ー 〈O.T.A〉も不要タイヤを材料にシューズをつくっていて、島津さんの活動とリンクする部分があると思うんです。
島津:タイヤはもともと地面の上を移動するためのものだから、靴にすごく合ってますよね。なによりそこには、段ボールと同じように物語がある。だからすごく親和性を感じます。
ー 履いていて気に入った点などありますか?
島津:つくりがしっかりしているのと、やっぱり履いていて安心感があるというか、タイヤだからなのかはわからないけど、地面についたときになじむ感覚があります。適度な重さがあって歩きやすいのも魅力的だなと思いました。

ー デザインに関してはどうでしょう?
島津:アウトソールの凹凸がタイヤを思わせるデザインになっていていいですね。それとは対照的に、アッパーのデザインは高級感があるところも魅力的だと思いました。ぼくはそういうプロダクトが好きなんですよ。段ボールでもよく異素材を組み合わせて、互いを際立たせるみたいなことをします。この靴もそんな感じで、パッと見たときはシンプルで品のあるシューズなんだけど、さりげなくアウトソールにタイヤが使われているっていうのがかっこいい。

ー ヒールの部分には経度と緯度の表示があって、デザイナーであるアルノー・バルボトーの思い出の土地やインスピレーションを受けた場所が示されています。アルノー自身、旅が好きで、そうしたマインドを象徴するデザインでもあるんです。
島津:ぼくも世界中を旅しながら段ボールを集めているので、似ていますね(笑)。モデルによってそれが異なるということですよね?
ー そうです。これは「グラヴィエール」というモデルで、フランス・ビスケー湾の海岸近くの砂浜「Le Gravière」からその名がつきました。
島津:段ボールも同じように住所とかが書かれているんです。それをグーグルマップで調べて、ストリートビューを開きながら「どういう工場なのかな?」って確認するのが楽しいんですよ。

ー 島津さんは財布やカードケースを中心につくられていて、ワークショップや本などでもそのつくり方を伝えています。それはご自身の作品の価値が薄まることを意味すると思うんですが、いまはどんなことに照準を合わせながら活動をしていますか?
島津:たまにワークショップなども開催するんですけど、参加された方から話を聞くと「段ボールに対する見方が変わった」と言ってくれるんです。それは自分にとってすごく意味の大きな言葉なんですよ。つくって終わりじゃなくて、実際に使えるところがミソだと思っていて。自分でつくったものを使うことでさらにモノに対する愛着が湧くじゃないですか。モノが必要になったときに、新しく買う以外にも選択肢があることを知るのは、励みにもなると思うんです。
ー 消費活動に対する警鐘というと大げさかもしれませんが、そうしたメッセージも込めているんですか?
島津:たとえば通販で買った商品が段ボールに入れられて届きますよね。それを捨てずに収納として利用すれば、新しい棚や箱を買わずに済みます。〈O.T.A〉もそうですが、世の中にあるものを上手に使うことって大事だと思うし、考え方や生活が豊かになるとぼくは考えています。

ー 不要なものを捨てずに有効活用したり、ものに対して愛着を持って大事にすることは、サステナブルな行動に繋がりますよね。
島津:そうですね。愛着を持つってすごく尊いことだと思うんですよ。モノを手にいれたときに、インスタントに使って終わらせてしまうのか、それよりも本当に愛すべきものを買って長く使うのか、どっちがいいかと問われたら、絶対に後者なんですよね。買い物をするときから既に社会活動ははじまっていて、無駄なものを買うよりも、やっぱりこだわったものを手に入れたほうがぼくはいいなと思います。

島津:〈O.T.A〉もこれだけしっかりした素材を使って高いクオリティのものづくりがされている。しかもそれがアップサイクルなアイテムっていうのがいい。履き込むことで味がでるし、それが愛着に繫がれば言うことないですよね。

フランス・ビスケー湾の海岸近くの砂浜「Le Gravière」からその名が付けられたブランドの定番モデル。アッパーにはイタリアンレザーを使用し、アウトソールはリサイクルタイヤを採用。ポルトガルの工房にてハンドメイドでつくられており、一目でわかる高い品質も魅力のひとつ。ヒール部分にはモデル名の由来となった場所の座標軸が刻印され、ブランドのアドベンチャースピリッツが表現されている。