販売しないからこそ、いい。
ー ちなみにこれはコットン素材ですよね。機能面でいうと、どういうところがあげられるんでしょうか?
藤井: 機能というより、可動域の問題なんですよね。スーツって袖が縦についているので、前とか上に腕を上げづらいんです。けど、うちのジャケットって袖が前に振ってあるので、腕を上げやすいんです。というか腕って前にしか出さないですよね。あとは下げたときに綺麗に見えるか、というのが大切なんです。そのために適切な位置にダーツを入れています。
ー 今回のユニフォームは、何種類かのアイテムがあるんですね。
藤井: テーラードジャケットに、ワークシャツっぽいものと、あとはボタンダウンシャツもあります。厨房のスタッフはベルトがあると邪魔なので、イージーパンツでエプロン。あとヘアを保護するという意味でキャップもしていますね。フロアのスタッフはチノのセットアップで、ベルトをして、という感じです。
ー なるほど、厨房とホールで違うんですね。
藤井: 自分がやっているメンズのファッションって、全部ユニフォームから来ていると思うんです。ワークにしろミリタリーにしろ。けどミリタリーって命を守るという役目があるので、つねに進化しています。入札も多いですし。米軍への支給が決まると、一気に会社が大きくなったりしますからね。アウトドアブランドでも軍にユニフォームを提供しているわけですが、そのためにものすごい研究をしているんですよね。でも、飲食の制服って命には関わらないから「これでいい」がまかり通っているんです。
栗田: 結局、雰囲気だけなんですよね。和・洋・中、それぞれこんなイメージでしょみたいな。中華の料理人はこういう動きをするから、こういう形のユニフォームに、という風にはなってないんです。
ー そう言われてみるとそうですね。ネイビーという色はすぐに決まったんですか?
藤井: そうですね。黒ではないかなというのはまずあって。オリーブとかもちょっと違うかなと。なのでネイビーしかないなっていう感じでしたね。人が最も印象良く映る色というか。真面目に見えますし。日本人は絶対ネイビー似合うんです。

ー ちなみにお客様からのリアクションはどうでしたか?
平久保: すぐに変わったねっていうお声はいただきました。「実は〈ノンネイティブ〉の服なんです」とご説明をすると、まず「欲しい!」と言われますね。とにかく「かっこいいね」って言ってもらえることがものすごく増えました。制服ひとつで、ここまで人の印象って変わるんだなって驚いています。

藤井: あそこの飲食店の制服かっこいいよね、ってあんまり聞いたことないですよね。そういう意味では今回やってよかったなって思いますね。あと販売しないっていうのもかっこよくないですか?(笑)作っているときから売れるくらいのものにしておいた方がいいんじゃないという話はありましたけど、やっぱりスタッフだけのものっていうのがいいのかなって。

ー なるほど。飲食店のマーチャンダイズに関しても、いろいろ新しい可能性がありそうですね。
栗田: 自分も海外に行ったときに、気に入った飲食店に行くとお土産でロゴ入りのTシャツを買ったりするので、海外の店舗だけで販売したりしてもいいのかなって思います。
藤井: そうだね。「USHIMATSU NEWYORK」とかね。そうすると、そこにアーティストとかもついてくると思うので、そうなるとまた広がっていくもんね。
