左から、〈ファンダメンタル〉津吉さん、〈スロウガン〉小林さん、〈ファクトタム〉有働さん、〈セヴシグ〉安部さん、〈セヴシグ〉長野さん、「ザ グレートバーガー」車田さん、〈ジャムホームメイド〉増井さん。
自分たちが尊敬する人たちと一緒に仕事がしたかった。
今回の企画をやろうと思ったきっかけを教えてください。
安部 今年の秋でブランドがスタートして5周年を迎えるので、単純にお祭りにしたかったんです。日頃からお世話になっている方々に〈セブシグ〉のシグネチャーともいえるライダースジャケットをつくってもらったら面白そうだし、新しいなにかが生まれるんじゃないかという気がして。それで企画したんです。
それぞれの方に“ライダースジャケット”というお題を投げたと。
安部 そうですね、それぞれの方に“自分が着たいライダースジャケット”というテーマでデザインしてらもいました。「こういう素材を使いたい」とか、「こんなディテールを入れたい」という細かな要望を伺いながらやり取りを重ねて、ぼくたちが持っている生産背景を使ってアイテムをつくったんです。
本日お集りいただいた5名の方々はどのように選ばれたんですか?
安部 ぼくと長野が尊敬している方々にお声がけしました。例えば〈スロウガン〉の小林さんは、ぼくが若い頃から小林さんのつくる服を買っていて、ぼく自身が小林さんのファンなんです。
小林 お店に来てくれて、それからよく話すようになったんだよね。いまでは一緒にご飯を食べにいったりしています。
長野 〈ファクトタム〉の有働さんは飲み会で知り合ったんですよ。7、8年前ですね。
長野 まだぼくが前職で働いていたときです。有働さんはぼくの学校の先輩なんですよ。それ以来、有働さんともご飯に行かせていただいたりして、いろんな相談に乗ってもらっています。
〈ジャムホームメイド〉の増井さんはどんな関係なんですか?
安部 むかしアニメを絡めたコラボ企画を一緒にやらせてもらったことがあるんですよ。増井さんとうちの長野はアニメが好きで(笑)。
増井 近い場所にアニメ好きがいるっていうのは、誰かに聞いたことがありましたね(笑)。
安部 アニメが関わっていないコラボアイテムも何度か一緒につくらせてもらったこともあるんです。増井さんのつくるものは本当にコアで、今回デザインしてもらったライダースもぼくらの想像をはるかに越えるものができあがりました。
安部 津吉くんは友達です。知り合ったのは6年くらい前かな?
長野 普段からよく連絡を取り合っていて、「飯食いに行こう」って話をする仲ですね。
安部 津吉くんに声をかけてもらってピッティ・ウオモに出させてもらったこともあるんです。
最後に「ザ グレートバーガー」の車田さんはいかがでしょうか? このなかで唯一の異業種で、飲食店とのコラボレートですよね。
安部 車田くんの会社で〈フレデリック〉というブランドを運営していて、その繋がりで知人に紹介してもらったのが知り合ったきっかけです。同年代だし、すごく気が合うんです。ファッションのコラボレートといえば、服屋同士でやることのが当たり前ですけど、5人のうちのひとりに異業種がいてもおもしろいんじゃないかと思って声をかけさせてもらいました。
車田 安部くんと長野くんは、すごくいいモノづくりをするんですよ。ぼくの会社ではレディースのアパレルブランドをやっているんですけど、そこでメンズラインをスタートしたときに一度デニムパンツをつくってもらったことがあるんです。その仕上がりがものすごくよくて、それ以降何度か一緒にアイテムをつくったりしていました。
増井 ふたりがこだわってモノづくりをしているというのはひと目でわかりますよね。ひとつひとつのアイテムに愛情を感じるんです。素材使いや、加工の方法、細かなパーツに至るまで、すべてに抜かりがない。間違いのないブランドですよ、〈セヴシグ〉は。
「 今回は“蘇生”というテーマでデザインしました。30年前に自分が着ていたものを再現したんです。身頃の内側に9個の懐炉ポケットがあり、これを着れば真冬でもバイクに乗って走れる本格仕様にしています。いまでは着れなくなってしまったアイテムが再び甦って、当時の思い出がいろいろと心のなかに湧いてきました。それほど完成度の高いアイテムになったと思います」(増井) ¥140,000+TAX
着るほどになじんでいくライダースジャケットの魅力。
ライダースジャケットが〈セヴシグ〉を象徴するアイテムということなんですが、ブランドをスタートしたときに、どうしてこのアイテムをつくろうと思ったんですか?
