PROFILE
フランス・パリで生まれ、その後、東京を経て現在L.A.在住。1989年に『まぁだぁ』でヤングサンデー新人賞を受賞し漫画家デビュー。1993年に出版された描き下ろし単行本『TOKYO TRIBE』は、未だに出版社を変えて発売され続けるロングセラー。その続編となる『TOKYO TRIBE2』はファッション誌『Boon』で連載され、世界各国でも翻訳出版されるほどの大ヒットに。2006年にはアニメ化され「WOWOW」にて放送。2014年夏には園子温監督によって『TOKYO TRIBE2』の実写映画が公開され、俳優 鈴木亮平とラッパー YOUNG DAISのダブル主演で話題を呼んだ。また『隣人13号』は2005年に小栗旬、中村獅童のダブル主演で実写映画化され劇場公開、DVD化された。同作は2013年にハリウッドリメイクが発表され、現在製作準備中。最新単行本『もて介』全2巻およびTOKYO TRIBEシリーズ最新作『TOKYOTRIBE WARU』全4巻が発売中。
言葉がなくても物語れる絵を30年研究してきた。
ー 画集『井上三太画集 SARU』には、これまでの作品の名シーンや名画がゴッソリ収録されていますが、どんなことを考えて絵を選びましたか。
三太: いきなり生々しい話になりますが、僕は2017年にL.A.に移住して、今アメリカでキャリアを築いていこうと思っているんですよね。それで今回の画集は僕のことを知らない人とか、なかなか会えないような人と会ったときに、「僕、こんな絵を描いているんです」とパパっと見せられるポートフォリオのようなものにしたかったんです。
三太: それともう一つは、僕があくまでも「漫画家」であることを伝えたいなと。それで表紙をモノクロにして。要は、自分はイラストレーターとしてではなく、漫画家として漫画の絵とは何だろう? というのを30年間考え続けてきたので。
ー あらためて、漫画の絵とは何でしょう。
三太: 物語を物語るための絵ですよね。漫画の絵として上手ければ、擬音語やセリフが少なくても、絵のパワーで雄弁に物語を語れるかもしれない。たとえ言葉がほとんどなくても、表現できる。そういう絵を、漫画家として30年間研究してきましたよというのをまとめたのが、今回の画集ですね。
ー 画集の中でも「絵がうまいと言われるより、面白い漫画を描く人間だと言われたい。僕はイラストレーターではなく、漫画家なのです」という言葉が印象的でした。ちなみに三太さんのお父様は画家なんですよね。
三太: そうそう、父は画家で、きれいな花の絵のシルクスクリーン版画とかを描いていました。
ー 画家をお父様に持つ環境で、どのように漫画に傾倒していったのでしょう。
三太: 僕は子供の頃からディズニーが好きで、やっぱり線画が好きなんですよね。うちの妹もアーティストなんですが、妹はものごとを面で捉えていると父が言っていました。面で捉えるというのは彫刻だったり、色を塗るとかですね。対して僕は子供の頃から線で物語を作るのが好きで、映画もディズニーも好きだった。それでコマを割って漫画にしていこうとなっていきました。でもこういう根源的な欲求って、不思議ですよね。
ー 三太さんの漫画といえば、ヒップホップやストリートの要素が丹念に描き込まれている点も大きな魅力です。そうした作風のルーツはどこにありますか。