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ありそうでない、天邪鬼なブランド。アンライクリーのルールを超えたものづくり。
Hello、My Name Is Unlikely.

ありそうでない、天邪鬼なブランド。アンライクリーのルールを超えたものづくり。

満を持して、あのひとがブランドを始動させます。元「ビームス」のクリエイティブ ディレクターである中田慎介さんです。ファッションのことだけを考えてきた22年間のビームス時代、そこで培ってきたノウハウや知見を活かして生まれたのは、とってもチャーミングで天邪鬼な、中田さんらしい服でした。〈アンライクリー(Unlikely)〉 と名付けられたそのブランドは、一見するとベーシックでありながら、よく見るとさまざまなユーモアが隠されています。そのユーモアを紐解くために、中田さんのもとを訪ねました。

レイヤードしたときにひとつのスタイルが浮き出てくる。

ー一つひとつのアイテムは、一見すると定番的なものばかりですが、よく見ると中田さんの天邪鬼的なポイントがいくつも隠されていますね。

中田:〈アンライクリー〉には3つのアイデンティティがあるんです。ひとつは“ミックス”。アメリカントラディショナル、クラシック、ワーク、ミリタリー、スポーツ、アウトドアなどなど、さまざまなカテゴリーを混ぜ合わせて新しいものをつくること。

もうひとつは“ディテール”で、いろんなディテールを解体し、再編集してデザインしているんです。自分は引き算が苦手なので、とことん足し算の美学。たとえばシャツにエルボーパッチをつけたりとか、チノパンのコインポケットはウエスタンシャツ風のフラップになっていたりとか。そうゆう可愛らしいディテールを一緒に入れているのが特徴になっています。

そして最後が“レイヤード”です。『ヘビーデューティーの本』にもあるように、ぼくは重ね着の美学に影響を受けたんですよ。それを表立って軸にしているブランドも珍しいのかなと。それはルックでも表現していて、最初は普通なんだけど、最終的にはすごいボリュームになっちゃっているんです。

Unlikely 2023AW Collection

ーはじめて〈アンライクリー〉の服を見たひとは、普通だけど普通じゃないということを感じ取ると思うんです。そこに含まれるいい意味での違和感は、その3つのアイデンティによって生まれるわけですね。

中田:自分はシンプルで普通なものが好きなんです。重ね着が好きだから、アイテム同士がケンカしないようにベーシックなものを選ぶ傾向があるんです。ただ一方では、機能美とかディテールも大好きなんですよ。ハンティングジャケットのポケットがどういう成り立ちでついているのか、そういう背景に心惹かれる自分もいて。それってすごくわがままだなって自分でも思うんですけど、それを同時に味わいたいという発想が〈アンライクリー〉のデザインに繋がっていますね。

ーアイテム単品は編集的な考え方でつくられていると思うんですが、それらがコーディネートされたルックを見ると、緻密にデザインされていることがわかります。

中田:それは狙っていますね。レイヤードしたときにひとつのスタイルが浮き出てくるように、着丈の長さとかを全部計算してて。だからコーディネートすることによって、アイテムの良さが相乗効果で引き立つようになっているんです。ディーラーの方々にも、単品ではなくて、面で見せて欲しいとお伝えをしていて、ルックで構築した世界観がしっかりと伝わるようにお願いしているんです。

ーとはいえ、お客さんのワードローブの服に合うことも念頭に置かれているんですよね?

中田:それもしっかり考えています。サイズ感はそこまで大きくなくて、どれもレギュラーフィットになっているので、着にくい、合わせにくいっていうことがないようにつくってます。

ー最近は編集的なアプローチで足し引きをしながら服づくりをするブランドも増えてきたように思います。そうした中で〈アンライクリー〉の強みはどんなところにありますか?

中田:先ほど話したように、アメリカの服って「○○でなければならない」っていうルールがあって、それを崩しているところにおもしろさがあると思っています。そういうのって、線を越えるためのテクニックが必要なんです。

たとえば、過去のアーカイブにある「A」という服を、現代の技術でハイクオリティに仕上げて、「A+(エープラス)」として蘇らせる手法があります。〈アンライクリー〉の場合はそうではなくて、「A」、「B」、「C」という服があったときに、それぞれを解体して、各々のパーツを混ぜ合わせて「A’(エーダッシュ)」をつくっているイメージなんです。そうゆうやり方で服をつくっているブランドはすくないと思うんですよ。

ーそうした手法は、服の基本を知っているからこそできることですよね。

中田:自分も「ビームス プラス」のときに先輩方から徹底的に服の知識を叩き込んでもらったので。そういうアメリカのトラディショナルな部分では、誰にも負けないし、負けたくないんですよ。そういう思いでやってますね。

ーただ、そうした思いをチャーミングに反映させているところにも〈アンライクリー〉のおもしろさがあると思うんです。

中田:自分は外見的なコンプレックスがあるから、可愛さとかポップさを加えることで、スタイリングがまとまるんです。そこもアイデンティティのひとつかもしれません。服も黒とかクールな色はあまり着ないで、カラフルな色の組み合わせにしたりとか。そうゆうところも〈アンライクリー〉に反映させてますね。

ーそうしたポップさはコミュニケーションを生み出しますよね。

中田:ぼくがアウトドアウェアが好きなのは、自然の中で違和感のある色を使っているからなんですよ。だから自然の中でウェアが活きる。そこにファッションとして新鮮に訴えるものがあると思うんです。〈アンライクリー〉でも同じように、ありそうでない色をつくっています。たとえばいま着ているベージュのボタンダウンシャツとか。通常、ベージュはあまり使われないので。

INFORMATION

Unlikely

Instagram:@unlikely_drygoods

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