ー 柿本さんがいいと思うもの。それはどういったものなんでしょうか？
柿本：いい意味で商売っ気を感じないものですかね。ぼくはブランドから服を仕入れるというよりも、デザイナーさんの作品をここで紹介しているという感覚なんです。デザイナーを尊敬していて、その人の感性に惚れ込んでいるから、その服が魅力的に映る。ぼくのそうした気持ちをお客さんに伝えながら接客をしたいから、この店ではスタッフを雇ってお店を任せるようなことはやめようと思っていて、商品数も限りなく減らしています。世の中ではWebで買うのが当たり前になってしまって、じゃあ実店舗にいま何を求めるかを深く考えることがありました。ぼく自身も服を買うときはそうやって接客されたいですし、服屋に行って自分がよろこぶことをここでは体現していますね。
ー 日々高揚感のある服しか着ていないと思うんですが、柿本さんは普段から〈ビルケンシュトック〉のフットウェアを愛用されているそうですね。
柿本：10足ほど愛用しています。ぼくがディレクターを務めている「ブルーム&ブランチ」でも長くお取り扱いさせてもらっていました。〈ビルケンシュトック〉って、デザインからではなくて、機能からプロダクトが生まれるところが好きですね。足を支えるというのが根底にあって、そこから生まれた機能美を大切にしているブランドだと思うんです。
ぼくは足が扁平足なんですよ。それもあって、機能的であることを知ってより「履きたい」という気持ちが高まりました。扁平足だと履きはじめはすこし痛いんですけど、インソールが馴染んでくるとすごく履き心地がよくなるんです。
家の周りだったりとか、この辺りにくるときに履いていて、リラックスシューズみたいな感覚ですね。カラダにいいフットウェアだし、脱ぎ履きがラクだし、サンダルでも飲食店にそのまま入れちゃうような品の良さもある。
ー ストレスを感じたくないという柿本さんの生活にフィットしていると。
柿本：そうですね、本当によく履いています。
ー どんなモデルをよく履きますか？
柿本：高校のときに「パサデナ」から履きはじめて、今日履いている「ボストン」もそうですし、「チューリッヒ」、「マドリッド」、「ロンドン」も好きです。インソールが主役ではありつつも、アッパーのデザインが豊富なのもうれしいですよね。いい意味でスタイリッシュなフットウェアではないというか、どこか素朴な雰囲気があるじゃないですか。ぼくはあえてセットアップとか、今日みたいにテーラーで仕立てたスラックスやトラウザーに合わせて履くことが多いですね。
ー そうした組み合わせにすることで、きれいなスタイリングも〈ビルケンシュトック〉も、お互いを引き立て合っていますね。
柿本：そうですね。素朴なデザインだけど、品がある。古いミリタリーウェアとかワークウェアにちょっと近い感覚をぼくは持っていて。スタイリングのハズしとして履くことが多いんです。
ー 今日履いていただいた「ボストン」の魅力はどんなところにあると思いますか？
柿本：これ、フランスのメゾンみたいなカラーリングでいいですよね。「ボストン」って夏でも冬でも、年中履けるのがいいんですよ。モヘアやウール、アルパカとか暖かいソックスを履けば、冬場でも快適ですから。
ー 〈ビルケンシュトック〉のフットベッドは、足医学に基づいた設計がされていますが、履いていていいなと思うことはありますか？
柿本：いろんなことを考えてつくられているんですよね。土踏まずの部分が足にフィットするようになっていたり、指の付け根部分に「トゥバー（Toe bar）」があって、きちんと足の指を使った歩き方を促進してくれていたり。快適で、なおかつ正しい歩き方をサポートしてくれる感覚があります。姿勢が正されるというか、シャキッとする。ビーチサンダルとかだと、ズルズルとだらしない歩き方になるような気がするんですけど、〈ビルケンシュトック〉を履いていると背筋も伸びて、歩き方がキレイになるような気がします。
あと、幅がナローとレギュラーの2種類あるのもうれしい。ぼくは足幅が広いほうなので、レギュラーだとちょうどいいんです。
ー ふたたび「柿乃葉」の話に戻りますが、昨年のオープンから1年が経過して、変化したことはありますか？
柿本：開店日は不定期で週末の休日メインでしたが、たまに金曜も営業したり、平日しか来られないお客さんの顔も見れるようになったのと、地元の方も徐々にですが増えてきたように思います。あとはこれからオリジナルアイテムもつくろうと思っていますね。自分が欲しいと思うアイテムがいくつかあって、それぞれ理想の形で具現化してくれるデザイナーさんたちにつくってもらう予定です。
ー 「柿乃葉」もどんどん進化しているわけですね。柿本さんを見ていると、仕事も生活も、その両方が充実していそうだなと感じます。
柿本：充実していますね。水槽ではなくて海で泳ぐ魚みたいに自由でありたいというのは変わらずに、なににも縛られずにもっと好きなことを追求したいです。
ー それが柿本さんの健康につながっていると。
柿本：努力することより夢中になれることを優先する方がストレスも溜まらないし、結果もついてくると思います。
ー 〈ビルケンシュトック〉もそうした生活に一役買っていますか？
柿本：もちろんです。本当にストレスのないフットウェアですから。
1978年に発売が開始され、40年以上もの長いあいだ、多くの人を魅力するロングセラーアイテム。天然皮革を使用しているので、履きつづけることでの風合いの変化を楽しめる。季節を問わず1年を通して履けるところも魅力。丸みを帯びたカジュアルなシルエットながら、ジンジャーブラウンのカラーリングには上品さと高級感が共存し、コーディネートをスマートに味付けしてくれる。
