平成のはじまりと共にアダルトビデオ業界の頂点に立った村西とおる(山田孝之)は、企画シリーズものを大量に制作。だがそれらは、稀代の女優・黒木香(森田望智)とつくりあげた『SMっぽいの好き』のような伝説的な作品には遠く及ばない。黒木は再び村西との作品制作を切望するも果たされることはなく、二人のあいだにはすこしずつ溝が生まれはじめていた。時を同じくして、衛星放送事業への進出に向けて金をかき集める村西に川田(玉山鉄二)は疑問を抱く。しかし、苦楽を共にした川田の意見にも聞く耳を持たず、ついに二人は決別。一方、古谷(國村隼)のもとでヤクザとなったかつての相棒・トシ(満島真之介)は村西に対して複雑な感情を抱いていた。
PROFILE
1983年、鹿児島県出身。’99年に俳優デビュー。映画、ドラマ、CMなどで幅広く活動している。実写版『聖☆おにいさん』(’18年)で製作総指揮、映画『デイアンドナイト』(’19年)でプロデュース、映画『ゾッキ』(’21年)で監督を務めるなど、多方面で活躍。主演映画『はるヲうるひと』が絶賛公開中。
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1996年、神奈川県出身。2011年に栄光ゼミナールのCMで女優デビュー。数々の映像作品に出演し、Netflixオリジナルドラマ『全裸監督』シーズン1で佐原恵美(黒木香)役を演じたことで、一躍注目を集める。第24回「釜山国際映画祭2019」アジアコンテンツアワード「New Comer賞(最優秀新人賞)」受賞。連続テレビ小説初出演となる『おかえりモネ』(’21年)に野坂碧役で参加。
PROFILE
1980年生まれ。TBSテレビの演出家、プロデューサー。主な担当番組に『クイズ☆正解は一年後』『オールスター後夜祭』などがある。特に『水曜日のダウンタウン』は、規制やタブーを逆なでする企画を多数生み出し、その奇才ぶりには同業者も舌を巻くほど。音楽にも精通していて、映像制作にとどまらない活動に注目が集まっている。著書に『悪意とこだわりの演出術』がある。


この物語に登場する団体名、人物名はフィクションです。
ー 今回は「コンプライアンスの外側、内側」をテーマに『全裸監督』の魅力に迫れればと思います。まず本作は「タブーに挑戦」といった枕ことばも付きがちですが、その点いかがでしょう。
山田:でも、Netflixではタブーじゃないですよね。テレビは企業がCMを買ったお金で番組をつくり、視聴者はリモコンを押せばタダで観られる。だから、さまざまなところに忖度をしなければいけない。その上でつくるべきものをつくっているんだと思います。かたやNetflixは毎月お金を払って、自分が観たい作品を選ぶ場所なので。
ぼくはどっちも観ますし、『水曜日(のダウンタウン)』を観ていてヒヤヒヤする部分もあるんですよ。でもそれって、(テレビの)ルールがあるなかでギリを攻めていくヒヤヒヤ感がたのしいから観ているわけじゃないですか。そのなかで、たまにアウトが起きてしまったりして(笑)。それも含めてなぜつづいているかって、(視聴者が)おもしろいと思っているからですよね。それは、いいバランスなんじゃないかと思いますけど。
藤井:性的な描写もそうですけど、ともすれば悪人でもあるような人物を主人公にすることは、いまの地上波ではなかなかないことなので、そういう意味でも『全裸監督』は魅力的な作品ですよね。よく言われることですが、エロやドラッグの描写はOKだけれど、差別やひとを傷つけることはNGといった“世界的な正しさのライン”をNetflixが示している気はします。
山田:Netflixだからって、なにやってもいいわけじゃないですしね。そもそも、規制がなかったらむちゃくちゃになっちゃいますから。まあ、なんでもネガティブに捉えすぎないほうがいいなとは思いますけど。



藤井:役者さんの仕事であたらしくておもしろそうな企画は、いつも山田さんがやられている印象があります。そこは意図的なんですか?
山田:飽きないように、ですね。22年も俳優をやっているので、作品のテーマもそうですけど、どういう芝居を、どういう場所で、どういうアプローチで、どういうお客さんに向けてやるのか。常に変えていかないと飽きてしまうんです。
藤井:『山田孝之の東京都北区赤羽』などの作品を拝見していても、ほかの役者さんは羨ましがることが多いだろうなと。
山田:どうなんですかね。明日死ぬと思えば、みんな楽しんでやれると思うんですけど。これはネガティブじゃなくて、ぼくは常にそう思っているんで。とにかくいまやれること、やりたいこと、やらなきゃいけないことをどんどんやっていこうと。実は「赤羽」(『山田孝之の東京都北区赤羽』)とか「カンヌ」(『山田孝之のカンヌ映画祭』)をはじめたきっかけは、テレビのバラエティ番組なんです。
テレビドラマで「この物語に登場する団体名、人物名はフィクションです」って出しますけど、「いや、そんなことわかってんじゃん」みたいな憤りがあって。バラエティでも食べ物を粗末に扱うなといったクレームがきたことによって、いつからか「スタッフが美味しくいただきました」みたいな注意書きを出すようになりましたよね。それ、ちょっと行き過ぎてんな、と。「じゃあ、もうウソか本当かわかんないものをつくってやろう」と思って、つくったのが『山田孝之の東京都北区赤羽』なんです。
ー 実際にバラエティ番組の制作に関わる藤井さんは、どう対応しているんですか?
藤井:あらかじめ決められたルールのなかでどう遊ぶかは、わりと意識しているかもしれないですね。あえてラインを踏み越えたように見せたり、屁理屈みたいな感じで「そのラインは超えてないですよ」と遊ぶこともあります。ただ、基本的には、テレビでやるべきことはテレビでやればいいし、「テレビからはみ出しているな」と思ったことは、いまはほかにも出せるメディアがたくさんあるので、そういうところで表現すればいいと思っています。
山田:ひと言で「テレビ」といっても、ゴールデンと深夜でもできることの違いはありますし。民法とNHKでも変わってきますからね。
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