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藤井隆行と高橋盾。ノンネイティブとアンダーカバー。必然ともいえるコラボレーションのナラティブとは。
Portraits of Modern Japanese

藤井隆行と高橋盾。ノンネイティブとアンダーカバー。
必然ともいえるコラボレーションのナラティブとは。

日本のファッションシーンを長らく牽引してきた〈アンダーカバー(UNDERCOVER)と〈ノンネイティブ(nonnative)〉。一見すると共通項の少なそうな両者ではありますが、実はここ数年、両ブランドのデザイナー、高橋盾と藤井隆行は静かに親交を深めてきました。そしてこの度、二人の交友が大きな成果物へと結実しました。コレクション名は「OZISM」。すなわち小津イズム。そしてテーマは「和」。なぜここへきての小津(安二郎)なのか、そして和なのか。そこには必然としか言えないナラティブ、そして文脈が息づいていました。

ーこの素材(POLARTEC®️ Wind Pro®️)がすごくいいですよね。

藤井:この素材は、去年〈グラミチ(Gramicci )〉とのコラボレーションアイテムで使って、そのパンツをジョニオさんがよく履いてくれてたんです。なので、素材はすんなり決まりました。作務衣となると、例えば草木染めとか藍染とか、そういうのをイメージしがちですけど、最初はもっとハイブリッドな感じにしたくて。そこが〈アンダーカバー〉っぽさでもあるし、あとは自分が考えるアウトドアっぽいものとミックスしていくとどうなるのか、みたいなことでやりとりをしていきました。結果、3〜4回くらいはサンプル作りました。

ーそれはすごいですね。

藤井:でも、毎回打ち合わせというよりも朝6時からさらっと話をしたり、会ったときにちょこっと詰めたりするぐらいだったので、そんなに根をつめてやったというわけでもないんです。

高橋:そうだね。だから全体的に俺たちの日常に沿ったプロダクトになったよね。地に足のついた感じというか。

ー今だからこそできたというか、これが10年前だったら形になってない気がします。

高橋:それはそうですね。

ーそうやって葉山や秋谷という土地をベースにしたコミュニケーションが育まれるなかで、和や小津安二郎というキーワードが出てきたわけですね。

藤井:はい。自分はそんなに積極的に小津を観てきたわけではなかったんですけど、今回ジョニオさんにどれを観た方がいいかというのを、具体的に教えてもらいました。

高橋:昔から日本の映画が好きでよく観てるんですけど、「これは藤井家に見てほしい」という感じで、小津以外にも色々おすすめしていました。

藤井:個人的に、ジョニオさんが寅さんとか釣りバカみたいな映画を面白がるイメージがなかったんです。もっと洋画な感じというか。

ーそれはなんとなくわかります。

高橋:寅さんはやっぱり映画としてものすごく面白いですよね。あと、歳を重ねていったことで響くものってあると思うんです。小津なんかはとくに家族がテーマだったりするし、そうなると自分たちにも子供がいるという境遇のなかで観ると、すごく染みてくるというか。

ー間違いないですね。

高橋:小津の作品のなかに、作務衣が出てくるわけじゃないんです。ただ、笠智衆の佇まいとか、映像美を見ることによって、それがどこかに現れるだろうし表したかったんです。

ー「OZISM」のイズムというのが、まさにという感じですね。精神性のようなものを落とし込んだというか。

藤井:「OZISM」という言葉がジョニオさんから出てきたときに、すごくいいなと思いました。さすがだなと。

高橋:今回、グラフィックは自分が担当していたんですけど、このプロジェクトに冠をつけたいなと思ったときに、これは小津だなって思ったんです。

ー今回のルックでは、北鎌倉で撮影をされていました。

高橋:小津の映画に北鎌倉の駅が頻繁に出てくるんですけど、その様子がものすごく好きだったんです。さらに小津のお墓も北鎌倉のお寺にあるということで、藤井と行ったこともあります。

藤井:行きましたね。北鎌倉の駅って、昔とあまり変わってないですよね。入口の無人の感じとか。そういう駅って珍しいと思うんです。

ーあのあたりはすごく雰囲気がいいですよね。夜、電車が止まったときの静寂とかすごく落ち着きます。

高橋:映画で観ててもすごく不思議な感じがして、実際に行ってみると藤井の言うように昔となんら変わってないっていう。駅の向かいにある円覚寺の佇まいもすごくよくて。お寺たるお寺というか。

ージョニオさんは近年こうした和の部分に心惹かれているということを度々発信していますが、藤井さんはどうだったんでしょうか?

藤井:自分は奈良出身なので、そういうものにはどちらかというと拒否反応がありました。実家が薬師寺とか唐招提寺とかの近くだったというのもあって、そんなに興味が持てないというか。京都にしたって、ジョニオさんが京都に行くのとは全然違うんですよね。

高橋:捉え方がね。

藤井:はい。戻る感じというか。さらに奈良は守る街なので、京都ともまた違うんですけど。そういうのもあって「河井寛次郎記念館」も知ってたんですけど、行かなかったですね。けど親父に聞いてみたら、小津とかは家でよく観ていたらしいんですよね。これまでそういう話もしたことがなかったけど、ようやくできるようになりました。

高橋:年齢はあるよね。映画と一緒で、人生経験を積んで子育てをして、やっとわかることってあると思う。中学校とか高校のときに修学旅行で京都に行っても「また寺か」みたいな。

藤井:僕は修学旅行、鎌倉でしたからね。

ー古都から古都に(笑)。

高橋:やっぱり大人になると、ものの見方が全然変わってきますよね。

MONK JACKET
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ー今回、いくつかプロダクトがあるなかで、このジャケットがメインになるんでしょうか。

高橋:そうですね。

藤井:ジョニオさん、剣道やられてたじゃないですか。これってどこか道着に近いところがありますよね。

高橋:確かに剣道やってたとき、道着が好きだったな。袴とかも含めてかっこいいと思ってた。ただそれを自分のデザインに取り入れるという意味では、 このノーカラーはやっぱり抵抗があったかな。

藤井:それはそうですよね。あれはユニフォームですからね。

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nonnative×UNDERCOVER

発売日:12月10日(土)
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