Case.2
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1981年生まれ。「アトモス」の創業初期である2000年からスニーカー業界に身を置き、現在はディレクターとして腕を振るう日々。リリースのたびにニュースとなる別注企画を手がけ、その特徴的なカラーリングや柄はファッションシーンにも影響を与えている。
Instagram:@koji198139
スニーカーブームは20年周期。
ー アトモスで昨年一番売れたモデルは何ですか?
小島:「エアフォース1」の白×白です。1年中ずっと売れてましたね。レザーで1万円っていうプライス設定ということもあり、高校生から僕らみたいな大人までとにかくレンジが広くて、もうこれを履いていれば間違いないみたいなポジションを確立してますね。あと、「ダンク」も売れていて、圧倒的に若い子が買っています。しかも入荷すると1日で全部売れてしまうので飾るものすらないっていう(笑)。
ー 〈ナイキ〉強し、ですね。
小島:昨年の自粛前までは、インバウンドで外国人が多く来店していたので、満遍なく売れていたんですけど、日本人だけになって、みんな買う基準がシビアになっている気がします。
ー なるほど。
小島:特に若い世代に顕著ですね。例えば、〈ザ・ノース・フェイス〉が売れる理由も買って着なくなったあとに売れるからで。やっぱり学生の子たちはお金がないから、一着買って、着て、売って、次のを買うというマインドになっているようです。僕らが若かった時代はそんなの気にせずバンバン買っていたんですけどね(笑)。
ー 懐かしいですね。では、80年代から現在までのスニーカーシーンについてはどう見ていますか?
小島:デザイン的な話でいうと、80年代は「エアフォース 1」だったり、〈アディダス〉の「フォーラム」「スタンスミス」「スーパースター」だったり、いわゆるベーシックなものが主流でした。そこからスニーカーがファッションアイテムとして認知された90年代。今見返すと、90年代のスニーカーって、やっぱり革新的というか、飛び抜けたデザインが多かったですね。
ー たしかにそうかもしれません。
小島:でも当時ってまだサブカル的で、コレクターの人が地味に集めていた印象。メジャーになったのは2000年代に入ってからだと記憶しています。僕は1995年の「エアマックス」からスニーカー歴がはじまって、2000年にアトモスに入社しているんですが、やはりブームとして見ると、00年代は90年代リバイバル、2020年代は00年代リバイバルですね。
ー 2020年代に入って注目する年代が変わったと。
小島:20年周期というか、僕らが80年代、00年代に見てきたものが、今の20代の子たちには新作に見えるわけです。もちろんそれぞれの時代でいろんなスニーカーが生まれましたが、革新的に進化したのはここ数年の話。厚底ランニングシューズが良い例ですよね。
ー もはやターゲットが若い世代に向いてますね。
小島:30〜40代の人はもう好きな物が決まってますからね。語弊があるかもしれませんが、若い子たちは教育し甲斐があるというか。その子たちが小さい頃に身に着けた物は大人になっても買うという傾向があって、そこから教育していきましょうと。これはスニーカー業界全体に言えることで、例えば、僕が〈ナイキ〉好きだったら、子どもにも〈ナイキ〉を買う。で、その子どもが〈ナイキ〉を履いていたから、大人になっても自分で〈ナイキ〉を選ぶ、というサイクルを作るんです。なので、アトモスとしては“00年代の原宿”というテーマで、色々と仕掛けていこうと思っているんですが、それこそ、フイナムの連載記事にある“ニューヴィンテージ”もひとつのキーワード。古着屋の在り方が見直されているような感じは、昨年ぐらいからひしひしと感じていて。要は90〜00年代のアイテムも、20年経てばヴィンテージになるという考え方。このカテゴリーはもっと掘り下げていったら、おもしろくなるんじゃないかなと思っています。
ー そういう意味で、今回ピックアップした5足は、20年周期に合致しますね。
小島:今の20代は、80年代、00年代のスニーカーデザインを知らないですからね。2010年代に入って、パフォーマンスシューズとファッションとしてのスニーカーが同じ括りになりましたが、2020年代はさらに細分化されて、いつでも買える(僕ら世代にとっての)定番モデルが、懐かしくもあり新鮮に感じるのかもしれません。
東南アジアがアツい!
ー ちなみに、アトモスは海外合わせて40店舗以上ありますが、海外のスニーカーシーンはどうですか?
小島:東南アジアはめちゃくちゃ盛り上がっています。
ー それは意外ですね。どういったモデルが人気あるんでしょうか?
小島:傾向としては、20年前の原宿みたいな感じです。日本やアメリカ、ヨーロッパと違って、まだ情報も何もないので、本当に今から来るぞ! みたいな熱気がありますね。あと、タイやインドネシアでは、ローカルなストリートブランドや工場の生産背景があって、それこそ、ジャカルタのブランドが物凄い売れていたり。世界で4番目に人口が多いので、もう勢いが違いますね。例えば、僕らがアメリカやヨーロッパに行っても、結局どこの店に行っても日本のブランドばかりじゃないですか。
ー たしかに、置いてあるものが同じというイメージはあります。
小島:そうなんです。世界中どこからでもお金を出せば買えるという状況にはなっているんですけど、東南アジアだと何これ? みたいな物がたくさんあるんです。なので、アトモスのジャカルタ店では、現地の人たちがピックしたシューズブランドも扱っています。
ー それはおもしろいですね。
小島:以前、〈#FR2〉さんでジャカルタの〈コンパス〉というブランドとコラボレーションしたんですけど、何千足が即完売っていう。こういう取り組みはすごいおもしろいなとは思いました。あと、靴じゃないんですけど、〈#FR2〉の石川さんが始めたスニーカーヘッズに向けたアパレルブランド〈THE NETWORK BUSINESS〉を、アトモスでも取り扱い始めました。例えば、次に出る「エアジョーダン 1」のカラーリングと同じスウェットのセットアップを、スニーカーと同じ日に発売するんです。ある意味、逆張り的なアプローチでかなり反響がありましたね。
ー 今年はイベントも控えているとか?
小島:この状況で2020年3月に予定していた、「atmos con vol.8」を泣く泣く中止にせざるを得ませんでしたが、今年はデジタル、フィジカルの両軸で仕掛けています。フィジカルは10月を予定しています。デジタルはもう間もなく情報解禁の予定です。楽しみにしていてください!
小島さんが選ぶ2021年の5足。
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