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北欧オーディオブランドの雄、バング&オルフセンを目利きはどう見るか。  Vol.1 郷古隆洋
デンマークデザインの真骨頂、Bang & Olufsen

北欧オーディオブランドの雄、バング&オルフセンを目利きはどう見るか。
Vol.1 郷古隆洋

1925年の創業以来、音へのこだわりと、未来を感じさせる質実剛健な見た目の美しさを併せ持つ、デンマークの高級オーディオブランド〈バング&オルフセン〉、通称“B&O”。90年代後半には、インテリアとファッションに興味ある人たちが憧れた最先端オーディオブランドとして名を馳せました。当時はお気に入りのブランドでスピーカーサウンドシステムを一つ一つ揃え、ホームシアターを持つことが一種のステータスでもありました。その後、軽量化やスマート化が進み、オーディオ製品はよりコンパクトに。そしてこの度、新たに発売になったヘッドフォン「Beoplay HX」と、発売から間もないにも関わらず、すでに新しい〈バング&オルフセン〉の顔となったポータブルスピーカー「Beosound A1 2nd Gen」について、こちらのコラムでおなじみ、「スイムスーツ デパートメント(Swimsuit Department)」の郷古隆洋さんにレビューしていただきました。東京と太宰府の二拠点生活を送る郷古さんには、最新の〈バング&オルフセン〉はどのように映ったのでしょうか。

  • Photo_Masayuki Nakaya
  • Text_Gyota Tanaka
  • Edit_Ryo Komuta

快適な付け心地。完成度を高めてフルモデルチェンジ。

ー では、もう一つの新製品、ヘッドフォン「Beoplay HX(エイチ・テン)」については、いかがでしたか?

今回、太宰府を出発して、博多から新幹線で上京したんですが、品川に着くまで乗車中ずっと付けていました。途中、小動物の線路内侵入でちょっと止まって合計で5時間くらいは乗車していたのに、電池残量を見たら85%となっていて、驚くほど持ちがいいですよね。

個人的にマスクとかイヤホンが苦手で、そもそも耳に長時間ヘッドホンを装着すること自体に抵抗があったんですが、装着していることを忘れ、新幹線に乗っていることさえ忘れさせてくれました。ノイズキャンセル(※1)もいい意味で脳がキュッと閉じ込められる感覚で、へッドホンを外すと音が止まるのも車内販売で経験しました。とにかく耳が痛くならなかったのが、すごくよかったです。

ロングセラーモデル「H9」の最新型「Beoplay HX」。没入型で緻密なサウンドを体験でき、究極の快適さ、お客様の習慣、価値観、ニーズを満たす洗練されたユーザーインターフェイスを提供。(※1)ノイズキャンセル:イヤホンに内蔵されたマイクで周囲の音を拾い分析し、騒音を消すシステムで、快適なリスニング効果が生まれる。

ー 貴重な体験談ありがとうございます。このヘッドホンのノイズキャンセル機能、すごくいいですよね。

初めてノイズキャンセルという技術を知ったのは、20年前くらいでした。そもそもアメリカ軍が通信用に開発したと聞いています。例えば、僕の後ろにある〈イームズ〉の「レッグスプリント(脚用添え木)」は、海軍用に開発したあと、プライウッドで曲げ木成型したインテリアです。そんな風にミリタリーから始まっている技術って多いですよね。ノイズキャンセルについてはショールームなんかで経験したことはあるんですが、ずいぶんと性能は上がっていますね。周囲の音を遮断してくれて自分の世界に入れるので、音を楽しむだけでなく読書にもいいですよね。

ー そもそも〈バング&オルフセン〉と出会ったのはいつなんでしょうか?

2000年前後に「ユナイテッドアローズ」で働いていたのですが、その頃の原宿本店で〈ハーマン・ミラー〉の椅子と〈バング&オルフセン〉の壁掛けスピーカーやイヤホンが使われていました。

ー どんな印象でしたか?

