靴をデザインするのは素直に楽しい。
ー〈ノンネイティブ〉のこれからについても聞きたいんですが、藤井さんは繊細に世の中を見ながら、それをクリエイションに落とし込んできたと思うんです。これからも変わらずにそうした表現をおこなっていくのでしょうか。

藤井:毎シーズン、なにかを変えながら服をつくるのは簡単なことではないんです。なにが変わったのかは自分でも言語化しづらくて。だからこれからも〈ノンネイティブ〉らしさをどう考えて、どう向き合っていくかということになりますね。あとは外側からみた自分たちがどう思われているかも確認していかないといけないですし。20年以上やっててすごいって言われるけど、それでもまだ不安だし。
ー長く続ければ続けるほど、ブランドと藤井さんが表裏一体になってくるような感覚もあるんですか?
藤井:そうなりすぎてもよくないと思ってて。自分はこうなんだけど、一方で世の中はこうだっていうのも見えてないといけないというか。だから「こうゆうのがあったらいいよね」っていうのを知っておかないとまずいし、最新のものを勉強しておかないといけない。クラシックっていう方向に振っちゃいけないってすごく思ってますね。
ーその藤井さんのバランス感が〈ノンネイティブ〉らしさに繋がるのでしょうか。
藤井:どうでもいいことかもしれないけど、iPhoneは新しいのを持っておきたいんですよ。すべての機能を使い切れているかどうかは置いておいて、使い方も含めてデザインされているものだから、それに触れることが大事というか。クルマも最新のものを試したいし。それを自分の中で知っておかないといけないというか。
ーそれに靴も含まれるわけですね。
藤井:ファッションプロダクトの中で集大成だと思うし、クルマに近いですよね。いろんな要素が含まれているから。ファッションっていい意味で進化しないんですよ。軽ければいいわけでもないですから。それは靴も同じで、『バックトゥ・ザ・フューチャー』みたいな靴はいまならつくれるんだろうけど、充電しなきゃいけなかったりすると思うんです。そうしたら、誰も履かないでしょう。やっぱり進化のしようがないものではあると思うけど、それでも人が生活する上で大事なものだと思うし。

ー実際に今回のように靴をデザインするのは楽しいですか?
藤井:素直に楽しいですね。やっぱり好きだから。靴工場に何回も行っているけど、つくるのってすごく大変なんですよ。木型もたくさんあるし、設備もすごくお金がかかるし、職人さんもひとりで縫えないんですよ。パーツによって変わってくるから。それを考えると、当たり前だけどやっぱり力が入りますよね。「ユーロハイカー」もそうだけど、パーツが多いとそのぶん考えることも増えるんですよ。だからすごく楽しかったですよ。