言葉だけで伝えず、目に入るものすべてで。
ー実際にお店として「スローテンポ」を始めて、どういう反応がありましたか?
小野寺:今ではぼくが思っていた以上に、地元の人も足を運んでくれるようになりましたね。これにはちょっとびっくりしました。友人もふらっと遊びに来てくれたりして、この場所でコミュニケーションを楽しむことができるようになったのは、渋谷にオフィスを構えているときと異なる点ですね。ここをやっていて、毎日がすごく楽しいんですよ。
ー「スローテンポ」を続ける中で、変化したことはありますか?
小野寺:扱っているブランドは変わらないんですけど、「スローテンポ」があることで、セレクトの意図や〈メイプル〉の世界観の軸ができたように感じています。置いている古着にしてもそうなんですが、言葉で説明しなくても、ここにある物全体を通じてどういう考えでやっているのかを、よりわかりやすく伝えられるようになったんですよね。プロモーションという意味でも収まりが良いというか、自分の好きな世界観を「スローテンポ」で具現化できたんじゃないかと思います。
ー改めて〈メイプル〉のルーツを教えてもらえますか?
小野寺:〈メイプル〉は2003年に会社を立ち上げたタイミングでスタートさせました。もう19年ほどやっていることになりますね。この背景にあるのは、20代前半の頃にバックパッカーとしてアメリカを旅したときに体験したことがあるんです。100リットル程度のバックパックを背負って、3ヶ月ほどバスを乗り継ぎながら西海岸からシアトルへ、さらに南にも行って、内部はニューメキシコからサンタフェまで。それが小さい頃から憧れてたアメリカの初旅行だったんです。
ーそのときの光景などが〈メイプル〉に影響を与えているんですね。
小野寺:そうですね。今でこそSNSなどでアメリカの生活やファッション感を簡単に知ることができますけど、当時は行かなくては本当の空気感を理解できない時代だったので衝撃でした。同時に、そこで暮らしている人たちのライフスタイルに感銘を受けたんです。朝から笑顔で海に入っていたりして本当に気持ち良さそうで、まさにメロウ・ピープルだな、自分もこういう生活がしたいと。〈メイプル〉は、その言葉を短縮した造語なんですよ。あのシーンにマッチする何気ない日常着をやろうと言うのは今も続いていますし、リソースは旅での体験からきているんです。
ー今後「スローテンポ」でやっていきたいことはどんなことですか?
小野寺:ポップアップなどのイベントは積極的にやっていきたいですね。色んな人が交流できる場所にしたいと考えて作った空間でもあるので。地元で農家をやっている友人もいて、以前のポップアップのときに朝採れ野菜を持ってきてもらったりしたこともあるんですが、とても楽しかったんですよ。そんな風に、仲間がやっていることと自分が提案しているものをクロスオーバーさせて発信を行いたいですし、駒沢及び世田谷だからこそできるイベントや打ち出しを行っていきたいと考えています。