チームや古着のローカル性を楽しむのも一興。
ー ベースボールキャップは、ご当地チームのものを愛用するなどローカル色の強いアイテムです。栗原さんはアメリカ各地を回られていますが、古着もエリアによって地域性はありますか?
如実に違うのはデニムですね。カリフォルニアからアリゾナ、ニューメキシコ辺りは圧倒的に〈リーバイス〉が多く、テキサスに入った途端〈ラングラー〉ばかり。洋服以外ですとネイティブアメリカンのジュエリー、チマヨのブランケットは、やはりアリゾナやニューメキシコで見つかります。あとはニュースペーパーバッグも、その地域の地方紙のモノが出やすいですし、マイナー大学のスエットやTシャツなどもそうですね。
ただ、アイビーリーグのような有名大学は、その限りではありません。入学すると名誉なので、親がロゴ入りのTシャツやグッズを親戚中に配る習慣もあるらしく、遠く離れた地方でも発見されるし、これほど大量に出回っているのは、そのためです。
ー 実際に着用するアイテムも、エリアによる違いはあるのでしょうか?
昔ほどではないにせよ、多少の差はありますね。なので今日は、東西のアメリカをテーマに2つのコーディネイトを組みました。
東海岸を意識したスタイルでは〈フォーティーセブン〉のルーツであるボストン・レッドソックスのキャップに、〈カーハート〉のハンティングジャケットと〈チャンピオン〉のリバースウィーブ、足元にはアイビーリーガーご用達である〈クラークス〉のデザートブーツを合わせています。
〈カーハート〉は、大御所の〈リー〉と同じく中西部が発祥ですが、そのなかでも東側に位置するミシガン生まれだからかアメリカ東部にシェアがあり、それより西側に位置するカンザスの〈リー〉は西部に強い。さらにハンティングは、古くは東部の富裕層の間で流行していたこともあり、東部のイメージが強いアイテムです。加えてビースティ・ボーイズしかり、〈カーハート〉は’90年代のイーストコーストのヒップホップスタイルに欠かせません。寒さ厳しいデトロイトのブランドらしく防寒性の高いアウターが得意ですし、冷え込む冬の東部ではオシャレな若者から普通のオッサンまで、幅広く親しまれています。
〈チャンピオン〉もNY発祥、現在の拠点もノースカロライナなので、やはり東海岸のイメージが強いですね。アウター同様に’90sテイストでまとめて、当時の腰のポケットの付いたモックネックのリバースウィーブを選びました。
ー 対する西海岸のスタイルは、LA・ドジャースのキャップですね。
先ほども触れたとおり、西部は〈リーバイス〉の独壇場なので、デニムのトラッカージャケットです。また同じくスエットでも、LAではリバースウィーブを着ている人はあまり見かけません。温暖なカリフォルニアには、厚くて重い生地が適していないのかも。’90年代の〈ステューシー〉にリバースウィーブのボディもありますが、LAブランドとはいえNYカルチャーの影響も強く、事実リバースウィーブを使ったタイプには“STUSSY NEW YORK”とプリントされているデザインも散見されます。
LAの若者はライトウェイトのスエットが多いので、今日は’80年代のポリエステル混の一着、ディズニーのお膝元ということでミッキーマウスのモチーフをセレクトしました。仕上げに〈ヴァンズ〉のスニーカーで、すべてカリフォルニア縛りでスタイリングしています。
このようにブランドの違いはもちろん、地域の気候、ヒップホップに象徴される盛んな音楽であったり、ハンティング、スケートボードやサーフィンといった遊びやカルチャーも少なからずファッションに反映され、地域性が生まれていると思います。ローカル色が強く表れるベースボールキャップと同じように、そうした視点で古着を楽しむのも一興ですよね。そうしたテーマを自分なりに設けてコーディネートを考えると、また着こなしの幅が広がり、深みが増して面白いかもしれないですね。