煉瓦造りの外観。太陽が降り注ぐ、全面ガラス張りの高い天井。糸を引き揃える職人の作業風景。目まぐるしくカットバックされるサンセットパークのワークハウスから一転、モノクロームの映像に切り替わると、そこに映し出されるのはその日の操業を終えたのか、電気を落とした無人の空間にひとり佇むウェインライトだ。
英国人の俺にとって──。そう切り出し、ウェインライトが訥々と語り出したのはものづくりにかける思い。インディゴの種を取り寄せ、バルコニーで栽培するところからはじまった手探りの時代を振り返り、そうして輪郭を鮮明にしていったブランドのアイデンティティ ── ショートフィルムのタイトルにもなったQuality Guaranteed ── に話は及ぶ。それは伝統の技を受け継ぐ職人への賛辞、あるいはショップはもちろん、ショールーム、オフィスに設える家具をすべて手づくりしている事実に端的に表れている。偽りのない本物の追求 ── それこそが〈ラグ & ボーン〉だよとウェインライトはいう。
vol.4まで制作されたそのショートフィルムは、アブラハム・ムーン社のツイード、フェイサ社のトリプル・レイヤード・ジャカード、ショラー社のテクニカル・ファブリックの製造現場に撮影クルーを送り込んだ。いずれもウェインライトが全幅の信頼を置くファクトリーである。
〈ラグ & ボーン〉はお尻に “man” をつければイギリスではくず拾い、の意になる。人を食ったようなネーミングだけれど、世の中が傾いているんだから、大切なものを見逃さないためにはハスに構えざるを得ない。ウェインライトはショートフィルムのなかで「生地はとくに日陰にいる」と嘆いたが、時代に取り残されつつあったその魅力を拾い上げることができたのは長いものに巻かれなかったからだ。そして子どものような澄んだ目でこう憤慨しているのである ── これがガラクタだっていうのかい。とんでもない。あんたの目はどうかしているんじゃないか。