L’ECHOPPE 金子恵治 × blurhms 村上圭吾 × REPRODUCTION OF FOUND 上枝正人 三人の古着好きがつくった国境のないミリタリースニーカー。

ー 改めて、〈リプロダクションオブファウンド〉(※以下、〈リプロダクション〉)の上枝さんを交えて、スニーカーについてお話を聞けたらと思います。この解体されたフレンチトレーナーは村上さんの私物ですか?
村上: そうです。
金子: これはやばいですね、めちゃくちゃかっこいい。私物なんですね。
村上: 昔買った私物です。上枝さんとは一緒に仕事をしていたことがあったんですが、〈リプロダクション〉をやってることは知らなくて。
上枝: 共通の後輩がいて、それで展示会に遊びにきてくれたときに、「え、ここのデザイナーだったの?」みたいな感じで。
村上: そうそう(笑)。
金子: そんな再会だったんですね。上枝さんは名前を出してないから、気づかなくて当然ですよね。このクラッシュしたフレンチトレーナーは、今回のスニーカーをつくるためにバラしたんですよね?

村上: そうです。靴をつくったことがなかったので、バラさないことには何もわからなくて。服づくりはじめた頃も、よく解体してて。一回パーツごとにバラして、どうやったバランスが取れるかを頭の中で組み立てていった感じですね。
村上: ここまでやられたのは初めてです(笑)。バラそうと思った人も村上さんくらいじゃないですか。

〈リプロダクションオブファウンド〉のデザインを手がける上枝正人さん。金子さん、村上さんとはそれぞれ共通点はあるが、3人での取り組みは今回が初。
ー 村上さんと上枝さんはどの時期に仕事仲間だったんですか?
上枝: いまはもうないんですが、「ナンバー44(n°44)」っていうセレクトショップで僕が仕入れやオリジナルの企画をやっていて、そのときにお手伝いしてもらってました。それ以来なので、ちゃんと会話したのは10数年ぶりでした。
村上: ちょくちょく街で見かけて挨拶はしてたんですが、ちゃんと話したのはそれくらい経ちますね。
金子: 僕はお二人のそのルーツが好きなんですよね。「ナンバー44」は超人気店で、それこそフランス軍のM-47とかを流行らせたりしたお店で。
村上: 軍モノリメイクの先駆けみたいなショップでしたね。
金子: そう、割高なんですけど、めちゃくちゃ売れるみたいな。
ー それがお二人のいまの原点になってるんですね。
上枝: そうですね。
金子: いま上枝さんがやられてるアイテムを見ると「なるほど」ってなりますよね。お二人がすごく信頼できるのは、そのキャリアを持っているからということ関係していて。

マルチミリタリートレーナー¥35,000+TAX
パンツ同様、4ヵ国のデザインを一つに集約させた渾身作。トーンの異なるチャコールグレーのスエードを4種とナイロンによって奥行きのある表情に。※1月23日(土)〜31日(日)まで、「レショップ渋谷店」にて先行予約会を開催。
ー そんなお二人でもこのスニーカーに関してはかなり難航したんじゃないでしょうか?
上枝: 結構大変でした。僕らがいつもお願いしているところは半世紀以上前からある、昔ながらの手作業にこだわっている工場で、ここまでカッティング数があると拒絶反応を示すんです。なので、最初に依頼したときは「嫌だ」って言われて(笑)。
金子: ストレートに断られたんですね(笑)。
上枝: ラストの違うモデルを組み合わせるので、ひと筋縄ではいかないんですよね。靴は数ミリの違うと、全く違ったものになってしまうので、その微調整に時間がかかりました。
村上: このスニーカーのために新しい金型もいくつかつくったって言ってましたもんね。
上枝: はい、工場泣かせのスニーカーです(笑)。

村上: まず僕が設計図みたいなスケッチを描いて上枝さんに見せたんですけど、とりあえずやってみなくちゃわからないということで。
上枝: ブランドをはじめて5年経つんですけど、靴はほんとやってみなくちゃわからないんですよね。絶対に出来ると思ったことでも実現しなかったことも多々ありますし。
金子: それがちゃんと形になったのは、お二人のおかげです。

ー ベースにしたのはパンツと同じく、フランス、ドイツ、イギリス、カナダ軍のスニーカーですか?
上枝: はい。実はこの4モデルからブランドがスタートしたので、僕自身としても思い入れが強いんです。
村上: たまたまでしたよね。
上枝: いまは20数型あって、シーズンごとにつくったりつくらなかったりするんですが、この4型に関してはずっと継続してつくっていて。

金子: この4足が一つに集約できるなんて到底思えないですよね。
上枝: ただでさえ、パーツの数が多いモデルなので、インラインをつくるときでも毎回工場の方からチクチク言われるぐらいで(笑)。今回はそれにプラスオンなので……。
金子: それは拒絶反応を示しますよね(笑)。
上枝: いまだったらマシンが進化していて、ある程度はオートマティックでつくれるんです。ローテクだからいいってわけではないんですが、この工場はベテランの職人だから出せる味みたいなものもあるのかなって思います。
ー このスニーカーは、パンツと同じく何パターンかデザインを提案されたんですか?
金子: これは1パターンだけですよね。
村上: 靴は制約があるので、これしかできないって感じでした。ローテクを組み合わせるんですが、どこかハイテクな感じがしますよね。
上枝: 絶妙なバランスですよね。色味の違う4種類のスエードを使っていたり、細かい部分まで目が行き届いてるんですよね。靴は、洋服と違った視点でデザインしないとダメだと思うんですけど、よくこのイメージを膨らませられたなと思いました。
金子: ほんと流石ですよね。

村上: いやいや、頭おかしくなりそうでしたよ(笑)。
上枝: 僕はもう靴づくりの頭にシフトしてるんですが、服をメインにしている人がこんなデザインを考えつくなんて、そうそうできたもんじゃない。
ー これがまさに村上バランスですね。
金子: これぞ、まさにです。
上枝: 苦労はたくさんあったんですが、僕らが思いつかないような視点でものづくりに取り組めたのがレベルアップにも繋がったと思います。コラボレーションの醍醐味が経験できましたね。
村上: 意識していたわけではないですが、〈ブラームス〉を立ち上げて10周年のタイミングにこれをつくれたのも感慨深いです。
金子: 一度見たらやられちゃうような雰囲気は、上枝さんと村上さんにしか出せないんじゃないですかね。〈リプロダクション〉が持つ生産背景やミリタリーシューズに対する知見みたいなものがなかったら、ここまで完成度の高いものはつくれなかったと思います。

ー やはり、三人の共通点として、“古着が好き”というところが合致したからなんでしょうか?
上枝: それもあるかもしれませんね。それぞれ別のジャンルの古着が好きなんだと思いますが、少なからず3人とも古着を通ってきてると思います。
金子: そうですね、なんとなく上枝さんと村上さんの好きなテイストはわかります。
村上: 僕もそうですね。
ー また三人で集まって、これやりたいみたいな話もあるんですか?
村上: この解体したフレンチトレーナーを見て、金子さんの目の色が変わってますからね(笑)。
金子: このクラッシュスニーカーは、ぜひやりたいですね。
上枝: また工場からチクチク言われそうなお題だなあ(笑)。

今回のキービジュアルを手がけたbananayamamotoさんのサイトとシリアルナンバー入りレプリカ(¥18,000+TAX)も限定リリース。またこの作品を用いたプリントTも〈ブラームス ルーツストック〉から販売される。