嘘のない、サウス2 ウエスト8の製品開発。

ー20年の間、札幌で〈サウス2 ウエスト8〉を見てきていると思いますが、振り返ってみていかがですか?
三浦:最初の頃は店構えに戸惑うお客さんも多かったと思います。内観が見えづらく、札幌は雪が降るので、ウェアや靴についた雪を落としてもらうために、入り口の廊下はあえて長く設計した作りなのですが、鹿の剥製もずらっと並んでいて、いまだにお客さんには「迫力に緊張するんです」って言われます(笑)。
ーそこからは順調に成長曲線を描いていったんでしょうか?
三浦:順調にと言えるかどうかは分かりませんが、東京や大阪も同じくですが、わざわざ足を運ばないとたどり着けない場所ですし、外観も一見洋服屋とは思えない佇まいですので、腰を据えてじっくりとやってきました。そういう意味では、テンカラというコンセプトを取り入れたことにより、アイデンティティが明確になったし、世界中からお客さんもいらっしゃるようになって、国境を超えてブランドを知ってもらえるようになったと思います。ブランドとしては海外の卸先もかなり増えました。

ーフィッシングウェアやフィッシングギアみたいなものは、いまでこそファッションに浸透していますけど、〈サウス2 ウエスト8〉はその礎を築いて、ひとつのジャンルを確立させたと思うんです。
三浦:そう思ってもらえているのは素直にうれしいです。
ー実際に、何がそこまでユーザーに受けたと思いますか?
三浦:それまで釣りをする人たちの服っていうのは、どうしてもちょっと色が地味だったり、デザインも似たようなものだったりっていうことが多かったと思うんです。しかし私たちはそもそもファッションの世界からの人間なので、そこを覆すことができた。そのことでユーザーの人たちの釣りへ対する見方も変わったのでは無いでしょうか。
とはいえ、もちろん、アイテムを見ていただいて分かるようにフィールドでのパフォーマンスも追求しています。そして、その機能性とファッション性の両立させ方に〈サウス2 ウエスト8〉の個性が表れていると思います。例えば定番の3レイヤー素材で言えば、完全防水を実現しながら、表地はコットンにして経年変化も楽しめるようにしたりして。

RIVER TREK JACKET – COTTON RIPSTOP / 3LAYER ¥80,300
北海道の自然を切り取って作られたカモ柄の3レイヤー。完全防水素材であるのに経年変化を楽しめる。透湿性も高い。「これはもう、いつどこでも釣りをするときに一番信頼できる一着です」(三浦)
ーアウトドアメーカーさながらに、フィールドテストも行っているとうかがいました。
三浦:そうです。やっぱりテンカラ釣りをするときでも機能を発揮しなくてはいけないから、実際に渓流で試してみて、Dカンやポケットの位置、丈の長さなんかは日々アップデートさせています。

TENKARA JACKET – NYLON OXFORD ¥44,000
2015年にテンカラのコンセプトがはじまって以来、リリースし続けているジャケット。ポケットも大きく、釣り用のツールもたくさん収納可能。フィールドテストを何度も繰り返し、年々進化を遂げている。
ーいまのお話にある通り、ファッション性も機能性も、どちらも100%であるところが、街でもフィールドでも支持される理由だと感じます。
三浦:実際にぼくらが街でもフィールドでも使うので、どっちも妥協はできないですよね。

BUSH PARKA – LIGHTWEIGHT MESH ¥40,700
真夏のテンカラ釣りで活躍するのがメッシュ素材。風通しがいいことに加え、防虫加工も施しているため、蚊の多い水辺でも安心。レイヤリングも楽しめる1着。

