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あの企業のオフィスって、どんなインテリア?
Interior for Office

あの企業のオフィスって、どんなインテリア?

職場で過ごす時間は1日の多くを占めるのだから、その環境は居心地がいいに越したことはありません。仕事の意欲が上がったりリラックスできたり、働く空間はモチベーションに繋がる大きな要因です。そこで今回注目するのは、オフィスのインテリア。住むのではなく働くことを目的にすると、なにをどのように配しているのでしょう。気軽に踏み込めない3社に潜入してみると、自宅のインテリアのヒントも見え隠れしていました。

BEAMS フロアごとに異なるフリースペースに並んだ逸品の数々。

普段はなかなか入れないオフィスを見せてもらえる貴重な機会、まずはアパレル企業のオフィス インテリアが見てみたい。ということで、最初にお邪魔したのはセレクトショップの先駆けで、30以上のレーベル、ブランドを有する「ビームス」の本社。原宿の中心地にオフィスを構え、3階から7階までの5フロアにわたって各部署が配置されています。本社の内装を手掛けたのは、数々の店舗のディスプレイを担当してきたクリエイティブ ディレクターの南雲浩二郎さん。現在はモデルルームのインテリアコーディネートや内装デザインから展覧会企画構成など、社外からの受注を中心に活動しています。

エレベーターからのアプローチでは、「ビームス」とゆかりのあるアーティストによる作品でお出迎え。その特別なアートは、「ビームス」がカルチャーに精通していることを実感でき、来社したゲストをもたのしい気分に誘います。迫力満点の作品はすべてのフロアで展示され、まるでギャラリーのようです。

3階から7階まで、部署や業務内容により各フロアで分けられているそう。3階から順番に見ていきましょう。

来客の受付があるのは3階で、各フロアに配した個室やテーブルへ案内します。スタイリストやアパレルの取引先はもちろん、協業相手の異業種企業の方から、アーティストまで「ビームス」に来社するのは年齢や業種がバラバラ。そんな多様なひとたちが訪れる受付前のベンチを組み込んだシェルフには、民芸品やモダンなオブジェなど、多くの人が反応できるように幅広いジャンルのものがディスプレイされています。そして受付の隣には、創業当時から現在までのアーカイブスを年表式に展示。通常一般公開はしていませんが、今回特別に見せていただきました。

「ビームス」のオフィス インテリアで特筆すべきは、各フロアにある窓際の開放的なフリースペース。休憩やミーティングなどで自由に使用できる場所で、フロアごとに異なるテイストのインテリアで設えられています。店舗で使用されていたファニチャーを再利用して南雲さんがデザインしました。

社員はどのフロアのフリースペースでも利用でき、別の部署のひととコミュニケーションをとれる場所でもあるんです。こちらのバーカウンターは3階のフリースペースにあり、お酒を楽しむだけでなく、部署や担当業務の垣根を越えたコミュニケーションの場として社内スタッフから人気があり、毎週金曜日の夜間は社内バーとして使用されているほか、イベントの際にはお取引先様へ定期的に開放されているそう。

続いて4階。ソファ側にブースが設置され、隣の視線が気になりません。窓際にはカフェのようなハイカウンターテーブルがあり、黙々とPC作業に没頭するひとの姿も。奥には当時「ビームス 原宿」の3階にあった「トーキョー カルチャート by ビームス」で使用されていた「ザ コンランショップ」のソファと、代官山(現こどもビームスの場所)にあった「ビームス ボーイ ホーム」で使用されていたテーブルが鎮座。また、ブラックに塗装した壁が落ち着きを演出し、〈フロス〉のウォールランプがシックなイメージです。

5階は、ブルーで統一したポップなフリースペース。使用していない青い家具をここに集めて、壁もブルーに塗ったそうです。窓の外の景色と繋がっているような爽やかな空間には、アルネ・ヤコブセンやアルヴァ・アールトのチェア、ハンス・J・ウェグナーやジョージ・ネルソンのテーブルなど、名作ファニチャーがずらり。奥に飾られたメトロポリタン美術館のポスターがいいアクセントになっています。

ユニークなフリースペースを設けた6階。ひな壇状になったベンチは高い視線から景色を眺められて気持ちがいい。床材と同じ素材で設計し、壁をベージュに塗装したナチュラルさが落ち着きます。ゆったりと座れるので、ほかのフロア以上にリラックスできそう。3段のベンチを活かして、内覧会や社内のレクチャーを行なうこともあるそうです。

すべてのフロアを自由に使えるフリースペースですが、7階だけは少し特別な空間。こちらのチェアは、デザイナーのフィン・ユールによるヴィンテージのチーフテンチェアはニールス・ヴォッダー制作のオリジナル。数十年前に「ビームス ハウス 丸の内」で使用していたそうですが、時を経て希少価値が高まりミュージアムピースに。照明はフィン・ユールの自邸と同じものを使ってスタイリングした、世界観にこだわり抜いた一画です。〈スヴェンスク・テン〉のキャビネットにルーシー・リーの器を飾り、その雰囲気を加速。おいそれとくつろげませんが、日常的に本物に触れられる環境は審美眼を磨いてくれるはず。

そして7階には社長室も。設楽社長は不在でしたが、ちょっぴり拝見。中央に配置したソファーとテーブルは、インテリアデザイナーのウラジミール・ケーガンによるもの。トム・フォードが〈グッチ〉の内装でウラジミール・ケーガンを起用するより以前に、ニューヨークのスタジオでオーダーしたそうで、「ビームス」の先見の明が伺えます。デスクは〈ベーカー〉社製で、ウォルト・ディズニーが使用していたものの復刻版。シェルフにさまざまな書籍やオブジェが飾られている様子から、多岐にわたるジャンルを網羅している設楽社長らしさを感じつつ、「ビームス」の全貌を垣間見たような感覚です。

ランチや休憩に利用するひとが多いフリースペースに、名作ファニチャーが並んでいる「ビームス」の本社。日頃からそれらを使用していると、センスを磨けるような気がします。少し背伸びをしてでも、逸品と呼ばれているものを愛用したいものですね。

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