顔つきはそうじゃないのに、つくりとしてはギアである。

PROFILE
1982年生まれ。本庄克行氏に師事後、2011年に独立し、ファッション誌から広告やカタログ制作まで、さまざまな媒体で活躍中。アウトドア要素を柔軟に織り交ぜた、モダンかつリアルなスタイリングに定評がある。キャンプや登山などアウトドアにも造詣が深く、服のスタイリングだけではなく、全体のディレクションを求められるケースも増えている。
ー数あるアウトドアブランドを見てきた佐々木さんから見て、「ムーンロイド」のアイテムはどう映っていますか?
佐々木: 機能としては抜群なのに、街着としてのデザインに潔く振っているから、使い勝手がとてもいい。ぼく自身のスタイルも、ブラックを中心とした抑えた色合いのアイテムばかりを使うので、たとえば「ムーンロイド」が〈ナンガ〉に別注して作っている〈ナンガ ホワイトレーベル〉の「最強ダウン」の色もしっくりくるんです。
ー〈ナンガ ホワイトレーベル〉のダウンに用いられているカラーは、北海道の冬の空の色をモチーフにしています。

佐々木: その姿勢もいいですよね。ちゃんと「ムーンロイド」のある北海道という土地を表現していて。自分たちのいる環境や、その周りの自然をモチーフにしているというのは、アウトドアブランドとしてすごく信頼できるポイントです。
ー佐々木さん自身、愛用している「ムーンロイド」アイテムはありますか?
佐々木:
2014年に販売された、スタイリングでも使ったダウンパンツの前モデルを履いてます。あまりボトムスの保温性は気にしない人が多いかもしれないですけど、いざ穿いてみると、すごく温くて快適なんですよ。外で着て、うちに帰って風呂に入って、気づいたらまた足を通していた、みたいな(笑)。
60/40の生地も普段使いにぴったりだし、シルエットもきれいでめちゃくちゃ重宝していました。今年のモデルは、側面の縫い目をなくすことで、より暖かく、より快適に穿ける。そのアップデートし続けようとする姿勢にも感服します。
ーシグネチャーの一つである〈ナンガホワイトレーベル〉「最強ダウン」は、マイナス10℃を大きく下回る「ムーンロイド」のある当麻町でも快適に過ごせるダウンをつくる、というのがその出発点です。


佐々木: マーケティングではなく、出発点が個人の思いというのはいいですよね。その成り立ちや思いが先行する姿勢は、アウトドアのガレージブランドの匂いを感じます。そういうところもアウトドア好きのツボを突くんだと思います。
ー外にでるときはTシャツなどの薄着の上に、このダウンを着るだけでも十分なくらいのスペックを誇ります。細かな数値としては、〈ナンガ〉のインラインのウェアでも860フィルパワーがマックスのところ、「最強ダウン」は940フィルパワーです。
佐々木: だからですかね、持っても、袖を通してもめちゃくちゃ軽い。薄着の上にダウンというスタイルは北海道ならではとのことですが、店内や公共交通機関の車内も暑い東京のような都市でもぴったりだと思いますけどね。
ーそのほかで、気づくところはありますか?


佐々木:
一般的にアウトドアブランドのダウンジャケットは、オーバーサイズだったり、一目でわかるくらいダウンがパンパンに詰まっています。でも、「最強ダウン」は、ちょうどいい厚みとダウンの詰まり具合なので、外見上オーバースペックには見えない。なのに、袖を通すとめちゃくちゃ暖かい。これはパターンからダウンの量まで、つまり細部まで、すごく計算されている気がします。
そことも通づるんですけど、〈ロッキーマウンテン・フェザーベッド〉の別注アイテムにも言えることで、モダンなデザインは活かしながら、北海道でも耐えうるスペックを持たせている。バランスがとても優れていますよね。
ーちなみに、ほとんどのアイテムを社長自らサンプルを着て、日常の生活を送った結果、細かなディティールを調整しているそうです。
佐々木: インディペンデントのショップで、そこまでやっているのはすごく好感が持てます。それってもう情熱以外の何者でもないじゃないですか。その話を聞くと、一見ギアの顔つきじゃないのに、つくりとしてはギアなんだなと。街着としてデザインされているから入り口は広いんだけど、その奥には徹底したこだわりが広がっているというのは、なかなか真似できないと思います。
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