わずか数ヶ月間のみ生産された幻の1942年モデルを初復刻。

—その後、ヴィンテージピースを納入するに止まらずベルベルジン20周年の際にTバック仕様のS506XXを復刻しましたが、今回は満を辞して〈リーバイス®︎〉の本丸である501®︎XXの復刻。それもヴィンテージの歴史における新たな発見を盛り込んだ復刻だそうで、きっとものすごい熱量だったかと思います。
今回のプロジェクトでは〈リーバイス®︎ ビンテージ クロージング〉のラインナップのなかでも、まだ存在していない1942年モデルの復刻をおこないました。
そもそも501®︎は細かく仕様変更をおこなっていて、変更があった年度ごとに区別することができます。しかし、1942年モデルはぼくが本を出した頃には存在が認知されておらず、37年モデルと同じものとして扱われていたんです。
—一般的には42年から大戦モデルが登場したと思われていますよね?
そうです。37年から41年までがシンチバック付きでサスペンダーボタンが無い年式で、42年からはシンチバックが廃されて鉄リベットや月桂樹ボタンが使われるようになった大戦モデルになる、と一般的には思われています。しかし、最近になって1942の年度表記が入っているフラッシャー付きのデッドストックでシンチバックが付いている個体が発見されて「これは一体なんだろう」と調べ始めたのがきっかけです。

実は大戦モデルから片面タブに移行する際にディテールは片面タブだけれど生地は大戦モデルと同じものを使用した46年モデルが存在していたように、37年モデルから大戦モデルへと切り替わる時にも過渡期的なモデルが存在していました。それが1942年モデルなのですが、具体的には42年の年初から8月頃までのごく短期間のみ生産された仕様のようです。
—1942年モデルの存在はいつ頃知られるようになったんでしょう?
数年前だと思います。ベルベルジン25周年と〈リーバイス®︎〉501®︎の誕生150周年を祝うタイミングで、ちょうどよく新たなヴィンテージピースに関する発見があったこと自体が奇跡的ですし、プロジェクトの話をもらった時に真っ先に頭のなかに浮かんだのが、1942年モデルの復刻でした。

今回の復刻ではフラッシャーも忠実に再現。よく見るといちばん下の段のCopyrightの年号が「1942」と記載されているのがわかる。

もちろんギャランティチケットも1942モデル仕様。通常はツーホースマークの上の文字がORIGINAL RIVETだが、こちらはCOPPER RIVETになっている。
—具体的に1942年モデルの特徴は?
まず、1942年モデルの発見のきっかけになったフラッシャーですが、年度表記が1942になっています。これ以前の表記は1937で、大戦モデルになるとフラッシャーの形状そのものが変更になります。
また、その下のギャランティーチケットもORIGINAL RIVETではなくCOPPER RIVETの表記になっています。ちなみにこのギャランティーチケットだけでも、もし市場に出てきたら20万円ぐらいするんですよ。

特徴のひとつであるシンチバック。メタルパーツが黒染めされているのもポイントだ。

バックポケットの補強として、カンヌキステッチではなくリベットがあしらわれる。しかも鉄製。
そして全体の構成は37年モデルと同じくシンチバックと赤タブが付く仕様ですが、カニ爪が黒染めになっています。これはおそらく40年の終わり頃から第二次大戦直前まで使われていたパーツです。また、大戦モデルと同じく鉄製の裏リベットと厚手の生地が使われています。

左が異なる年代のシンチバックで、右が今回復刻した1942モデル。比べるとよくわかるが、バックヨークの被せが逆になっている。
また、1942モデルと大戦モデル初期のアイテムのみバックヨークが上から被せる形で縫製されています。モデルチェンジに合わせて縫製工程やパターンの都合で仕様変更したものの、すぐに元の形に戻したであろう試行錯誤の跡がうかがえますね。
—それにしてもすごい発見ですね。まったく知りませんでした。
今回のプロジェクトにあたって内田さんとポールさんに1942年モデルの特徴について説明して復刻を提案させてもらったら、ふたりも「確かにこれはすごい品だね」と驚いてくれて、ぼくが持っている1942年モデルをお貸しすることになりました。
—1942年モデルの実物を藤原さんが所有していたのも運命的ですね。
そうなんです。ぼくの個体は7〜8年前に手に入れていたものでだいぶ色落ちもしていますが、デッドストックはぼくが知る限り世界に2本しかありません。これだけ数多くのレプリカメーカーが国内外に存在するなかでも1942年モデルを再現しているブランドはありませんから、まず最初に〈リーバイスビンテージクロージング®︎〉で実名復刻を出来たのはすごく良かったですね。