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詩人、画家、ロックミュージシャン。20年に渡って加速する、浅井健一の創作欲の源泉を探る。
Looking Back on Benzie’s 20 Years

詩人、画家、ロックミュージシャン。20年に渡って加速する、浅井健一の創作欲の源泉を探る。

今年でレーベル設立から20周年を迎え、SHALLOW WELL名義のインストアルバム『SPINNING MARGARET』や浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS名義のニューシングル『TOO BLUE』のリリースをはじめ、6月には短編集の『神様はいつも両方を作る』を上梓するなど、活発な創作活動をおこなっている浅井健一氏。BLANKEY JET CITYの解散後、音楽活動のみならず文筆業やイラストレーションなど多彩な分野で才能を発揮している浅井氏のクリエイティブの源はどこにあるのか。吟遊詩人・浅井健一の20年について。そして、音楽産業にとって未曾有の事態であるコロナ禍のいまについて。あえてとりとめもまとまりもつけず、ありのままの形で語ってもらいました。

  • Photo_Shunya Arai(YARD)
  • Text_Shunsuke Hirota
  • Edit_Yosuke Ishii

ギタリストとして、ヴォーカリストとして。浅井健一の奏でる音。

ー 『SPINNING MARGARET』はインストアルバムなので、ある意味で浅井さんの武器であるワードセンスを使っていないのですが、インストにしようと思った理由はあるんですか?

単純にインストゥルメンタルをやってみたかったっていう。前も一枚出してあるんだけど、インスト好きなんだわ。歌詞作んなくていいから。楽器だったら世界共通だから。ちょうどやりたいなって時期だったし、ってことだね。

ー インスト曲と『TOO BLUE』のように歌詞付きの楽曲では、製作の手法や難易度に違いはありますか?

インストのほうが難易度がちょっと低いと思う。もちろんクオリティが高くないといけないんだけど。やっぱり歌詞を書くってのはすごい難しいんだよね。インストはメロディやハーモニーやアンサンブルに集中できるから。それでやっぱり人の心を動かすものにしないとダメなんで…、やっぱり難易度は同じぐらいだわ。メロディでその人に…、変な言葉で言うと感動を与えなきゃ駄目なんで、そのぐらいのものが作れるかどうかだよね。言葉は無しで。

ー 『SPINNING MARGARET』はヘッドホンをつけて聴き込むのも良いですが、BGM的に流しても気持ちの良い曲なんじゃないかと思います。

今回は自然にメロウな方になってるね。でも激しい音楽でインストってのもあるからね。それはまた次回にやるかもしれないし。穏やかな感じの曲が揃ってるから、穏やかな気持ちになりたいなって思った時にぜひ聴いてください。

ー 今年でレーベル設立から20年が経ちましたが、次の20年はどう進めていきたいですか?

みんなも同じ20年だからね。世界がどのように動くのか。いよいよホントに…。心配性なだけだよって言う人もいるんだけど、俺の心配が杞憂だったら一番良いんだよね。音楽とか芸術的な事とかをやるには、社会が安定してないとできないじゃん。だからそういう社会がずっと続いて欲しいなって思ってるんだけど、あまりにも俺たちは平和のなかでずっとやってきてて危機感がなさすぎるって感じとるんだわ。だから、これからの20年間はいまに懸かってるので、とりあえずいまは世界の動きを注視してるかな。注視しながら、自分がやれることを一生懸命やっていこうと思っとる。

ー ボブ・マーリーのように、社会に向けて積極的に発言をしていく役割もミュージシャンにはあるように思います。

音楽がそういうことを歌う時代もあったじゃん。「ミュージシャンは時代の最先端じゃなきゃいけない」って大貫憲章さんが言ってたんだけど、まさにその通りだなって俺は思うんだよね。だけど、いまはそうじゃない音楽が99.9%じゃん。楽しければいいやっていう。楽しいのは全然良いんだけど…、馬鹿なのは良くないんだよね。

ー 確かに浅井さんの楽曲の世界観を理解するには、一定の知的水準が必要な気もします。

分からん人は分からんと思う。バカにしてはいかんけどね。また喧嘩になっちゃうから。要するに俺は「楽しければ良いや」って世界観の音楽はさっぱりわかんない。てか、怖い。あれが普通って物凄い気持ち悪いって言うか、ああいうのに世界の危機感を覚える。

ー フジロックでBJCがラストライブをやったとき、浅井さんは「たぶん音楽は世界中で大切なものだと思う」と言いましたが、まさしくいまこそ音楽の社会的意義を見つめ直すタイミングのような気がします。

社会的な意義とまでは言わんでも、音楽は心が綺麗になるとか、癒されるとかであって欲しい。「媚び媚びの気持ち悪い奴らを見て何が楽しいんだ」って気持ちになる…。ゴメン、なんか悪口みたいになって(笑)


インタビューも終わり、撮影に向かった時にちょっとしたハプニングが起きました。ライターが乗ってきたバイク(*ヤマハXS650)を見つけて「ロッパンだよね。これで撮ろうよ」と浅井氏が持ちかけ、バイク屋ですらエンジンを掛けるのに難儀する単車をいとも簡単にキックで目覚めさせたのです。インタビューでは「あまりサリンジャーには乗っていない」と言いつつも、ギターの演奏やイラストの描き方と同様に、バイクの乗り方も身体に染み付いていることがうかがえる瞬間でした。

そして、撮影後に「ブランキーの3人でバイクに乗って旅をしてはどうですか」と水を向けると「そうだね。またいつかPUNKY BAD HIPみたいな旅がしたいね」との返事が。その旅の末に、浅井氏が辿り着く新しい国はどんな形だろう。きっと焚き火を囲み、フライパン片手に未来を語り合う国に違いないでしょう。

INFORMATION

SEXY STONES RECORDS online store

SHALLOW WELL「SPINNING MARGARET」
SHALLOW WELL10年振りの新作。美しい旋律が光輝き、心に入り込んでくるファンタジー、映画のごとく壮大なインストゥルメンタルミュージック。 SEXY STONES ONLINE STORE のみでの販売になります。

1. Spinning Margaret
2. 悠然たる鷲
3. 小さな橋
4. CECIL
5. Rainbow Water
6. Midnite Drive
7. Runaway Camel
8. 汚い川のきらめき
9. Grease Up
10. OK
11. 飛行船
12. Spinning Margaret (Hitomi Vo. Ver.)
(全12曲)

SHALLOW WELL 『SPINNING MARGARET』
品番: SSR-054
価格:¥3,300(TAX IN)

sexystones.shop-pro.jp/

浅井健一ストーリー&ダイアリー「神様はいつも両方を作る」
浅井健一が書きためていた日記やショートストーリーをまとめた本『神様はいつも両方を作る』。ベンジーの頭の中にある、あらゆる場面、希望、思い出、ユーモアがタイムマシーンに乗ってあなたの心の中を旅をする。SEXY STONES RECORDSのオンラインストアのみでの販売となります。

タイトル:「神様はいつも両方を作る」
著者: 浅井健一
発行: SEXY STONES RECORDS
イラスト: 浅井健一
デザイン: 大箭亮二(Z&Z inc.)
頁数:188頁
判型:H188mm X W128mm
定価: 2,500円(税別)

sexystones.shop-pro.jp/

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