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渋川進の夜でも部屋でもシャングラス。vol.02 長谷川くん、セパバスどうですか?(中編)
Midnight Sunglasses at The Room

渋川進の夜でも部屋でもシャングラス。
vol.02 長谷川くん、セパバスどうですか?(中編)

「カツラを被ったり、サングラスをするのが面倒臭くなっちゃった」。開口一番、そんなことを口にして、自身が〈セパバス(SEPARATE BATH&TOILET)〉のディレクターであることを暴露した現代美術作家の加賀美健さん。前回に引き続き、今回もスタイリストの長谷川昭雄さんをゲストに迎えて、二人の対談をお届け。ファッションの話題を切り口に、クリエイションのスタイルについて、お互いのアイデアを共有します。

深さをシェアできるほうが、いいものができやすくなる。

加賀美: 長谷川くんに聞きたいことがあるんだけど、スタイリストというか撮影の仕事って関わる人が多いじゃん? 長谷川くんの場合、いつも同じチーム編成でやってるでしょ? それにすごく共感するんだよね。はじめましての人と一緒にファッション・シューティングして、かっこいいものをつくろうと思っても難しいよね。

長谷川: そうだね。

加賀美: だから俺も題府くんに撮ってもらうようにしてて。

長谷川: すごくよくわかるよ。遠い昔は、編集者と『コマーシャル・フォト』とか見ながら「このフォトグラファーいいね」ってなって、いざその人に会ってみたらフィーリングが全然合わなかったりして。気が合わないと撮影なんて無理だよね。なんかこいつムカつくとか思ってたら、いい物なんてできないし。

ーなるほど。

長谷川: いい結果にするには、一緒にやる人に対して「いいな」って思わないと難しいよね。3年くらい一緒にやり続けたら理解し合えるだろうけど、1週間や2週間くらいの関係では無理だと思う。ちょっとした微妙な感覚を表現することがファッションには大事なわけだから。だから写真の良し悪しもあるけど、そもそも気が合う人じゃないとね。気が合わないやつとは一生、話が噛み合わないと思うし。

ー時間を重ねることによって、共通言語が生まれるわけですね。

長谷川: 何年も一緒にやっていれば共有できる感覚がどんどん蓄積していくし、過去にボツになったロケーションでも、もう一回活かすことができたりする。そういう深さをシェアできるほうが、いいものができやすくなるというか。それはファッションに限らず、料理とかどの世界も同じだと思う。

ー同じチームで長年やり続けて、マンネリ化することはないですか?

長谷川: もちろんあるんだけど、それは自分が頑張るしかないよね。マンネリと捉えるか、継続と捉えるのかの違いというか。表現って毎回新しいことが生まれるわけでもないから。ファッションは常に新しいと思われがちけど、そうじゃないと思う。自分のクローゼットを開いて、5年前に買った服を今でも着ることだってあるよね。3年とか5年とか同じスタイルを続けて、あるときにすごく飽きてしまって、劇的に変化してしまうことがあってもいいとは思うけど。新しいことがすべてっていう考え方ではやってないかな。

加賀美: ファッションは独特だよね。もうちょっとスローでもいいよね。

長谷川: 俺の場合は特殊なのかもだけど、もうちょっと日常的なもののほうが好きなんだよね。海外の人たちから見たら、ファッションにもならないようなことなのかもしれないけど。アメリカのワークウェア屋さんで〈ディッキーズ(Dickies)〉のデカいサイズを買うのが楽しい、みたいなことが自分にとってはファッションだったりするんだよね。海外ではそんなのは生活でしかないんだけど。そういう服にたまに〈コムデギャルソン(COMME des GARCONS)〉が混ざってたら面白いかな、とか。

ー加賀美さんも道端に落ちてるものを拾って作品として転換していますよね。そういう部分で共通点がありそうですね。

長谷川: うん。すごいわかる。共感できるもん。日常のなかの違和感というか。

加賀美: いつも同じチームで撮影をしていて、打ち合わせしてから撮影するの? それとも阿吽の呼吸でいきなり撮影する感じ?

長谷川: 打ち合わせはゼロだね。

加賀美: そうなんだ! 俺も題府くんとそうなんだよね。聞いてこないし、俺もなにも言わない。だからモデルが困惑しちゃってる(笑)。「なにすればいいの?」みたいな。

長谷川: やっぱり事前にアイデアを固めちゃうと、それをやらなきゃっていう頭になっちゃうというか。その場で探りながらてやっていくほうが、良し悪しをジャッジしやすいよね。なにか違うってなったら、その場で詰めていけばいいから。そのほうがやりやすい。

加賀美: 俺もまったく考えない。そっちのほうが面白いものができるよね。

ー〈セパバス〉の打ち合わせも即興でやられているんですよね。

加賀美: そうだね。毎週定例の会議があって、その場で浮かんだアイデアを形にしてる。

長谷川: ファッションはそのときの気分が大事だからね。みんな服を買うときも、そのときの気分で決めるでしょ。自分がプロダクトをつくるときもそういう気分でやっていかないと、受け取る人たちも楽しくないと思う。仕事っぽくなっていっちゃうとよくないというか。

加賀美: それでちゃんと売れるからすごいよね。〈セパバス〉はまだ時間かかりそうだから(笑)。

ーブランドを始めて売れるまでには、3年かかるってよく言われたりしますよね。

加賀美: 3年じゃ結果出ないかも…(笑)。

長谷川: でもこれからカガミくんの名前でやっていくんでしょ? 絶対そっちのほうがいいと思うよ。

加賀美: 渋川進はやってておもしろかったけどね。

長谷川: だけど、PRの仕方が難しくなるよね。

加賀美: ファッションって難しいよね。

長谷川: そうだね。とくに服づくりに関しては素人だからさ、イメージを共有するのがすごく大変。

加賀美: 本当にそうなんだよ。俺は〈セパバス〉のときに、まずイメージを共有するために、いろんな画像をみんなに見せるんだよね。だけどそれを伝えるのが難しい。感覚的なものだから、しょうがないといえばしょうがないんだけど。やっぱり長谷川くんが言ってるように、時間をかけて理解し合うのがいいのかもね。

ということで、今回のお話はここまで。トークは最終回へとつづきます。そして〈セパバス〉は2つの店舗でポップアップが決定! 5月3日(水)~9日(火)まで「伊勢丹 新宿店」にて、5月6日(土)~5月26日(金)まで「銀座 蔦屋書店」にて開催されます。加賀美さんがデザインした渾身のファッションアイテムを、実際に手に取って見られるチャンス。この機会にぜひ店頭へ行かれることをおすすめします。

INFORMATION

SEPARATE BATH&TOILET

https://sepabath.com/

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