PROFILE
ヴィンテージショップ「ベルべルジン(BerBerJin)」オーナー兼バイヤー。多くの古着店が軒を連ねる原宿に1998年にオープン。以来、圧倒的な品揃えと豊富な知識により、ヴィンテージ・シーンを牽引するカリズマショップへと育て上げた古着業界のキーパーソン。今もなお自らアメリカへ買い付けに行くなど現場主義を貫き続けており、その影響力は日本に留まらず世界にまで及ぶ。
ぼくら世代とは違う感性を持っている世代ならではの、いまの感覚に期待しています。
ー なぜこのタイミングで、しかも原宿に新店舗オープンという流れになったのでしょうか?
山田: 「渋谷パルコ店」をオープンさせたのが一昨年の11月。すぐにコロナ禍になってしまい、予想していたよりも売り上げが上がらなかったんですよね。でも、それ以上にネックとなったのが、渋谷と原宿の距離感。ちょっと離れているため滅多に顔も出せなくなっていましたし、ならばそちらをクローズさせて、同程度の賃料で原宿に路面店を出すほうが、ぼくの目も届くしイイじゃないかと考えたのがキッカケです。あとウチの場合、ウェブストアで毎日40点ほど商品をアップしているのですが、「渋谷パルコ店」に回していた商品をウェブに回すほうが、在庫共有という点でメリットもありますし。
ー なるほど。この場所はもともと狙っていたのでしょうか?
山田: 場所自体はずっと探していましたね。条件としてはとにかく路面店であること。あとは「渋谷パルコ店」が13坪で「&ベルベルジン」が10坪程度なので、その両方を合わせた25〜30坪くらいのサイズという条件で探していたら、たまたま見つかったのがココでした。ですので、シンプルに両方の店舗を統合させるというイメージ。以前は服屋が入っていたようで居抜き状態だったので、内装の一部はそのまま利用して、あとはラックやショーケースなどの什器を入れたくらい。ただ、床は少しだけ本店の雰囲気に近づけています。
ー 空き物件も目立つ最近の原宿ですが、コロナ禍でクローズドした古着屋ってあまり聞きませんよね。
山田: 古着業界自体は調子イイんじゃないですかね、どこも。いま若い世代の間では古着がどうやらブームみたいですし。とは言え、その子たちがウチ(※ベルベルジン本店)で買えるかは分からないですけどね、値段もソコソコするし。ただ、それをキッカケとして普通の古着を買っている人たちの中から、ヴィンテージに興味を持つような子が10人に1人〜2人出てくれば、古着業界の裾野も広がっていくはずなので、これから徐々にそうなっていってくれればとは思っています。
ー 毎月、アメリカに買い付けに行かれている山田さんから見た同地の古着シーンも、似たような状況でしょうか?
山田: 昔に比べると選択肢の幅が広がっていますよね。あちらでもバカみたく古着が流行っていて、若い子たちがとにかくスゴイんですよ。それこそ、10代〜20代の子たちがローズ・ボウルのフリマに沢山来ていて。20歳そこそこの古着ディーラーも多いですし。そういった部分は現地での買い付け値にも影響してきています。
ー 彼らはどういったアイテムを求めているんですかね。
山田: もう何でもですよ。デニムはちょっとマーケットプライスがおかしくなっていますが、それ以外でもバンドTシャツなんかは日本よりも高騰しています。Tシャツは全般的に10年前と比べて10倍になっているような印象ですね。そうやって古着を探す若い世代が増えてきたことでの需要の高まりもあって、枯渇化していたヴィンテージも、ちょこちょこまた市場に出てくるようになっていたりして、昔よりも数自体は集まりやすくなっているというのが現状です。もちろん値段は相当上がっていますけどね。
ー カニエ・ウエストをはじめ、ラッパーなどのミュージシャンが着用しているのが、若い世代の間で流行っている理由の1つにはありますよね。
山田: 本当にそれですね。ただ色んな人がいるので、若い世代でもいわゆるトゥルー・ヴィンテージで全身を揃えて、昔の渋カジのコスプレみたいな子がいるかと思えば、全く逆のタイプもいたりして。着こなし方や楽しみ方は人それぞれみたいです。
ー 「ベルベルジン」を日本の古着界のリーディングショップと認識している人も多いと思うのですが、原宿や古着を盛り上げたいという意識はお持ちだったりするんでしょうか?
山田: ぼく自身にそういう意識はありませんね。なので、リーディングショップという自負もないですし、むしろそういう意識を持ってはダメだと考えています。それは我々よりも、もっと若い世代が持っているべきものじゃないですかね。
ー では今後、古着シーンはどのように変わっていくと思いますか? たとえば価値観の変化など。
山田: そういうのもぼくは考えないですね。ぼく自身が思う良いモノっていうのは、すごく範囲が狭いので、なかなかお客さんの元に届けることもできません。そこでこの「ベルベルジン 遊歩道」の店長を任せる康介のように、ぼくら世代とは違う感性を持っている世代ならではの、いまの感覚に期待しています。その上で、アイツが楽しく仕事ができればいいかなって(笑)。当然、売り上げには期待していますが、康介が“やって良かったな”と思って続けていける。それが一番大事だなって思っています。
ー かなり康介さんに期待されていますね。
山田: これまで10人以上のバイヤーをアメリカへ連れて行っていますが、バイイング能力やコミュニケーション能力に関してはズバ抜けていますからね。若い頃の(藤原)裕みたいな感じで、アイツも20歳そこそこでアメリカにずっと買い付けに行っていましたし。当時からアイツを知っている向こうの友人たちからも「裕にすごく似ている」って言ってますからね。
ー これは本店とまた違ったベクトルの名店が誕生する期待大! 続いて、店長の康介さんにお話をお聞きします。