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ディレクター吉川基希と共に編む、BEAMSの解体新書。第5章「DAIRIKUの岡本大陸と語る、過去と現在と未来のファッション」
Strategy Of BEAMS

ディレクター吉川基希と共に編む、BEAMSの解体新書。第5章「DAIRIKUの岡本大陸と語る、過去と現在と未来のファッション」

いま再び盛り上がりを見せる2000年代のファッション。今季の「ビームス(BEAMS)」も「Y2K」をテーマに、90年代を経て生まれた2000年代のカルチャーに焦点を当てたものづくりがされています。そうして誕生したウェアの数々には、どんなビハインドストーリーがあるのか? メンズカジュアル部門のディレクター、吉川基希さんとともに、今季のオリジナルアイテムの攻略法を探ります。
今回はドメスティックブランドのなかでも特に勢いを感じる〈DAIRIKU〉の岡本大陸さんをゲストに迎え、古着や映画をバッグボーンにした物語のあるものづくりを共通項に、デザイナーとしての視点から「ビームス」のアイテムについて語ってもらいました。

  • Photo_Taisei Iwasaki
  • Text_Yuichiro Tsuji
  • Video Director_UDAI
  • Edit_Yuri Sudo

テーマを色濃く反映させたアイテムと、古着感のあるもののバランスがいい。

ーでは今シーズンの「ビームス」のアイテムを掘り下げていきたいんですが、今季は「Y2K」がテーマなんですよね。

吉川:そうですね。アメカジというぼくらの軸はブラさずに、2000年代初頭に見られたものが今季のものづくりのテーマになっています。当時は20世紀から21世紀に変わる節目でもあって、世紀末思想みたいなものがありましたよね。映画でいうと『マトリックス』もあの時代に公開されて、iMacなんかも生まれて、近未来的な世界観がファッションにも影響を与えていました。たとえばメタリックなカラーリングとか、テクニカルな素材使いやディテールにそうした影響を強く感じます。そのあたりのデザインがいままた新鮮だなと。

ーウィメンズのファッションシーンでは、数年前から「Y2K」というキーワードが出てきたりしてましたよね。

吉川:そうですね。ぼくもそうした流れを横目でチラチラと眺めてはいたんですが、メンズでそれをやるのはまだタイミング的に早いかなと思っていました。それで数年温めていたんです。

ー大陸さんは94年生まれですが、「Y2K」というカルチャーに対して新鮮さを感じますか?

大陸:そうですね。当時はまだ小さかったし、奈良出身だったということもあって最先端の情報もそこまで入ってなかったと思うんです。だけど、ゲームとかがハイテクになっていった時代なのかな? たとえばゲームボーイでスケルトンのモデルが出たり、カラー液晶になったりして、ファッションというよりも、そうしたところで時代のムードみたいなものをうっすらと感じてたのかもしれません。ハイテクとアナログのあいだを行き交っているような感じですかね。

吉川:いまでこそパソコンは一家に一台っていうのが当たり前になっていますけど、当時は家にパソコンがあるなんて考えられなかった。でも、iMacの登場でインテリアとしてパソコンを買うひとたちがいて、それがあればモテるみたいな(笑)

ー具体的にどんな商品がラインナップしていますか?

吉川:わかりやすいものだと、このナイロンジャケットがそうですね。これはU.S. AIR FORCEのゴアテックスパーカがデザインソースなんですけど、宇宙服を連想させるようなカラーリングにしているんです。そして身幅を広げたり、アームホールを広げたりしてシルエットをいまっぽくいじっているのもポイントですね。

さらに2000年代になると、トレイルランニング用のベストも象徴的なアイテムですね。競技用だとどうしてもカラダにフィットするように作られるから、タイトなものが多いんです。だけどそれをかなり大ぶりにアレンジして、さらに現代的な生地をつかうことで、いまのファッションに通用するように仕上げてます。

吉川:あとはこのパンツも今季のテーマが反映されたアイテムで、テクニカルなアウトドアブランドのアイテムをサンプリングしているんですけど、立体的なパターンやポケットワークにそうしたテッキーなディテールを取り入れています。素材はポリエステルなんですけど、表情や質感はウールのように落ち感があるものを使っていて、当時にはなかった技術をここに取り入れてますね。

ーあとは裾や袖口がカットオフされたジャケット、ヴィンテージライクな加工がされたスエット、さらにはデニムパンツなど、ストレートにアメカジを表現したアイテムもラインナップしてますね。