安部 世の中にはたくさんのブランドがあって、それぞれに特徴がありますよね。〈セブシグ〉を立ち上げるときに、うちはなにを強味にやっていこう? と考えたんです。
安部 で、たまたまデザイナーの長野がレザーとデニムを扱うのが得意だった。じゃあレザーをメインに打ち出していこうということになったんです。日本のブランドでレザーが得意なブランドってあまりないし、イメージづくりもしやすいですから。それでまずはレザーのライダースジャケットをつくって、あとはTシャツとかもデザインしましたね。いまはレザー以外の素材も使って、フルアイテムをつくっています。
長野さんはレザーという素材の魅力をどう捉えていますか?
長野 生産面の話になるんですが、いいジャケットをつくるにはたくさんの人が関わらないとできないんです。
革のなめしから考えると、生産の工程は多そうですね。
長野 たくさんの人の手が加わるぶん、レザーアイテムはすごく人間味のあるプロダクトだと思います。あと、レザーはデニムと同じように経年変化するんです。着るほどになじんで、風合いも変わっていく。
津吉 〈セヴシグ〉のレザージャケットはすごくいいですよ。着てみるとレザーがものすごく柔らかくて動きやすい。革といえば、それまで固いイメージがあったから、意外と着やすいんだなって思ったのが率直な感想ですね。だからおのずと登場機会も増えてます。
津吉 でしょう? 実はそれまでレザーのジャケットに袖を通すことはなかったんです。その道を通ってこなかったというか…。でも、展示会で試しに着てみたら意外としっくりきて。「あ、俺でも着れるんだ」って思ったんですよ(笑)。
増井 第二の皮膚みたいな感じですよね、レザーは。ぼくはバイクに乗るんですが、やっぱりライダースをよく着るんです。革が厚ければ体を守ってくれるし、防寒性もあるから、着たくなるというか。
車田 経年変化するというのも納得ですね。ぼくはレザーのジャケットもライダースも着たことがないんですけど(笑)、革のプロダクトは好きなんです。例えばいま座っているソファーなんかも、時間の経過と共にどんどん味わい深くなっていく。一生モノじゃないですか、革製品って。もちろんケアは必要だと思いますが、ケアすればするほど愛着も湧いてきますし。
ファッション的側面から見て、レザーのライダースジャケットに対するイメージはありますか?
有働 不良を象徴するアイテムではありますよね。「エースカフェ」に集まってそうなロッカーズたちの印象が強い。ぼくの場合、10代の頃に渋カジブームがあったんですよ。80年代の終わりくらいかな? そこではじめてライダースジャケットに触れました。人気があったのは〈ヴァンソン〉や〈ショット〉、〈ルイスレザーズ〉といった、いわゆるライダースの代名詞的と言われるようなブランド。新品でそれらのアイテムを買って育てていくんですけど、早くなじませるためにジャケットを着ながら寝るなんていうツワモノもいましたね(笑)。
小林 日本で渋カジが流行っている頃、ぼくはパリに住んでいたんですけど、街を歩く人はみんなライダースジャケットを着ていました。恐らくマドンナの影響だと思うんですけど、女の子たちは革が柔らかくて丈が短いライダースを着ていて、とにかくパリ中が真っ黒だったんです(笑)。でも、ぼくはそんな柔らかいやつなんて着たくないから、〈ショット〉や〈ハーレーダビッドソン〉のアイテムが置いてあるヴィンテージショップへ行って、それらのアイテムをずっと眺めていました。なにしろ何十万円もするものだし、当時は一日500円くらいの生活費で生きていたから手が届かなかったんです。
どうにかして手に入れようとは思わなかったんですか?
小林 もちろん思ってました。ずっと手に入れる方法を考えていて、唯一現実的だったのが、アートコンテストに応募して、その賞金で買うというアイデア。絵だけは自信があったので、パリから日本のコンテンストに応募して見事賞金を勝ち取ったんです。それで買ったのが〈ショット〉のワンスター。いまでも思い入れがありますね。
「 レザーとは異なる素材のライダースにしました。起毛させたデニム素材を使用していて、ウールのような表情に注目して欲しいです。もちろん、色落ちや日々着ていくなかでつくシワなど、経年変化の魅力を楽しめるものに仕上がっています。少々手荒に扱っても、それが味わいに繋がっていくので、たくさん着て、自分だけのものにしていただきたいです」(津吉) ¥55,000+TAX