“残しておきたいカルチャー”の記憶をカタチにするのが〈コットンパン〉のコンセプト。

ー 確かにユルさの塩梅が絶妙なんですよね。ずっとこのタッチで描いていたんですか?
ヒカリ:そんなに変わってはいませんが、こういったタッチになったのは最近ですかね。いまも十分ユルいって言われますが(苦笑)、昔はさらにユルくて可愛いって感じ。動物を描いたりとか…。
コウジ:キャラクターというよりもテキスタイルっぽい感じだったよね。
ヒカリ:そうそう、小さなお花を描いたりとか。そこからユルさを残しつつカルチャー的要素を取り入れるようになっていって。
コウジ:〈コットンパン〉のコンセプトは“残しておきたいカルチャー”。ただのサンプリングではなく、自分らなりに映画やドラマなどの残しておきたいシーンだったり、CDやレコードのジャケットなんかの記憶を形にして残しておくっていう。音楽のサブスクが一般化したことでCDなんて、その存在自体が消えていってしまう可能性もあるワケじゃないですか。なので、それを残すためにプリントサイズを実際のCDサイズにこだわってみたりとか。映画やドラマのシーンもそう。自分ら世代が実際に観ていた14インチのテレビ画面のサイズなんです。いつかサイズも忘れられてすべてがミニマムな時代になっていくなら、いつでも着られるTシャツにソレを残しておきたいなって思い、ブランドを始めました。

ー なんとなく懐かしさを感じる理由が分かりました。モチーフだけではなく、それを表現するプリントのサイズ自体があの頃の記憶に紐付いてると。ところで奥様のヒカリさんがデザイナー、旦那さんのコウジさんの役割は?
コウジ:ブランドとして本格的に始動したので、ディレクターとして全体の監修と納期の確認が主な業務です(笑)
ー (笑)。そこは非常に大事です。また、選ぶネタがどれも絶妙にノスタルジーのツボを突いてきます。ネタ選びってどうしているんですか?
コウジ:基本的にカルチャーだったり好きなモノは共通しているので、その中でぼくが選んでいます。
ー 〈コットンパン〉のモチーフはテレビドラマや映画、音楽など80〜90年代のものが多いですよね。
コウジ:自分がリアルタイムで通ってきた80年代〜90年代のネタが確かに多いけど、そこに固執しているわけでは別になくって。ただ自分の中で知らないモノを使うのはイヤだなってっていうくらい。なのでそれ以前の時代のネタは、いまのところやらない感じで。

ー なるほど。でも、ヒカリさんはそれこそリアルタイムで通ってきたワケではないですよね?
ヒカリ:そうですね。なので、まずは彼がピックアップしてきたモチーフの作品を実際に観たり聴いたりするところからのスタート。で、それに自分がハマれば描くし、違うなって思ったら描きません。
ー NGが出る場合もあるんですね。
コウジ:スプラッター系やホラーはNGなんですよ。
ヒカリ:単純に怖いのが苦手で(笑)
ー 別注も積極的に受けているイメージがありますが、そちらのネタ選びに関しては?
コウジ:別注は先方の希望を吸い上げつつですね。中にはけっこう抽象的なオーダーもあります。ある程度、具体的なのだと「90年代のCDジャケット」とかですが、抽象的な例を挙げると「スモーク」なんてのもありましたね。で、そこから自分らのフィルターを通して表現できるネタを見つけ出していきます。

ー なるほど。そういえばブランド名の由来も知りたいのですが…。
コウジ:”コットンにパンッて刷る”というのが由来としていますが…本当は、僕らの苗字から取って、渡=ワタ=綿=コットン + 辺=ナベ=鍋=パンで〈コットンパン〉っていう(笑)
ー あぁ〜(笑)。これは公表しちゃっても?
コウジ:大丈夫です(笑)
ー 公表といえば、コウジさんは連載企画「で、NEW VINTAGEってなんなのさ?」に「ダンジル」の店主としてご参加いただいていますが、これまで〈コットンパン〉との関わりは非公表にされていましたよね?
コウジ:そうですね。あくまで彼女のアートを表現するブランドなので、古着屋が片手間にやっているという見え方にしたくはなかったので公表していませんでした。とはいえ絶対に秘密ではなく、知っている人は知っているっていう感じで。