―小林さんと〈コロンビア〉のフィッシングベストとの出会いについて教えて下さい。
小林:最初にフィッシングベストを手に入れたのは、80年代の頃です。現代アートの作家、ヨーゼフ・ボイスがフィッシングベストを着ている姿がカッコよくて同じようなものを手に入れたいと思ったのがきっかけです。そこで、釣具屋に探しに行き、いろんなメーカーのものを吟味したところ、〈コロンビア〉のフィッシングベストの品質が格段に良かった。60/40クロスのしっかりした素材感、肩周りの負担を軽減するクッション、そして数々のポケットと、あらゆる点で優れていました。それで、そのベストをすぐに購入。それが、数あるフィッシングベストのコレクションの最初の一枚です。
―当時、それをどのように着こなしていたのですか?
小林:僕は釣りをやりませんから、あくまで街着として着ていました。ポケットがたくさん付いたフィッシングベストは、ものを持ち運ぶラゲッジウェアとして最適。だから、海外を回っていた時は、ポケットに荷物を詰め込んでずっと愛用していました。当時は、そういう服を日常に取り入れるスタイルもありませんでしたから、街中で釣り好きの人に声をかけられるなんてこともよくありました(笑)
―〈コロンビア〉のフィッシングベストを収集するほど、魅了された理由はどこにあるのでしょうか?
小林:この服は、いわば普通じゃないディテールの集合体なんです。“このパーツは何のために付いているのか?”、“このポケットはどんな風に使うのか?”見ているとそういう疑問が次々に湧いてくる。非日常のあるいは異次元への扉が一枚の服の中に開いている。言ってみればファンタジーのある服。それが、僕にとって、〈コロンビア〉のフィッシングベストの最大の魅力です。また、ディテールの面白さだけでなく、プロダクト全体としての完成度が素晴らしい。ここまで徹底したものづくりは、長年積み重ねてきた技術と経験、そしていいものを作ろうというプライドが無いとできない。そういう点では、〈コロンビア〉という企業そのものにも魅力を感じます。