ファッションはもっとガチャガチャしててもいいんじゃないか。

ー都築さんはどうしてファッションが好きになったんですか?
都築:幼馴染ですごく仲がいいやつがいて。少年野球のチームがいっしょで、家も近かったんですけど、中学は別々の学校に通っていたんです。高校生になってまた再会したんですけど、あの頃はジャージを穿いてママチャリに乗っていたやつが、カラースラックスに細いタイヤの自転車に乗っていたんですよ(笑)。それがすごくかっこよくて、彼の背中を追いかけているうちに自分もファッションにのめり込んでいきました。
吉川:それっていつ頃のことですか?
都築:もう10年くらい前ですね。
ー当時はどんな服が流行ってたんですか?
都築:なんだろう? 明確にコレっていうのはわからないですけど、ファストファッションが全盛でしたね。高校生でお金がなかったので、そういうところで服を買って、あとはお金を貯めて古着屋に行ったりとか。
吉川:ぼくも高校生の頃は古着屋に行ってました。94〜96年くらいで、当時はインターネットも浸透してない時代。ファッションの情報は雑誌から得るか、あとはお店のひとから聞いてましたね。90年代前半にヴィンテージブームがあったので、ぼくもそこが入り口でした。
都築:じゃあ同じですね。ぼくも友達に習うように服を買ってましたね。
ー都築さんが高校生の頃はインターネットも普及していたと思うんですが、どうやって情報を収集していたんですか?
都築:ネットで調べるっていう感覚はなかったですね。とにかく友達といっしょにいろんなものを見て、お店に行って、お互い得たものを情報交換しながら吸収し合っていました。
吉川:いまもそんな感じですか?
都築:そうかもしれないです。積極的にファッションの情報を追うことはしてなくて、どちらかというとトレンドには疎いタイプなんです。なんとなく目に映ったものが気になって、それを掘り下げるっていうことのほうが多いですね。けっこう感覚的かもしれません。
ーそれはネットに限らず街中とかでも?
都築:そうですね。むしろ街中のほうが多いかも。

ーどういうものが気になるんですか? 都築さんってスタイリングがすごく上手で、他のひとにはない個性がありますよね。
都築: ファッション好きで仲のいい友達が5人くらいいて、みんなそれぞれ系統や着こなしの雰囲気がバラバラなんですよ。それでお互い影響を与え合っているというか、ぼく自身、友達の着こなしのいいとこ取りをしている感覚なんです。あとは普段お世話になっている古着屋が神戸にあるんですけど、何ヶ月かに一回そこへ行って、朝から夜までずっと試着をしたりオーナーと話したりしながらいろんなものを吸収してます。
吉川: 90年代の終わりくらいに『FRUiTS』っていうファッションスナップの雑誌があったんですけど、都築さんのスタイリングを見て、それを思い出しましたね。インスタグラムなどでもスカートを穿いたスタイリングをアップしてますけど、当時の『FRUiTS』にもそうした着こなしをする男性が載っていたりして。あとは着物を再構築したような服を着て、下駄を合わせてたりとか、とにかく個性的でユニークな着こなしをするひとたちがたくさん掲載されていて。
都築: 裏原の時代ですか?
吉川: 同時期だったんですけど、そことは相まみえない独特の世界があったんです。
都築: ぼくも当時のファッションの話を聞く機会があるんですけど、その頃のほうが自由度が高かったのかなって。
吉川: そうかもしれません。情報が少なかったぶん、目立ったもん勝ちみたいなところがあって。だけど、都築さんもそうなんですけど、いまの20代のひとたちのほうが色使いや小物使いが上手で洗練されているように思います。むかしはもっとガチャガチャしてたから。
都築: へぇ~! それはうれしいですね!
ーそれは意識して整えているんですか?
都築: 自分の中で基準となるバランス感があるんです。だけど、ぼくは吉川さんが話しているようなむかしのファッションも好きですね。当時のほうが自由度が高かったから、いろんな表現があってユニークだと思うんですよ。個性があらわになったほうがおもしろいじゃないですか。

吉川: いろんなひとがいましたからね、本当にカオスでした。
都築: いまはなんでも整いすぎて、街ゆくひとたちがそうした個性的なファッションに対して免疫ができてないように感じますね。もっとガチャガチャしててもいいんじゃないかって個人的には思うんですけど。