山本海人が家に求めるものとは?
ー 移住でよく聞く、排他されたりとか地方独特の閉塞感はないですか?
ちゃんとこの場所のためにできることをやっていれば、そんなことはないです。差別するひととは付き合わなければいいし、媚びを売ってまで繋がろうとは思ってない。真鶴はリベラルなひとも多いし、なんてったって市長はオランダ帰りですから(笑)。
あとは自分が好きなひとたちのコミュニティがあっても、なんでもタダでやるのがいいわけじゃない。例えば、ここではデビッド伊東さんが主催している月イチの清掃活動があるんですけど、自分がサポートできるのはデザインだから、それ以外は俺がやれることじゃないって伝えました。彼らの味方ではあるけど、なんでもホイホイやるわけにはいかないわけです。
ー この家の空間で好きな場所はありますか?
座る場所はいつも同じで、テレビ前のソファの角か、外のソファ。この家は親族のもので、自分が持ち込んだのは、軒先にある筋トレの道具、猿撃退用の電動ガンとバイクだけ。猿は育てたスイカを食べたり悪さするんで、電動ガンで撃退するんです。弾はトウモロコシの粒で傷つけるわけじゃないから、追い払うのが逆に楽しみだったり。
ー その何でも楽しむ姿勢は、海人さんの行動全てから感じますよね。
そうそう。楽しいほうが絶対いいじゃないですか。
ー 今後、真鶴でやろうと思うことは?
お店…内装がバッチリのアイスクリーム屋を開こうと思ってます。東京の店は内装も隙がある感じだけど、こっちはかっこいい方が合うなと。
ー 本当に、アイデアが尽きないですね。
衣食住でお金をかけるものって、自分の場合は夜に飲む酒や食べるものだから、そのお店をつくっちゃえばお金がかからないじゃないですか。服も〈サノバチーズ〉があるからタダ。
でも、つくるまでの過程や考えることは楽しいんですけど、一度できてしまうとつまらなくなるんです。多分釣りも一緒で、いまは毎日楽しいですけど、いつかはつまらなくなるんじゃないかなと。だからボートハウスを買いたい。(昔住んでた)トレーラーハウスみたいなものですけど、ボートハウスとじゃ内装のレベルが全然違う。
ー 逆に、海人さんが家に求めるものってなんですか?
家というものに執着がないし、WiFiとかオートロックとかなくても困らないですね。いまあるベッドがなくなったら、それでもいいやって。たとえばボートハウスに住んでいても、海が荒れたら宿に泊まればいいし、実際にいま真鶴に家があるけど、熱海に行けば好きな宿に泊まっちゃう。東京も駒場に借りてる部屋があるけど、新宿に遊びに行けば新宿のホテルに泊まっちゃう。
ー 住処を旅している感覚なんですかね?
その感覚に近いですね。もし真鶴に住みながら東京に行くなら、キャンピングカーで一日1600円で打ち止めの駐車場に車突っ込んじゃってそこで寝泊まりするのもアリだなと。渋谷のビジネスホテルとか泊まると、全然景色も道も綺麗じゃないから朝気分が落ち込んじゃうんで、東京に行くときは泊まる家があるかキャンピングカーがいいと思います。
ー いわゆる“あるべき形”に、とらわれない生き方というのは、海人さんがあらゆることを楽しめる秘訣かもしれませんね。
とはいえ、トレーラーハウスに40歳超えても住んでたいとは思わない。あのときはお金がなかったからだったわけで。そこでソファに座ってテンガロンハットかぶっているようなおっさんにはなりたくないですね(笑)。ボートハウスは内装もすごくちゃんとしているし、起きてすぐ目の前で釣りができるってのが最高です。