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FEATURE
演じるために、人をもっとわかりたい。映画『流浪の月』公開記念、松坂桃李インタビュー。

演じるために、人をもっとわかりたい。
映画『流浪の月』公開記念、松坂桃李インタビュー。

人はいつも多面的だ。それなのに、私たちはニュースやSNSを通して、誰かを理解した気になってしまう。わかりやすいフレーズが一人歩きし、断罪する言葉が飛び交い、曖昧な領域はなかったことにされてゆく。
映画『流浪の月』は、ある出来事の背景にある、繊細で曖昧な感情・関係性を描いた物語。誘拐犯と見なされて捕まった男と被害女児として報道された少女、二人のその後の人生は、人々が知っているつもりの真実とは異なる様相を呈している。
本作において主演の佐伯文を演じた松坂桃李は言う。「この役を理解するために、自分が思いつく限りのことを全てやりました」と。物語の中に生きる人物を深く理解し、演じようと試みる彼の真摯な姿勢は、情報が溢れる社会を生きる私たちに示唆を与えてくれる。

  • Photo_Yuka Eda
  • Interview&Text_Taiyo Nagashima
  • Edit_Ryo Komuta

about

流浪の月

10歳の時に、誘拐事件の“被害女児”となり、広く世間に名前を知られることになった女性・家内更紗(かない さらさ)と、その事件の“加害者”とされた当時 19 歳の青年・佐伯文(さえき ふみ)。二人の再会を描いた物語。

言葉にできない複雑さを抱えている人は確かにいて、だからこそ、この映画を描く意味がある。

ー まず、完成した映画を観て、ご自身でどう感じたか教えてください。

佐伯文という人物は、これまで演じてきた役のなかで最もハードルの高かった役です。だからこそ、一度目の試写では客観的に観れなくて、お願いして二回目を観させてもらって、ようやくこの物語を受け止めることができました。

世間に届いている情報と、文が抱えている真実、更紗が抱えている真実が、板挟みになって、こすれてこすれて、すり減っていった二人がギリギリのところで手を繋いでいく。そういう物語だと解釈しています。

この二人の関係性は、家族とか親友とか恋愛とか、言葉では括れない、強くて、そして繊細なもの。そういう感情がこの世に存在しているーーー存在していてほしいという希望のような感情を抱きました。

ー 松坂さん自身は、言葉では表現しにくい強い繋がりを、これまで感じたことはありますか?

振り返ると自分にはなかったなと思います。この映画は、言葉では言い表せないような繋がりを描いていて、僕はそれを経験したことがないなと。それは文を演じる中で初めて触れたもので、なんていうか、その強さに憧れのような感覚もあります。

ー この映画が、どんな人に、どのように届いてほしいと思いますか?

文の真実に関わる内容で、ネタバレに繋がるので言葉を選ばないといけないんですけど、他人には言えない事情を抱えている人って、決して少なくないと思うんです。そういう人たちにこそ見てもらいたいな、と思います。

役作りをする上で、文献を調べたり、さまざまな方に話を伺いました。とても難しい役だなと改めて感じたし、本当にセンシティブな真実を抱えている人がいるんですよね。でも、描かれにくいものを、できる限り丁寧に、真摯に描くということができたなら、それは映画の他には代え難い価値だと思うんです。

ー 演じる上では、勇気も必要だったのでは?

そうですね。大きな責任と不安がありました。ただ、この役に挑戦するモチベーションになったのは、「複雑なものを抱えている人が、この映画を通して何か感じてくれたらいいな」という思いなんです。それはずっと一貫していましたね。

INFORMATION

流浪の月

公開:5月13日(金)全国ロードショー
監督・脚本:李相日
原作:凪良ゆう『流浪の月』(東京創元社刊)
出演:広瀬すず 松坂桃李 横浜流星 多部未華子
撮影監督:ホン・ギョンピョ
音楽:原摩利彦
製作総指揮:宇野康秀
配給:ギャガ
©2022「流浪の月」製作委員会

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