STRING C.S. PANT – POLY JQ. / SKULL&TARGET ¥25,300
〈サウス2 ウエスト8〉の定番でもあるセンターシームパンツのスカル&ターゲット柄ジャカード。ヴィンテージミリタリーパンツのアーカイブを元にデザインされているのだとか。
ー三浦さんはディレクターの立場として、やっぱりお客さんには〈サウス2 ウエスト8〉を着て、釣りに行って欲しいと思ったりされますか?
三浦:もちろんそれはあります。私たちのブランドや店を通じて、実際にテンカラ釣りをはじめたお客様もたくさんいらっしゃって、純粋にとても嬉しく思っています。フィールドでも街でも楽しんでもらえるのは、まさに私たちのコンセプトがユーザーの方々にも受け入れていただけたということなので、非常に嬉しいことですね。

TENKARA ROD “KONGO” / 3.3m ¥39,600、TENKARA ROD “KONGO” / 3.6m ¥42,900、
TENKARA ROD “KONGO” / 4.5m ¥63,800、
TENKARA ROD “MASURAO” / 4.5m ¥60,280
〈サウス2 ウエスト8〉からリリースされる竿は、基本的には4種類。 3.3m、3.6m、4.5mの「金剛」と、60センチ級の魚にも対応する4.5mの「鱒羅尾(マスラオ)」。
ーいまはウェアだけでなく竿も作っていらっしゃいますよね。
三浦:〈サウス2 ウエスト8〉でテンカラのプロジェクトがはじまる前に、代表の清水が「櫻井釣具店」さんの「金剛」を使っていて、その竿で30cmを超える大きなイワナを釣ったときの釣り味がとても信頼できたということで、コラボレーションさせてもらうことになったんです。この竿に関しても、何度もフィールドテストを繰り返していて、いまも試行錯誤を続けているんですよね。

ー三浦さんが思うテンカラ釣りの魅力も教えていただけますか?
三浦:テンカラ釣りはリールは使わず、竿と毛針とライン(糸)だけで魚と対峙するので、距離感が近いんです。ほかの釣りはリールを使って、遠くにいる魚を狙いますけど、テンカラ釣りはそうじゃない。その近距離で、野生動物と対峙できるっていうのは、テンカラ釣りならではですね。
ー近年は〈シュプリーム〉とのコラボレーションがあったり、いまは世界からも注目されている存在のように感じますが、実感としてはいかがでしょうか?
三浦:たしかに、過去に行った〈リーボック〉や〈オン〉などのように、世界各国のブランドから日々コンタクトをもらっています。コロナ禍も落ち着き、ますます海外とのプロジェクトは加速しそうです。これからもユーザーの皆さんに喜んでもらえるようなコラボレーションが実現するために、ブランドをもっと活性化させていきたいです。
ーいまも、水面下で進んでるものはあると。
三浦:まだ詳しくは話せないのですが、すでにいくつかお話をいただいています。楽しみに待っていていただけたらと思います。

ー北海道を拠点にしているからこそできるものづくりもあるんでしょうね。
三浦:やっぱり、日本のなかでも自然のスケールの大きさは飛び抜けていると思います。世界的に見ても、ここまでアクセスがしやすい豊かな自然を持つ場所はまずありません。特に釣りという分野で言えば、北海道はある一定の禁漁河川や禁漁期間/魚種のルールをちゃんと守りさえすれば、無料で自由に釣りができる河川が数多くあります。身近で、いつでも遊べる釣り場所がこんなにたくさんあるっていうのは、ものづくりの面でも絶対的なアドバンテージになっています。
ーものづくりのインスピレーションは、やはりテンカラ釣りに?
三浦:もちろんテンカラ釣りもそうですが、北海道の自然のなかに様々なインスピレーションを見つけられるので、いろんな材料を私たちなりにミックスさせながら、これからもクリエーションの幅を広げていきたいです。
ー最後に、今後の展望も教えていただけたらと思います。
三浦:まずはしっかり、リアルな経験値をものづくりに落としこむということですね。見せかけではないスペックをしっかり内包していて、それでありながらファッションで。とにかく本気のウェアを、自然と触れ合いながら今後も作っていきたいと思います。