これからまた、開襟の出番は増えてくる。
今回は開襟シャツというテーマでお二人にお話ししていただこうと思っていますが、小林さんは昔からよく着られていましたよね?
小林新(以下小林)結構多いかも知れません。ただ、一番着てたのはすごく若い頃なんですよ。世の中がイメージするところの男っぽい感じというか、不良っぽい着方でしたね。その時は。古着のワークシャツで、開襟っぽく着られる台襟のないものを選んだり。
でも、20代後半から30代前半にかけては少し年齢的に中途半端に感じて、着づらかったんですよ。白い開襟シャツとかに憧れはあったんだけど、人間性が追いついてなかったんでしょうね(笑)。
だけど30代も後半になってきて、少し色気のあるものがやっとしっくり来るようになって。開襟シャツも、ともすれば色っぽいアイテムだと思うんです。極端な話、おじいちゃんとか、そういう人たちが着てるとすごく格好良く見えるアイテム。
僕はもちろんまだそこの域には行ってないけど、着ても大丈夫かな、と思えるくらいの年齢にはなってきた気がします。また人気が再燃しているのもあって、今また着たいなと思っています。今年はアロハとか花柄にトライしても良いかなって。
渡部さんは初めて開襟シャツを着られた時のことは覚えていますか?
渡部陽介(以下渡部)多分17〜18歳くらいのときですね。ボウリングシャツが欲しくて、古着で探して買ったのを覚えてます。それから僕も若干ワルっぽい匂いが好きになったりもして、柄物や刺繍の入ったものも着たりしてました。自分がスカが好きだったこともあって。
スーツの下にアロハを着たりもしてましたね。そのあともウエスタンが好きだったり、ジャケットでも50sの開襟に近いデザインを着たりとか、いろいろ節操なく手を出してますね、振り返ってみると(笑)。
ショップを見ていて、いつもの春夏より開襟シャツが多いような気がしていたんですが、実際に増えているんですか?
渡部圧倒的に増えてますね。シャツだと、去年まではどちらかというとバンドカラーとかノーカラーとか、そういうものの方が人気でしたし。だけど開襟シャツがまた盛り上がりはじめていて、僕自身は職業柄ミーハーだから(笑)、そうなってくるとやっぱり着たくなってしまって個人的にも何着か購入しました。
僕は今年34歳になるんですけど、若い世代のトレンドも見てるし、先輩たちのルーツも一部は見ています。その両方を踏まえながら、今っぽく崩せたらいいのかなと思っています。5年くらい前に買った開襟シャツをまた引っ張り出して着たりもしてますよ。
先ほど言われたように、今までは開襟シャツというと男っぽいデザインが多かった気がしますけど、今日お二人に着ていただいたラインナップを見ても今年はバリエーションがかなり豊富ですね。
渡部そうだと思います。他に昔と違うところでいうと、サイジングも昔はジャストサイズで着るのが当たり前でしたけど、今はオーバーサイズもアリになってるのがおもしろいですよね。今日、僕が着てきたシャツもワンサイズ上を選んでいます。素材もレーヨンの落ち感があるものから涼しげなリネンまで、選択肢は本当に多いと思います。
コレクションブランドからも多くリリースされていて、実際に僕が開襟シャツを久々に着はじめるきっかけになった一枚も〈コム デ ギャルソン〉のものでした。だから、今はそういうモードなスタイルにもハマるなっていうイメージです。
小林さんはスタイリングで開襟シャツを使う頻度は変わりましたか?
小林正直、少し前まではほとんど出番がなかったですよね。そもそもリースに行ってもあまり種類もなかったし。でも、今のこの流れで急激に増えてるし、これからスタイリングでの出番は増えてくるでしょうね。
色んなショップで力を入れ始めてるし、リースに行ってボウリングシャツなんかがあると、「おっ、懐かしいね」とかって話してますしね(笑)。でもそう考えると意外と再燃するのは早かったかも知れない。
渡部多分7〜8年くらい前ですよね。胸にチェーンステッチが入ったものとか背中に大きな刺繍が入ってる開襟シャツが一気に流行ったのって。
小林そうですね。でも今回は流行り方がその頃とは違う感じがしますね。ラギッドっていうよりは上品さの強いものの方が主流になりつつある気がします。
元はと言えば開襟シャツは上品なアイテムですもんね。
小林そうなんですよ。セットアップの中に来たりしてもいいものだし、逆に真っ白のリネンの長袖の開襟シャツなんかは海外だと冠婚葬祭で着たりもしますしね。そういえば、映画「ラ・ラ・ランド」でも着てましたよ。ライアン・ゴズリングが。
着てましたね。っていうか映画観られてたんですね(笑)。
小林移動中の飛行機の中で観ました。でも真面目な話、世界的にもそういう流れがある気がします。去年は〈サンローラン〉でも開襟シャツが出てましたし。それもやっぱり武骨っていうよりは上品なシャツの流れですよね。
渡部うちでも今回、〈ギットマン ブラザーズ〉とか、クラシックなシャツを作っているブランドに別注して何型か作っているんです。それもベースはボタンダウンとかのトラッドなもので、生地はそのままで、襟の形やシルエットをこちらで指定させてもらって、オープンカラーで作りました。カジュアルなデザインでも、やっぱりシャツメーカーならではのきれいさがあるんですよね。
今、開襟シャツを着る上で意識するのはどんなことですか?
小林うーん、シワじゃないかな? 今年着るんだったら、糊が効いてるくらい、ピシッと着てもいいんじゃないかと思ってます。古着のクシャッとしたヤツなんかも好きなんですけど、特に今年買い足すとしたら、やっぱりきれいなものがいいですね。素材もレーヨンとかリネンとかになるのかな。
小林なんていうか、夏に半袖のシャツを着て暑かったら意味ないと思うんですよね(笑)。だから、流行りではあるけどちゃんと実用性重視です。海外行く時なんかはリネンの長袖シャツを必ず持って行きますしね。
小林海外で少しいいレストランに行こうとした時、ビシッとすると暑いじゃないですか(笑)。だけど、開襟のリネンシャツがあれば、それで十分なんですよ。乾きが早いから、洗って部屋に干しておけば次の日にはもう乾いてますし。それをきれいにプレスかけて着ることが多いです。だから、やっぱりライアン・ゴズリングですよね。着こなしのお手本は。
渡部「ラ・ラ・ランド」、めちゃくちゃハマってるじゃないですか(笑)。
小林格好良かったんですって。どんな着こなしだったかは覚えてないんですけど(笑)。
小林 新(写真右)
スタイリスト。1978年生まれ、神奈川県出身。2006年に独立後、メンズファション誌や広告ビジュアルなどで活躍し、俳優やアーティストなどのスタイリングも数多く手がけている。「ナノ・ユニバース」では現在店頭で配布されているタブロイド版のスタイリングも担当した。現在アシスタントを募集中。詳しくはユナイテッドラウンジまで。
渡部陽介(写真左)
「ナノ・ユニバース」バイヤー。1983年生まれ、北海道出身。10代からコレクションブランドや古着など、幅広いファッションに触れて育ち、服飾の専門学校を卒業後は某モード系セレクトショップのスタッフを経験。その後「ナノ・ユニバース」に入社し、2012年からはバイヤーを務めている。ファッションの情報量とトレンドへの嗅覚に定評あり。