なぜ、浜町なのか。
ここまで「T-HOUSE New Balance」の店舗デザインやラインナップについて触れてきましたが、ふと疑問に思ったことがひとつ。なぜ、〈ニューバランス〉は、ファッションやスニーカーのイメージが薄い浜町に店を構えたのでしょうか?

「お店を出すことは後々決まったことで、もとは2012年に始動した『TDS』のアトリエをつくるところから始まりました。ランニングならアメリカ、サッカーならイギリスといったようにカテゴリーごとの研究・開発拠点があるのですが、ライフスタイルカテゴリーにだけそれがなかったんです。スポーツと日常がより密接になっていくなか、それを研究する場所をつくるべきという理由で、当時からライフスタイルカテゴリーを牽引していた日本で『TDS』が設立されたのち、その拠点として2020年に実際のアトリエを構えることになりました。
まず候補に挙がったのは、東京の東側。なぜなら、足袋や下駄など、ものづくりの職人さんが昔から多くいる、クラフトマンシップが根付いたエリアだったからです。浅草、蔵前、清澄白河… いろんな場所へ足を運んで検討した結果、ようやく辿り着いたのがここ浜町でした」
“手しごとのみえるまち”をキーワードに、クラフトマンシップ溢れる個性的なショップの誘致が進められる浜町。古き良き老舗が立ち並ぶ一方で、「T-HOUSE New Balance」のような新しいショップが続々とオープンしています。そのミックス感は〈ニューバランス〉とも親和性があり、浜町の最大の魅力でもあると、加藤さんは話します。そして、前回紹介した「Single O」をはじめ、横軸の繋がりも広がっているそう。
「近隣のカフェ『ハマハウス(Hama House)』はよくミーティングで使わせていただいてます。海外のチームは『Single O』をすごく気に入ったようで、来日中は毎日のように通っていましたね(笑)。その逆も然りで、周辺のショップのスタッフさんたちもよくこのお店に来てくれて、〈ニューバランス〉のシューズを履いてくださっています。やはり浜町はディスティネーションと呼ばれる、目的を目掛けて足を運ぶような場所です。ですが、どこにどんなお店があるのか、あまり知られていないのも事実。なので、来ていただいたお客さまに、相互のお店を紹介する流れが生まれてきているのも、素晴らしい傾向だなと思います」

昔ながらの街並みを残しつつ、新しいカルチャーを育む浜町。加藤さんが今後の街づくりに期待することは?
「オープンから2年が経ちますが、その間にいろんなお店ができたこともあり、着々と人の流れが増えてきました。浜町は、日本でここにしかないショップやそこならではの購入体験が楽しめるエリアです。今後もそのようなオリジナリティのあるお店が増えていけば、もっと街が活性化するんじゃないかなと思っています」