吉川:セレクトショップのオリジナルアイテムで、ここまで古着テイストなものってうちだけだと思うんですよ。たとえばこのスエットのフェード感とか、グラフィックのフォントなんかをつくるのもうちのデザインチームは得意なんです。古着で探せば良いじゃんって思う人も中にはいるかもしれないんですけど、古着だとどうしても1点ものになっちゃうので、しっかりとサイズが揃っているという点ではお客さんも買いやすいし意味のあることだと思ってつくってますね。

大陸:ぼくも古着が好きでよく見にいくんですけど、自分らしいサイズ感のものってなかなかないんですよね。デザインがいい古着は多いんですけど、実際に着るとなると難しくて。今回「ビームス」のオリジナルアイテムをはじめてじっくりと見させてもらったんですけど、シーズンテーマを色濃く反映させたテック感のあるものに、こういう古着感のあるものがバランスよく混ざっているのがすごくいいなと思いましたね。

ー今回のアイテムを使って、大陸さんにはスタイリングを組んでもらいました。

吉川:なんとなく大陸くんに合いそうなアイテムをぼくのほうでピックアップして、それを軸にスタイリングしてもらいました。すごく自然体な着こなしで、やっぱり予想がズバリ当たりましたね。

ーまずはジャケットですね。どんなことを考えながらスタイリングを組んだんですか?

大陸:普段なかなかジャケットを着る機会がなくて、どうスタイリングをしようか悩んだんですけど、よく見ると裾と袖口がカットオフされていて裏地が見える仕様になっていたので、あえてスエットパンツでちょっとくだけた着こなしにしました。こういう羽織りは着ないので新鮮でしたね。だけど、カットオフのデザインがあることによってぼくでも着やすかった。あとは軽くて着心地もよかったですね。

ーデニムに関してはいかがですか?

大陸:普段は自分のブランドのデニムばかり履いているので、久しぶりにそうじゃないアイテムを履いて、こっちも新鮮な気持ちになりました。履いてみるとやっぱり全然ちがくて、新しい発見がありましたね。*『ハンター』っていう映画でスティーブ・マックイーンがデニムにMA-1を合わせているんですけど、そこからインスピレーションを得たスタイリングです。シューズは生成りの靴を合わせてたんですけど、たまたまぼくも似た色のスニーカーを持ってたので、それを合わせてみましたね。デザインが現代的なので、時代がミックスされたスタイリングになりました。

吉川:そこも映画からのインスピレーションだったんですね。さすがです。シューズも近未来感があって、なんとなく「Y2K」を彷彿とさせますね。

大陸:もともとこういうスニーカーが好きだったんですよ。だからいつも違和感なく履いてます。むしろ、ソールが薄いスニーカーのほうが合わせるのが難しく感じてしまって…(苦笑)。やっぱりちょっとボリューム感があるもののほうが履きやすいというか、安心感がありますね。

*映画『ハンター』=1980年公開のバズ・キューリック監督作。過去30年間に1万人もの犯罪者を牢に送り込んだという実在の賞金稼ぎ、ラルフ・ソーソンの実話をもとにしたアクション映画。スティーヴ・マックィーンが主演を務め、惜しくも彼の遺作となった。

ースタイリングで使ったアイテム以外で気になる服はありましたか?

大陸:このミリタリーのジャケットはすごくいいなと思いました。ぼくはマウンテンコートが好きで〈DAIRIKU〉でもデザインしたりしているんですけど、それに近い雰囲気を感じます。ファスナーについているコードのディテールが全体の印象を和らげているというか、ファッショナブルにしていますよね。これがないと堅いイメージになるというか。あとは配色もすごくいいですね。ミリタリーのアイテムがベースなんだけど、一見するとアウトドアっぽくて。

吉川:素材もかなり軽い素材を使ってます。

ー〈DAIRIKU〉にはテクニカルなイメージがそこまで強くないので、このアイテムを選ばれたのがなんだか意外です。

大陸:ナイロンはよく使うんですけどね。こういうハイテクな服もつくるんですけど、あまり目立ってないのかもしれません。どちらかというとヴィンテージの印象が強いと思うので。だけど、テーマによっては90年代や2000年代の服からインスピレーションを受けて服をデザインすることもあるんです。

INFORMATION

BEAMS 23SS COLLECTION

公式サイト
Instagram:@beams_official, @beams_mens_casual

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