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Extreme Sauna Trip 絶景外気浴を求め、東北へ。サウナ旅2021秋 Vol.1
MONTHLY JOURNAL OCT. 2021

Extreme Sauna Trip 絶景外気浴を求め、東北へ。サウナ旅2021秋 Vol.1

旅に出たい。我慢はもう限界スレスレだ。コロナが落ち着いたら、鎖から解き放たれた犬のように、どこかへ弾けて飛んでいきたい。ではどこに行く? 漫然と旅するよりは、何か明確な目的があった方が楽しい。そこで編集部が出した答えは、東北のサウナを巡る旅、通称“サ旅”。事前にリサーチしてみたところ、東北のサウナはあまり詳しく紹介されていないようだったが、むしろその方が好奇心をくすぐられる。よし、東北ならではのサウナへ繰り出そう。これは一泊二日で計5箇所、総移動距離1000kmオーバーという、サ旅強行軍の記録だ。

田んぼの水面に映る空。

行程に散々悪態をついておきながら、まだ見ぬサウナを巡ること自体はもちろん楽しみだった。現実的に回れる距離を加味しつつ、シバヤマが見事なリサーチの末にはじき出したのは、個性もそれぞれ異なる、5つのサウナだった。前編となる今回は、「外気浴」に特化した3施設を紹介していく。

ショウナイホテル スイデンテラス
(SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE)

山形県鶴岡市北京田下鳥ノ巣23-1
www.suiden-terrasse.yamagata-design.com
一名利用 ¥14,190〜(素泊まり、ツインルームに宿泊した場合の参考価格)

山形県は鶴岡市。“田んぼに浮かぶホテル”として、世界的建築家・坂茂さんの設計により完成したのが、ここ「SUIDEN TRRASSE」。その名の通り、米どころ山形県らしく水田に囲まれた、モダンなデザインのホテルだ。そういえば、スーパーでもよく見かけ、たまに口にする「つや姫」というブランド米も山形県産だったっけ。そう思うとグッと身近に感じられるから不思議なものだ。

早速なかを見て回ると、ブックディレクターの幅允孝さんが選書した2000冊もの本が並ぶライブラリや、地元の新鮮な食材を使ったフードと開放的なテラス席が楽しめるレストラン、バーにラウンジもあったが、わき目も振らずスパ&サウナへ向かった。

ここでの目的は、サウナーにはあまりにもよく知られた存在、ととのえ親方率いる「TTNE」がアドバイザーを担ったというフィンランド式サウナ。今年4月にリニューアルした「月白の湯」と「天色の湯」の2箇所(ともに男女入れ替え制)に用意されているそうだ。

「月白の湯」のサウナ室では、ヒバのアロマウォーターを使ったセルフロウリュを堪能することができる。加えて壁(ウォール)にかけられたのは、山形県産のラ・フランスとサクランボの組み木。そこに水をかけるロウリュならぬウォーリュも楽しめ、木の香りが室内を満たしてくれる。

今回の主役ともいえる水風呂からの景色は、まさにこの立地を生かしたものだった。水風呂は、田んぼの水面と目の高さがほぼ同じになるように設計されている。ととのった状態でそこから眺める景色は、田んぼを超えて、地球との一体感まで感じさせてくれる。少し大げさか? いや、ととのいの境地に達すれば、こう思わずにはいられないだろう。

これだけでも大満足だが、もうひとつの「天色の湯」も見逃せない。天井の木屋根から天窓、椅子、水風呂まで、至る箇所が六角形で統一されており、“デザイナーズサウナ”なんて呼ばれているようだ。椅子の一部は可動式で、好きな場所に移動できる。窓際で景色を見るもよし、サウナストーブに近づいて己を追い込むも良し。千葉県の超高温ストロング系サウナをホームとするシバヤマは、迷わず3段目をチョイス。セルフロウリュで体感温度を一気に上昇させ、今旅一発目のディープリラックスを堪能した。

デザインもさることながら導線も見事で、水風呂はサウナ室の真横に設置。水風呂上の天井は開かれているため、ぼうっと空を眺めることもできる。夜に入ったら、さぞかし綺麗な星空を眺められるのだろう。その真横にある露天風呂から望むのは、あたり一面に広がる水田。どこからでも自然を感じられるというのが、「SUIDEN TRRASSE」の最大の魅力だ。

ちなみに、水風呂の温度はだいたい14度。火照った体をキュッと引き締めるには最高のセッティングだ。水道水ではあるものの、ここは米どころの山形。断言はできないが、天然地下水の水風呂に匹敵する浸かり心地なのではないか。

この日はあいにくの曇り空だったが、もう少し晴れた日には田んぼの水面は水鏡となり、周りの景色を反射した、幻想的な光景になるという。ぜひ見たい。「本当に、本当に一泊しないの?」とシバヤマにすがるように確認するも、「次の目的地に行きますよ」と一蹴された。ハードボイルドだぜ。