好きを追求したからこそ完成した、メイド・イン・ユーレカの特別仕様。
その時代ならではのモノづくりだからこそ持ち得る風合いや仕様を備えたヴィンテージデニムと、その完全な再現を目指して高みを目指す復刻モデル。ヴィンテージの魅力を知り尽くした藤原さんは、どのように今回の復刻に臨んだのでしょう。

—1942年モデルの特徴が明らかになったことで、今後は〈リーバイス®︎ ビンテージ クロージング〉のラインナップに定番として加わる可能性もあると思いますが、今回の限定復刻の特徴は他にありますか?
たしかに、数年後に1942年モデルがラインナップ入りすることはあり得ますね。
〈リーバイス®︎〉はサンフランシスコ本社に「ユーレカ イノベーション ラボ」という加工技術や縫製を研究開発するラボを持っていて、当時のアメリカで使われていたヴィンテージミシンから最先端の設備を用いてレシピやプロトタイプを製作しています。
今回の復刻ではそのラボで製作することになったので、Made in San Franciscoでさらに限定されたMade in EUREKAを謳うことができました。

インラインモデルでは見られない、スペシャルなデニムにのみ配される「ユーレカ イノベーション ラボ」と「CONE MILLS」の下げ札が付属。
また、1942年モデルの生地は大戦モデルと同じく厚いものが使われていますが、内田さんに相談したところ、以前に〈リーバイス®︎ ビンテージ クロージング®〉の大戦モデルで使用していたコーンミルズ社のホワイトオークデニムが少量残っていることが分かり、それを採用しています。
—最近は過去の復刻モデルが「バレンシア工場製」や「コーンミルズ社のホワイトオークデニム使用」という風に区分けされてヴィンテージ市場でも人気が出ていますが、現在は廃盤になっている生地を使った特別なファクトリー製となると、発売された時点で既にある種ヴィンテージピース的な意味合いもありますね。
やっぱり、それらのアイテムはいい色落ちをしますからね。もちろん、さっき説明したオリジナルの1942年モデルのディテールからフラッシャーやギャランティーチケットまですべて再現していますし、サンプルが出来た際にアメリカに渡ってチェックしてこの年代の縫製の特徴やぼくの私物の個体の癖も可能な限り再現しています。

ボタン裏には「ユーレカ イノベーション ラボ」製の証である「E」が刻印される。
オリジナルの復刻モデルとの違いで言うと限定数のタグが入るところと、ボタン裏に「E」の刻印が入っています。ポールさんに「ビッグEという意味ですか?」と訊ねたら「EUREKAのEだよ」と答えが返ってきました。ビッグEだったらもっと良かったんですが(笑)。
—それにしても、ヴィンテージショップにとって復刻モデルというのはどういう存在なんでしょう?
仮に1942モデルのオリジナルがデッドストックで発見されたら数千万円になりますが、復刻であればファッションとして穿くこともできる価格帯ですから。
「ベルベルジン」にも「ヴィンテージは買えないので〈リーバイスビンテージクロージング®︎〉にしたんですが、糊付けしてくれませんか」や「〈リーバイスビンテージクロージング®︎〉のなかでいちばん良い色落ちのモデルはどれですか?」と相談に来るお客さんもたくさんいます。そうやって復刻モデルを通じて良いジーンズの魅力を体験してもらって、そういった人たちがいつかヴィンテージも穿いてもらえたらすごく嬉しいですね。

—今回の復刻プロジェクトはデニムに限らず好きなことを追求している人たちにとっても勇気づけられる話だと思います。
単なる古着屋の店長が世界的企業と一緒にモノづくりできるなんて夢のような話ですし、501®︎XXの歴史における新たな発見が今回の復刻で形になったことで〈リーバイス®︎〉の発展やジーンズの魅力の普及に役立てたなら、一介のデニム好きとしてこんなに嬉しい話はありません。次の30周年でも、デニムとジーンズの魅力を伝えられる取り組みができたら最高ですね!

LEVI’S® VINTAGE CLOTHING 501®︎XX 1942MODEL ¥140,800
1937年モデルから大戦モデルへと切り替わる過渡期に、わずか数ヶ月間のみ生産されたのが今回復刻した1942年モデル。一般的に1942年は大戦モデルと言われているが、本個体はシンチバック付きで、バックヨークの被せが逆に仕立てられているのが特徴です。〈リーバイス®︎〉のプロトタイプなどを手掛けるラボ「ユーレカ イノベーション ラボ」で限定生産された特別な1本で、デニム生地は、いまはなきコーンミルズ社のホワイト・オーク工場製のデニムが贅沢にも使用されます。