どんな場所でも同じものを着ていたい。
公園や道端の草木に、天気雨やビル風まで、街の自然に目を向け、都会でのアウトドアウェアのあり方を追求する〈ザ・ノース・フェイス パープルレーベル〉。
その中でも、マウンテンパーカは〈ザ・ノース・フェイス〉のマスターピースであり、ブランド誕生から続く定番アイテムです。リサイクルポリエステルとオーガニックコットンを65対35で混紡し、高密度に織りあげた「65/35ベイヘッドクロス」を採用した1着は、アウトドアを出自としながら、シルエットをリデザインしたり撥水加工を施すことで、時代に合わせて街にも馴染むような進化を重ねています。
そんなブランドの顔とも言える服を池松壮亮さんがまとい、立石を散策した今回の撮影。〈ザ・ノース・フェイス パープルレーベル〉が大事にする“都会ならではの自然を記録する”というキーワードに紐付け、池松さんにも街とそこにある自然を写真に記録してもらいました。
ー 街をぶらぶらと歩きながらの撮影でしたが、立石はいかがでしたか?
池松: 今日初めて来ましたが、もともと荒川を超えた先のこの辺りにいつか来てみたいなと思っていました。生活の匂いが温かく、古くからあるものと暮らしやすさが調和する下町という印象を受けました。高い建物が少ないから空が広くて、とても気持ち良かったです。
ー 街歩きのお供として着てもらったのは、〈ザ・ノース・フェイス パープルレーベル〉のマウンテンパーカです。
池松: すごく軽かったです。重さもそうですが、着たときの心地よさと軽やかさがありました。それに、日常のさまざまなシーンに寄り添うというようなブランドのコンセプトがいいなと。例えば、田舎の街を歩くようなときと、都会の高級なホテルに入るとき、出来る限り同じものを着ていたくて。どんな風景にも馴染むようなものが普段から好みなので、この服はすごくタイプです。古くからあるものがさまざまな時代のアップデートや流行を経ながらも、変わらないことと変えていくことを繰り返しながら現在の形があるという背景も含め、いいものに出会えたなと思います。
ー 今回の企画についてお話ししたとき、池松さんから撮影地として下町を提案していただきましたが、何か理由があったんですか?
池松: どこで撮ってもマッチするだろうなとは思ったんですが…。せっかくなので馴染みのないところをこの服を着て歩いてみたいと思ったというのと、風景として東京を映すよりも、背景に東京の光や匂いが映り込むような場所の方が、この企画にも、E-WAXさんの写真にも合うのではないかと思いました。
ー “都会の中の自然を記録する”というキーワードを〈ザ・ノース・フェイス パープルレーベル〉は大事にしています。なので、今回は街を歩きながら、自然や風景の写真を撮ってください、とリクエストさせてもらいました。
池松: 現代人にしては普段から写真を撮ることが少ないですし、みなさんに見られながらでちょっと恥ずかしかったですね。「ああ、こういうのに反応するんだ」って思われそうで(笑)。
ー 撮影終盤、民家の間で瞬時にカメラを構えた姿が印象的でした。何かを思って撮られたのでしょうか?
池松: 庭にものすごい数のタオルがかかっていたんです。洗濯物が多くて大家族なのかなって。ただ気の赴くままに反応したものをおさめてみました。なんで反応したのかは後から考えればいいことだと思います。
ー 〈ザ・ノース・フェイス パープルレーベル〉には、stroll(=散歩)というラインがあるほど、ブランドにとって散歩は身近なものです。池松さんは普段散歩されますか?
池松: します。趣味かもしれないです。気分転換にも、考え事をするにもいいので、気持ちの良い午前に、暇な午後に、夕日が綺麗な夕方に、1日の終わりに1、2時間歩くことがよくあります。
ー 役を演じている時間が多い池松さんにとって、散歩しているときが数少ない自分に戻れるオフということですか?
