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愛すべきニューバランスのグレー。 vol.02 UNITED ARROWS 栗野宏文
MY FAVORITE GREY

愛すべきニューバランスのグレー。
vol.02 UNITED ARROWS 栗野宏文

そこに一足の〈ニューバランス〉のスニーカーがあるとします。あなたは何色のアイテムを想像しますか? おそらくほとんどの人が「グレー」を思い浮かべたはず。それほどに“ニューバランスのグレー”は象徴的な色とも言えるのです。5月15日は、そんなシンボリックな色を祝福する「Grey Day」なのをご存知でしたか? 今回はそんな催しにちなんで、〈ニューバランス〉ラバーたちにとっての“グレー”の意味を探っていきます。第二回目に登場するのは「ユナイテッドアローズ」の上級顧問を務める栗野宏文さん。〈ニューバランス〉とファッションの関係性をより深めた張本人ともいえる栗野さんに、その魅力を語ってもらいました。

PROFILE

栗野宏文

大学卒業後、ファッション小売業界で販売、バイヤー、ブランドディレクターを経験した後、1989年に「ユナイテッドアローズ」の創業に参画。販売促進部部長、クリエイティブディレクターなどを歴任し、現在は同社の上級顧問 クリエイティブディレクション担当。

グレーはやっぱりニュートラルな色だと思う。

ー 栗野さんがはじめて〈ニューバランス〉に触れたのはいつ頃のことですか?

栗野: はじめて見たのは1986年か1987年くらいで、日本に入ってきた頃のことです。ぼくは当時「ビームス」に在籍していて、スタッフにアメリカものが大好きな人がいたのですが、彼が「この靴がいま、いちばんのお薦めです」と言っていて。アメリカ大統領を筆頭に、知的で品のいい人たちが履いていると教えてくれました。

でも、正直な話をすると、そのときはあまり興味がなかった。シルエットがやけに丸いし、どれだけ履き心地がよくても、自分は履かないな、と思ったんです。

ー でも、その後履くようになるわけですよね?

栗野: はじめて履いたのはそれから10年以上も後で、1998年でした。当時、日常的に黒いスーツを着たいと思っていたんです。そのときに靴をどうしようかなと思って。黒いスーツに白シャツを着て、黒い革靴を合わせたら殺し屋みたいになっちゃうでしょう(笑)。

それで「ユナイテッドアローズ」の1号点が当時渋谷の明治通り沿いにあったのですが、オフィスもその近辺だったんです。あの辺りはスニーカー屋さんも多くて、とあるお店に飛び込んだら、スエードでオールブラックの「576」が目に留まった。「N」の文字も白抜きではなく黒かったし、これなら目立たなくていいやと思って買ったんです。

ー 履いてみて、しっくりくる感覚があったんですか?

栗野: 〈ニューバランス〉のシューズって、結局アノニマスですよね。「N」って書いてあるけど、形もシンプルだし、押し付けがましさがない。だから黒スーツというストイックな格好にも溶け込んだ。これなら殺し屋にならずに済む、と思ったわけです(笑)。そして履き心地が素晴らしい。

栗野: スーツにスニーカーという格好は、それまでにも存在していました。たとえばビートルズのレコードジャケットでは、ジョン・レノンが白いスーツに白いスニーカーを合わせているし、ウディ・アレンの映画ではタキシードにローテクのスニーカーを合わせたりもしていました。〈ニューバランス〉をスーツに合わせている人も、もしかしたらいたかもしれないけれど、メジャーな着こなしではなかったですよね。ぼくはそれが気に入ってしまって、それ以来、スーツやジャケットスタイルに合わせるようになったんです。

ー 当初、栗野さんが「自分は履かない」と思われていたように、一般的にも〈ニューバランス〉はファッションの靴として浸透していなかったと思います。それが現在では「おしゃれな靴」として認知されるようになりました。それはどうしてだと思いますか?

