自分が着たいものを考えて、アイデアをミックスしながらつくった。
ー 先ほど「量販のイメージがある」というお話がありましたが、それを昇華するのは簡単なことではないですよね。デザインするにあたって、その問題をどうクリアしようと思いましたか?
中津川:仰る通り、オファーを受けたはいいものの、どうしようかっていう部分で不安はあったんです。でも逆に考えたら、好きすぎるブランドや憧れのブランドのほうがいじるのが難しいと思うんです。そんなときにこのブランドのロゴを見て、「なんか新鮮だな」と思うようになってきて。自分のお店に来る若い世代のお客さんが見たときに、フレッシュに映るようなものをつくりたいと考えました。キャッチーで、シンプルに着たいと思えるような服をデザインしたいと思ったんです。なおかつ、自分自身も着てみたいと思えるようなデザインにしたいなと。

ー デザインするにあたって、レギュレーションのようなものはあったんですか?
中津川:ほぼなかったんです。ロゴを入れたりだったりとか、そうゆう制約はありましたけど、それ以外は自由だったんです。だから好き勝手やらせてもらいました。ただ、自由だからこその難しさは感じましたね。制約があればそれをくぐり抜ける楽しさもあったと思うんですけど、今回はまったくそれがなくて、ゼロからのスタートだったんです。
新井:ラインナップを拝見させてもらって、シンプルにゴローさんっぽいなと思いましたよ。配色だったり、大きめのサイズ感だったり。

中津川:デザインするにあたって、90年代の雑誌『ブーン(Boon)』のアーカイブを集めて眺めていたんです。インスピレーションが生まれるかな? と思って。後ろのほうのページにある、明らかにお金出して掲載しているような広告とかに意外とヒントが隠されていたりして。
ー 並行輸入のお店がカタログ的に商品のブツ撮りを載せている広告がありましたよね。
中津川:90年代のスポーティなブランドはぼく自身も影響を受ているので、そうしたアイテムのムードと、〈コスビー〉にはアイスホッケーっていうバックグラウンドがあるので、その背景も活かしながらデザインしました。あとはシンプルにいま自分が着たいものを考えて、アイデアをミックスしながらつくっていったんです。

新井:このホッケーのスティックはゴローさんが描いたものですか?
中津川:そうですね。これに関しては特別なことはせず、自分らしい絵を描きました。
新井:過去にあった〈コスビー〉のデザインを踏襲していたりするんですか?


中津川:それはないんですよ。いろんなものからヒントを得ながら、すべて一からデザインしました。でも、このジャケットのデザインは、90年代のアイテムに背中にワッペンがついているものがあって、それを参考にしていますね。切り替えとかはなかったんですけど。
新井:アノラックタイプにしたのも、いまの気分で? このジャケットはいちばん〈コスビー〉っぽいなぁと感じたんです。
中津川:〈コスビー〉のアウターって、着丈の長いベンチコートみたいなアイテムが多かったんですよ。それよりはちゃんと街で着られるものにしたくて、こういうアイテムをデザインしました。アノラックにしたのも、なんとなくの気分ですね。
新井:赤、白、ネイビーのトリコロールは定番的な色味だと思うんですけど、このマスタードの配色はすごく新鮮でユニークですね。
中津川:スポーツアイテムの色使いって、どうしても似通ってしまう部分があるので、それを意識的にハズしてみたらこの色になりました。じつはショーツの配色が先に決まって、それとセットアップで着られるようにこのジャケットも色を合わせた、というのが本音ですね(笑)。


新井:このパンツの切り替えも独特ですよね。
中津川:これは手に取った人に「なんだこれ?」って思わせたくてそうしてます(笑)
新井:意味があるんですか?
中津川:ブランドのロゴを見ると「b」と「y」だけ上下に飛び出しているじゃないですか。それを表現しているんです。
新井:あぁ! なるほど! そういうことだったんですね。

中津川:分かりづらかったですかね(苦笑)?
新井:いやいや、そんなことないです(笑)! このカットソーはサイクルジャージですか?


中津川:そうですね。もともとホッケーシャツからインスピレーションを得たんですけど、それをそのまま街で着るわけにはいかないから、80年代のモトクロスシャツのように着られないかと思ってデザインしました。これはもうとにかくデカく着てほしいです。
ー どのアイテムもユニセックス展開ですか?
中津川:そうですね。ルックでも女性モデルの方に着ていただいているので、男女関係なく手に取っていただけたらうれしいです。
2021 SS COLLECTION