池松: 演じている時間も演じていない時間も自分の日常の一部で、オンオフみたいなことはあまり感覚としてありません。演じているときだけがオンではなく、散歩しているときに考えつくこと、ひらめきや発見がたくさんあります。それが日常です。
ー 話は変わりますが、去年8月末に「ホリプロ」から独立されました。きっかけはなんだったのでしょうか?
池松: 全く考えていなかったかというと嘘になりますが、去年ふと、いまかもしれないと感じて独立という決断に至りました。俳優というイメージ化された人種としてではなく、もう少し1人のひととして独立した態度をとってみたいなと思いました。責任や結果がダイレクトに返ってくるところに身を置いて、何ができるのかチャレンジしてみたいと思いました。
ー 今回のようなファッションの撮影もあまり印象がありませんでしたが、心境の変化があったんですか?
池松:
20代前半の頃は少しやらせてもらっていたんですが、そこから一時期そのような仕事をいただいても、ほとんど断ってしまっていたんです。他に適しているひとがいるだろうなと感じていたのと、俳優という仕事をしながらも、作品以外のところでさまざまな服を着飾る中で、消費を煽っているような気持ちになってしまったんです。そのことに心がしっくりときていなくて。こういった撮影は本当にひさしぶりでした。
独立してからいただく連絡も自分で受けるようになったんですが、今回の企画のオファー時に、すごく丁寧なメールをいただいて。そのことでやってみようと思えたんです。こういう仕事だからやる、やらない、ではなく、よりシンプルに、そういった部分にいま自分が反応していることを感じています。1年目のような気持ちで、これまで既に経験してきたことに対して、もう一度出会い直していっているような感覚があります。自分の変化とともに、出会いとドキュメントを繰り返していくことが人生だと思っています。
ー 今回撮影してもらったフォトグラファーのE-WAXさんとは昔からのお知り合いで、出会いはE-WAXさんが働いていたとあるアパレルブランドのお店だと聞きました。昔からファッションはお好きなんですか?
池松: 昔から流行としてのファッションには全く興味が向きません。そうではなく、普段ひとが環境や生活をもって着るもの、例えば広い意味での衣装や作業服などにとても興味があります。なぜこのひとはこの服を着ているんだろうと考えたり。映画を考える上でも重要なことのひとつだと思っています。
ー 各作品の時代背景や役のキャラクターなどに対して、“それを着る理由”を持った衣装が用意されていますもんね。ちなみに今日の私服は上下ともに黒色ですね。
池松: いつからか黒ばかりです。これも生活と衣装みたいな話になるんですが、俳優をやっていると、撮影の日は衣装を着ている時間がほとんどで、私服を着ているのは、行って帰ってくるときだけなんです。俳優というさまざまな色を身に纏う職業において、普段から色を身に纏いたいとは思えません。それよりも自分が目指す表現において、いかに常に自分をフラットに保てるかということを考えています。気分があがるでもなく、下がるでもない一番しっくりくる状態を保つために黒い服を自然と選ぶようになりました。
ー ここまでお話しを聞いていて、池松さんの一貫した信念のようなものを感じました。最後に、これから先、挑戦したいことを教えてください。
池松: 基本的にはこれまでやってきたこと、目指してきたことに変わりはありません。そのことをより深く、広く、やっていきたいと思っています。20代では深くに重きをおいてやってきました。30代のいまはより広くをさらに考えています。映画や映像、自分の信じる表現を突き詰めることと、そのことをより広く伝えること、可能性や可動域を広げていくことはどちらも重要なことだと思います。消費社会においてその2つは矛盾するものなので、とても難しいことではありますが。独立して慣れない大変なことも多いですが、本来やるべきだったこと、これまでやらずにすまされてきたことがたくさんあったと感じます。そういうことも含めて生活ですし、やれるところまでやってみようと思っています。その中で自分に何ができるのか実験のように楽しんでいければと思います。
池松壮亮が撮る街と自然。
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