栗野: 日本人がおしゃれだからだと思いますね。『ラブ・アゲイン』という映画をご存知ですか? プレイボーイがモテない男性に、女性にモテるための秘訣を教示する内容なんですが、その主人公のモテない男性が〈ニューバランス〉を履いているんです。そしてプレイボーイが、そんな靴を履いているからモテないんだと言って、シューズを捨ててしまうシーンがあって。アメリカではいまだにそういうイメージかも知れない。海外から来られた方にもよく言われますよ、「こんなに〈ニューバランス〉を履いている国は他にない」って。ユナイテッドアローズのスタッフもみんな好きで、よく履いています。着用率は本当に高いと思います。

ー どうしてファッションに合うのでしょうか?

栗野: シンプルだからでしょうね。それに尽きます。ぼくはたまたま黒から入りましたが、〈ニューバランス〉のキーカラーであるグレーはやっぱりニュートラルな色だと思うんです。他のブランドでこういう色の靴をだしているところはない。グレーの革靴だとしたら、象革とかを使わないといけない(笑)。主張しすぎないし、仮にレッドやグリーンをキーカラーにしていたら、ここまでポピュラーにはならなかったと思う。色で認知されたシューズの例として本当に稀なケースですよね。

そういえば、スマートフォンで“スニーカー”と打つと、グレーのシューズが絵文字として出てきます。あれはきっと〈ニューバランス〉ですよね。ぼくもはじめてみたときはビックリしました。すごいなと思って。でも、どうしてグレーなんでしょうね?

ー 諸説あるようですが、〈ニューバランス〉の本社があるボストンの街並みに合うカラーとしてグレーにしたという説と、会長のジム・デービスさんがアウトドアショップでスキーウェアを見ていたときにカラフルなウェアばかりの中からグレーのアイテムを見つけて、「これだ!」と思って取り入れたという説があります。

栗野: どちらもいい話ですね。ぼくも以前、幸いなことにジム・デービスさんにお会いしてインタビューをさせてもらったことがあります。経営に対して明確なポリシーを持たれた方で、地域貢献もされているし、人として尊敬できる方でした。世界中にスポーツブランドがあるなかで、ナンバー1とナンバー2は誰もが想像できる企業。だけど、ナンバー3は特定が難しい。そのなかで「〈ニューバランス〉は魅力的なナンバー3になりたい」というようなお話をされていました。

広告においてもスーパーアスリートや、有名なモデルを積極的に起用したりしないですよね。そういうところもなんだか共感してしまいます。70年代に、おじいさんやおばあさんを起用した広告がありました。スポーツブランドのシューズの広告だったら、普通はアスリートであったり眉目秀麗な人に履かせますよね。だけど、それをチャーミングなおじいさんやおばあさんに履かせていた。当時ぼくは販促の部長をしていたので、そうした広告のアイデアはとても勉強になりました。

ー 老若男女に合うシューズということですよね。

栗野: そうですね。とてもポップで効果的な広告だったと思います。非常にモダンな企業であることを感じました。

それと最近発表された新しいキャンペーンヴィジュアルも素晴らしかった。〈エメ・レオン・ドレ〉というブランドのファウンダーであるテディ・サンティスさんが、“MADE IN U.S.A.”の〈ニューバランス〉のクリエイティブディレクターになることを告げるものですが、ダイバーシティをクールに表現していて、実に格好いい。モデルとなった方々の年齢も人種もジェンダーも幅広いし、職業もパン屋や床屋、仕立て屋、肉屋、ペインターなどニューヨーク在住の職人たちを起用していて、知的。写真も、アーヴィング・ペンの撮り方をオマージュしているところが個人的にはうれしかったです。知れば知るほど、この人たちとはもっと一緒にやっていきたいと思うキャンペーンヴィジュアルでしたね。

INFORMATION

ニューバランス ジャパンお客様相談室

電話:0120-85-0997
shop.newbalance.jp/shop/e/eEnb-greyday

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