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ありそうでない、天邪鬼なブランド。アンライクリーのルールを超えたものづくり。
Hello、My Name Is Unlikely.

ありそうでない、天邪鬼なブランド。アンライクリーのルールを超えたものづくり。

満を持して、あのひとがブランドを始動させます。元「ビームス」のクリエイティブ ディレクターである中田慎介さんです。ファッションのことだけを考えてきた22年間のビームス時代、そこで培ってきたノウハウや知見を活かして生まれたのは、とってもチャーミングで天邪鬼な、中田さんらしい服でした。〈アンライクリー(Unlikely)〉 と名付けられたそのブランドは、一見するとベーシックでありながら、よく見るとさまざまなユーモアが隠されています。そのユーモアを紐解くために、中田さんのもとを訪ねました。

アンライクリーらしい天邪鬼なポイント。

ーそこで「ありそうにない」「〜しそうにない」という意味に戻ってくるわけですね。

中田:ブランドをスタートするに当たって、1着のブレザーが起点になっています。古着で見つけた〈ブルックスブラザーズ〉の「346」というラインのものです。もとの持ち主が個人オーダーされたものらしく、タグを見たらこれも1977年につくられていたんです。

ぼくは「ビームス プラス」でアメリカントラッドのいろはを教わって、「40年代~60年代にそのすべてが詰まっている」と言われてきました。だけど、70年代につくられたブレザーの幅が広いラペルを見て、「これだ!」と思ったんですよ。70年代は誇張の時代で、魅せるデザインが浸透していた。その時代をベースにしながら、40年代、50年代、60年代のディテールを混ぜちゃおうと思ったんです(笑)。

ーかなり思い切った発想ですよね。

中田:ネイビーのブレザーは「○○でなければならない」の象徴のような服なんですけど、全部の年代を混ぜちゃえば、何を着ても、何を合わせてもOKなんじゃないかと(笑)。

Unlikely Assembled Blazer ¥99,000

ーそれでつくったのがこちらのブレザーですね。

中田:ラペルは70年代、フィットは60年代のボックスシルエット、ちょっと低めのポケット位置や、しっかりした肩のつくりは50年代のディテールを採用しています。これならどんな服を合わせようとも「ここは60年代なんで」とか言いながら、ツッコミが入ったときにうまく逃げられるかなと(笑)。

中田: だけど、それだけじゃつまらないので、裏地はナイロンのリップストップナイロンにして、マウンテンパーカーのように気軽に着られて、袖入れもしやすいものにしたんです。でも、きちんとテーラーの工場でつくっていて、ドレスのクオリティをキープしているところにおもしろさがあるかなと。こうした解釈をブランド全体に落とし込んでいますね。

ー他にはどんなアイテムがありますか?

Unlikely Assembled Sports Coat Wool Tweed ¥121,000

中田:自分はウディ・アレンが好きなので、『アニー・ホール』で着ていたツイードジャケットをつくりたいなと思いました。当時はおそらくハリスツイードの生地を使っていたのですが、そのままだと重くて現代的ではない。だから、ハリスツイードと同じくらい歴史が深い「マーリン&エヴァンス」というイギリスの機屋さんのツイードを使ってつくったジャケットがこちらです。

中田:じつはこれ、メリノウールを使用しているんですよ。だから柔らかくて軽いし、肌触りもいい。こちらもブレザーと同様に裏地はアウトドア仕様になっています。

あと、『アニー・ホール』の話をするとみんなウディ・アレンが着ていたジャケットを思い浮かべると思うんですが、これはダイアン・キートンが着ていたジャケットをイメージしていますね。そこも〈アンライクリー〉らしい天邪鬼なポイントです(笑)。

Unlikely B.D M-51 Field Jacket ¥107,800、Unlikely M-65 Hood Anything ¥24,200

中田:それと、ウディ・アレンといえばM-51のジャケットも象徴的です。これはM-51をアメリカントラディショナル的解釈を加えてつくったものですね。古着のアイテムを見ていたら、襟にボタンホールが空いていて。アメトラミックスということで、ボタンダウンにしたらおもしろいんじゃないかということで、実際にボタンをつけました。

中田:さらに裏地はテーラーの仕様にしていて、スーツのように着られるミリタリージャケットになっています。

中田:そして、このアイテムには付属でM-65のフードもつきます。面白半分で古着のパーツを組み合わせてみたら、意外としっくりきて。本来はちがう組み合わせなんですけど、首回りがボリューミーになって可愛かったので、新しいバランスで着られるように提案的なアイテムでもあるんです。

ーこちらのチノパンもウディ・アレンからですか?

Unlikely Sawtooth Flap 2P Trousers ¥47,300

中田:そうですね。至るところで穿いているので、これもつくらないわけにはいかなかったアイテムです。インタックで、なんてことないチノパンなんですけど、よく見るとコインポケットのフラップがウエスタンシャツ風のデザインになっているのがポイントですね。

ーシャツも充実してますよね。

Unlikely Button Down Shirts ¥44,000、Unlikely Tie Oxford ¥11,000

中田:こちらは90年代のアメリカの某ブランドのボタンダウンシャツをベースに、いろんな年代を混ぜ合わせてデザインしたものです。自分の中でネクタイに再フォーカスしたくて、あえてシャツと共地でつくって、首元に遊びを入れた提案をしたいなと思ってます。生地はアルティメットピマという超長綿を使用して地厚につくった贅沢なものです。

中田:ポケットは極端に低く、中央寄りにしていますね。これは昔のネルシャツにあったディテールなんです。iPhoneと同じサイズにして、使いやすくしています。ただバランスを考えただけじゃなくて、しっかりと使いやすいことにも注目してデザインしているんです。こういうシャツに、こういうポケットがあったらとか、あのシャツの機能をこのシャツで使えたらいいのになぁっていう発想が元になっていますね。

Unlikely Elbow Patch Flannel Work Shirts ¥48,400

中田:ネルシャツは一見するとヘビーデューティなんですが、エジプトのギザコットンで織った生地を採用していて、柔らかくて上品な表情に仕上げています。縫製もドレスシャツの工場でしてもらって、ドレス仕立てのネルシャツなんです。

ー他に中田さんイチオシのアイテムはありますか?

Unlikely Simple Down Vest ¥104,500

中田:このダウンベストですね。70年代のヴィンテージアイテムをベースに、入れられるだけダウンを詰め込んでパンパンにしました。着ると、雪だるまみたいなシルエットになって可愛いんですよ。素材はEPICという米軍で採用されているもので、糸から撥水加工を施しているので、洗っても撥水性が落ちないんですよ。つまり、ミリタリーとアウトドアのミックスですね。

中田:それに加えて、このアイテムで表現したいと思ったのはレイヤードなんです。一般的には、ダウンベストをジャケットの上に着たりするのが主流ですが、これはジャケットの中にも着られるようにしていて、新しいアプローチを提案したくてつくりましたね。

INFORMATION

Unlikely

Instagram:@unlikely_drygoods

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