「Walther Nero」¥22,000+TAX
スタイリッシュなモノトーンカラーで表現されたミニマムなデザインが目を引くブランドの代表モデル。レザーバンドと小ぶりなフェイスが程よく高級感を演出する。
“スキマ”的な時間を意識的、かつ有効に使う。
ーまず始めに川田さんのご職業について教えて下さい。
川田 :普段は「フルサイズイメージ 」という、ウェブを中心としたデザイン会社の代表をしています。また「BOOK AND SONS 」という書店のオーナーとして、グラフィックデザイン関連の本を中心にタイポグラフィに特化した本の選書をしています。併設するギャラリースペースでも、不定期でイベントや展示を計画していまして、ショップと同じようにグラフィックデザインやタイポグラフィにまつわる展示を計画しながら、お店の世界観と合うような若手のイラストレーターやデザイナーの作品なども積極的に展示しています。
店内にはタイポグラフィに特化したアートブックが国内外からセレクトされる。
ー機能やデザインなど、腕時計を選ぶ際のポイントがあれば教えて下さい。
川田 :基本的には、時刻が見やすいというのが一番のポイントですね。 職業柄、スマートウォッチなども試してみたのですが、高機能すぎるとそっちに気がとられてしまい、集中できないこともあるので、機能性はあまり求めず、シンプルに時刻を見るという機能があればそれでいいと思っています。
普段着ている洋服もベーシックなものが多いので、時計もそれに合うシンプルなデザインを選ぶ傾向があります。あとは外装だけではなく、文字盤の中の文字も気になりますね。
『BOOK AND SONS』でキュレーターを務める川田さん。実家が画廊だったこともあって、幼い頃からアートへの造詣は深い。
ー時計ということもあってお聞きしたいのですが、時間に対する考え方についてはいかがですか?
川田 :デザインの仕事をしていることもあって、無意味な装飾が嫌いなんです。それは時間の過ごし方でも同じで、無駄な時間も嫌いですね。僕のする仕事はプロデュースやディレクションなどの全体を見ることが多いため、どうしても時間というのは気になります。
打ち合わせの合間にデザインチェックやクライアントとのやりとりをすることも多く、その“スキマ”的な時間を意識的に、かつ有効に使おうと意識しています。常に細切れの時間の間になにができるかを考えているような感覚ですね。
使っていくなかで時計も自然と腕に馴染んでくる。
ー〈コモノ〉の「Walther Nero」の魅力はどういったところだと思いますか?
川田 :バンド部分がレザーなのにラグジュアリーすぎて見えないので、カジュアルからフォーマルなシーンまで幅広く使えると思います。 シンプルだけどバランスよく文字盤が配置されていて、どこか日本的なデザインだなとも感じます。 文字盤のなかで使われている書体もシンプルな“サンセリフ”というのが特に気に入っているポイントです。
ーその「Walther Nero」を身につけるのなら、川田さんはどんなシチュエーション(場面)がイメージできますか?
川田 :時計はあくまでもひとつのツールという考え方なので、シーンを問わずに日常的にガシガシ使っていきたいです。使っていくなかで時計も自然と腕に馴染んでくると思うので。最近はスマートフォンで時間を確認するひとも少なくないとは思いますが、僕は昔から腕時計派なんです。
ー確かにスマートフォンが普及してからは時計へ求めるものも変わってきたと思います。そのなかで川田さんが腕時計をする理由はなんでしょうか?
川田 :常に効率性を考えながら仕事をしているので自分が過ごしている時間が有効に使えているのか? というのは気になります。もちろんスマートフォンを時計の代わりに使用してもいいとは思うのですが、ポケットや鞄からスマートフォンを取り出すという手間を考えると腕時計というデバイスはその手間がなく、効率的だなと思いますね。
気付かれにくいけれど、確かに存在しているアートのように。
ータイポグラフィの本を取り扱う川田さんから見て、〈コモノ〉のルックブックを見て、どう感じますか?
川田 :写真をしっかりと引き立てている造りがいいなと思いました。デザインにも当然流行りがあるのですが、職業柄やはり時代を越えていくデザインに憧れてしまいます。そういったデザインは必ずシンプルで機能が美しいんです。このルックブックも〈コモノ〉の時計同様、ミニマムでそのプロダクトの魅力をしっかりと表現できていますよね。
ー〈コモノ〉は“身につけるアート”として、アントワープらしい洗練されたデザインが特徴です。川田さんの視点からは 、この〈コモノ〉の「Walther Nero」のデザインはどう感じられますか?
川田 :アートにもいろいろな文脈があって、すごく衝撃的でインパクトがあるものから、素朴だけどなにかを感じさせられるものまで沢山あります。そういった意味で〈コモノ〉の「Walther Nero」は後者に当たると思いますね。
すごい高値で取引されるアートではなく、日常のなかにあるアート。なかなか気付かれにくいけれど、そこに確かに存在しているアートのようなものですね。あとはブランド名の〈コモノ〉っていうのも日本らしさがあっていいですよね。
ーなるほど。川田さんらしい捉え方ですね。それはご自身のアートに対する向き合い方ともリンクしているのでしょうか?
川田 :そうですね。実家が画廊だったので家のなかにさまざまなアートが飾られていたのですが、子供の頃は何の価値があるのかわからないまま育ちました。最近になってようやくアートフェアなどでアートに触れる機会が出てきましたが、結局惹かれるものは日常のなかに存在できそうなアートだったんです。
今は街をジャックする大型のアートやインスタレーションが話題になりやすいと思うのですが、腕時計くらいの小さなアートがあってもいいなと個人的には思っています。
ー最後に、今回の〈コモノ〉の「Walther Nero」に合う一冊があるとしたらなんでしょうか?
川田 :始めにこの時計を見たときにまず思い浮かんだのが、20世紀のモダン・タイポグラフィを代表する巨人であるドイツ人のヤン・チヒョルト氏によるアートブックでした。シンプルな幾何学の図形と文字の組み合わせが、〈コモノ〉の「Walther Nero」とのデザインもマッチしていて、イメージが一緒だったんです。
Jan Tschichold 『ggg』
2013年に『ギンザグラフィックギャラリー』で開催された、ヤン・チヒョルト展の図録を記した本。ポスターや書籍、書体見本帳、新聞、雑誌、スケッチ、著書などの作品に焦点を当て、20世紀タイポグラフィ史上の最重要人物の業績の全貌を知ることができる貴重な一冊。
店内奥はアートギャラリーとなっていて、不定期でインスタレーションなどが開催される。
ショップに併設されたコーヒースタンド。専任のバリスタによって淹れたてのコーヒーが楽しめる。店前にはひと休みできるベンチも設置されている。
白壁と格子状の窓がシンプルに配置されたミニマムなファサード。