複雑の一言ですね。配線からして、当時はジャックとかなくて専用プラグでしたから。初めての人は繋ぐことができなかったし、互換性がないセットで組まなければならなかった。コンポとかオーディオ機器ってある一定のジャンルがあると思うんですが、〈バング&オルフセン〉は全てが枠の外にある印象でした。90年代の象徴とも言えるのではないでしょうか。あとはなんと言っても見た目に衝撃を受けました。『2001年宇宙の旅』とは違った意味で、未来を感じさせるオーディオでした。

郷古さん私物の洋書。1925年創業からのブランドヒストリーが写真付きで解説されている。

当時の「ユナイテッドアローズ」の本店アネックス(現在のUA CAFE)は、1階が「Wショック」という〈Gショック〉と〈W&LT〉のコーナーでした。2階がレディースで、3階が安藤桃代さんがディレクションした「スタイル フォー リビング(STYLE for LIVING)」。そこで〈ハーマン・ミラー〉のデスクと〈バング&オルフセン〉の製品が売られているというアメリカと北欧が融合した空間でした。創業者の重松理さんの世界観だったのでしょうね。

一回り小さくなって、さらに優れたスマート機能に。Alexa 音声コントロール・ウェイクロードに完全対応しており、通常のリスニング音量で音楽を再生中でも、起動するのに大きな声を出す必要もない。一台あれば自宅やオフィスが洗練されたスマートホームに生まれ変わる。

ー その当時の〈バング&オルフセン〉と比べてみると、現在はよりミニマルに洗練されたデザインになりました。

シンプルだし隙がない。これ以上もこれ以下もないくらいの絶妙なデザインですよね。デンマークって皇室制で、福祉や教育などが平等で、格差のない国と言われています。家具好きの間では、フィンユールやヤコブセンなんかが有名で、そのへんが皇室御用達になっていたりします。そもそも単純にデザインの質がいいですよね。きっとデザインの教育も日本と違って高いはずです。広く永く伝わってきているような、確固たるデザイン哲学がデンマークにはあるのかもしれませんね。

ー 一つのモノから、そこまで奥深く想像するなんて、色々な国や文化や時代の古道具を見極めている郷古さんらしいですね。

古道具屋やフリーマーケットでは、辺りに目を凝らすと、だいたいなにか気になるものがあるんです。今まで見てきたこと、知ったことが、頭の中で様々なフィルターを通って、気になるアイテムを導き出してくれるような。そうしたものを見つけると、手に取って、しげしげと加工の具合を見たり。そうしたところからいろいろなことに想像が膨らんだりします。

3つのマイクをスピーカー上部に配置し、通話の明瞭度を最適化。Miccrosoft Swift Pairとの統合により、コンピューターとのシームレスな接続が可能となり、A1はホームワークに最適です。

ー 北欧のなかでもデンマークって、デザインが美しくもあり、最先端をいっていますよね。

同じ北欧でも国によって随分違いますよね。フィンランドは〈イッタラ〉のグラスとかクラフトでも自然モチーフなモノ。スウェーデンは焼き物に色がある。ノルウェーは、地味だけどホーローのモノとか美しい。デンマークは、もうデザインが他の国と比べて頭何個も突出していますよね。同じスカンジナビアンでも、こんなに違うんだなって。

ー 技術というところでは〈バング&オルフセン〉のアルミは、そのアルマイト加工(電着塗装)に自信があり、使って出てくる味を「ロングジェビティー(Longevity:長生き・生涯)」と呼んでいます。経年劣化ではなく、エイジングと表現し、使う程に馴染む味も楽しもうという永年的なコンセプトなんです。

アルミ製品としても、仕上げが素晴らしく美しいですよね。アルミは削り出しでなければ色が入らない。ラジコン世代なので、アルマイト加工は馴染みがあります。使っていったら絶対いい味が出ると思う。今のオーディオ機器はシルバーばかりですが、〈バング&オルフセン〉は色のバリエーションにも個性があって、いいですよね。

―これから〈バング&オルフセン〉のプロダクトと、どんな風に付き合っていきましょう か?

スピーカーの「Beosound A1 2ND GEN」は、2台あったらLRに変換できるので、置き方などアレンジで音が広がるだろうなと思いました。固定のホームオーディオって、ピンポイントの席でしか聴けないですが、これならいろんなことができるはずです。そしてヘッドフォンの「Beoplay HX」の方は、これのおかげで、これからの新幹線移動が楽しくなりそうですね。

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