな、というのは感じていました。

小森:頭のなかで完成図が思い描けなくて。でも、サンプルをつくってみようという気になったんですよ。普段インラインでつくっているデニムで、11オンスの軽い生地があるんですけど、このワイドなフォルムとその生地を組み合わせたら意外といいかもなって。

ー それでつくってみたら、思いの外よかったと。

小森:想像を超えてきましたね。ただ、堀家さんからはブラックもつくりたいっていうお話をいただいていたんですが、それはお断りしました。この薄手の生地は大戦時代のデニム地を参考にしていて、その当時はブラックデニムを生産していないんです。ぼくは服をつくるときに、生地、縫製、デザインや加工の時代設定を決めていて、それを組み合わせた結果、どの時代にもないものづくりをしているんですけど、これでブラックをつくってしまうと辻褄が合わなくなってしまうので。

ー その一方で、このブリーチ加工の色はどのようにして生まれたんですか?

小森:この別注デニムがすごくよかったので、インラインでも影響されて、テーパードではないバギーシルエットのデニムをつくろうと思ったんです。そのときになんとなくワンウォッシュとブリーチをやろうと頭のなかで考えていました。デニムを思いっきり穿き込んで色落ちしたというイメージで。その色見本をつくるために「ウィズム」でつくったサンプルにブリーチをかけてみたら、すごく「ウィズム」っぽい色に仕上がって。

堀家:90年代のブリーチというか。で、このときすぐに小森さんから写真が送られてきて、「うおぉぉ!」ってなったんです。写真なのにその凄味みたいなものが伝わってきて。うちのスタッフに実際にサンプルを見せたときも、「アパレル史上、いちばん穿きたいデニムです」って言ってるやつもいて。サンプルのサイズは3だったんですけど、普段“1をはいてるやつなのに「これ、ぼくは3ですね」とかわけのわからないことまで言い出して(笑)。

どの別注も一度うちのスタッフに見せるんですけど、みんながこれを試着して「うわぁ、すげぇ」ってアガっている姿を見たときは久しぶりに目頭が熱くなりましたね。その日はみんな「あのデニムどうする? どうやって穿く?」みたいな話をずっとしてて。そのくらい高揚感を与えるというか、盛り上がったんですよ。

ー ちなみに、今回のバギーテーパードというシルエットに関しては、どうしてこの形を採用していたんですか?

左:〈COMOLI × WISM〉デニム(ICE) ¥39,000+TAX 、右:デニム(BLUE) ¥37,000+TAX

小森:ジャストサイズの5ポケットパンツには憧れがあるんですが、似合わなくて穿けないんです。それで最近、とあるデニムブランドのイレギュラー品番を穿いてみたら妙にしっくりきて。80年代のアイテムなんですが、そのシルエットを参考にしています。バギーだから足のラインが隠れるんですよ。あと、スニーカーを履くと裾のたるみがいい感じに出て、そこも気に入ったところです。

ー なるほど。そこにライトオンスのデニムを組み合わせてみたということですね。

小森:日本人が穿くにはこれくらいのデニムがちょうどいいと思うんですよ。一般的なデニムが13.5オンスで、それだと夏場は暑いけど冬になると寒い。すると穿く機会が極端に少なくなるんで、春夏に穿くにはこれくらいがいいんです。バギーシルエットとの相性もよくて、ドレープ感もキレイに出ますし。

堀家:80年代のシルエットに90年代の加工っていう年代のミックス感とか、「ウィズム」と〈コモリ〉っていう組み合わせの意外性とか、いろんな要素が絡み合って融合するみたいなイメージがあって。それで今回のデニムには、「ユナイトデニム」という名前をつけました。

ー ユナイトには団結、結束、一体という意味がありますよね。

堀家:はい。小森さんと自分もそうだし、スタッフたちとも団結するアイテムをつくりたかったという気持ちの表れでもあります。これ、なんかあったときに絶対穿いちゃうデニムになる気がするんです。シンプルに「かっこいいです」って言えるものだと思います。だから単なる企画モノのように扱うんじゃなくて、定番としてこれからもやっていきたいって勝手に思ってます。

COMOLI WISM UNITE DENIM

小森:すごく「ウィズム」っぽいアイテムになりましたよね。あと、スニーカーとの相性がすごくいいんですよ。

堀家:ですよね。足元にどんなスニーカーを合わせるのか、選ぶのもワクワクしますよね。いま俺たちが感じている高揚感をお客さんにも感じて欲しいですし、これを穿いて感動してくれるお客さんが絶対いるはずなんです。そういうのを感じられるデニムだと俺は信じてますね。

小森:「ウィズム」はいい意味でみなさん同じテンションじゃないですか。堀家さんとスタッフさんもそうだし、お客さんもそれに共鳴しているイメージなんです。これと一緒に革靴を提案するのはちょっと違う気がするんですけど、「ウィズム」なら間違えた提案をしないというか。だからこそ、これをインラインでやろうと思わないんですよ。

INFORMATION

WISM 渋谷店

住所:東京都渋谷区神宮前5-17-20
時間:平日 11:30~20:00 / 休日 11:30~20:30
電話:03-6418-5034
wism-tyo.jp

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