03 名付けようもない時間に

ヘアスタイリストのHiroさんは、文字通り“つくる”ことでそのキャリアを切り開いてきました。2023年12月に、街中に点在する証明写真のブースを使って撮影した作品を集めた個展「ID-PHOTO EXHIBITION」を開催したところ、海外を中心にバズり、海外から直にオファーが来ることも増えたそう。
ヘアスタイリストのHiroさんは、文字通り“つくる”ことでそのキャリアを切り開いてきました。2023年12月に、街中に点在する証明写真のブースを使って撮影した作品を集めた個展「ID-PHOTO EXHIBITION」を開催したところ、海外を中心にバズり、海外から直にオファーが来ることも増えたそう。
「作品作りに関しては、面白いものがつくれればそれでいい。だから、僕は師匠につくという選択をしなかったのかもしれません。誰かに倣って、うまいヘアスタイルをつくるんじゃなくて、唯一無二のものを生み出したいので」


ご自宅にお邪魔させてもらうと、ウィッグを被ったマネキンやら髪の毛が積み上げられています。自宅では、ウィッグを作り、絵を描いて過ごすことも多いそう。どちらも単なる趣味ではなく、ヘアスタイリストという仕事にしっかりとつながっているのです。
「ウィッグは即興の実験みたいなもので、試しながらこんなのあったら面白いなと思ってつくっているだけです。単純につくりたくてつくっているときもあれば、仕事のためというときも。リファレンス(参照資料)を送りたいけど、検索してもイメージしているヘアスタイルが見つからないから、じゃあ作るかって」

では、もう一つの絵を描くことは、どんな意味合いがあるんでしょう?
「ロンドンに渡った時に、ある人から『この仕事をするなら、写真家やアートに詳しくならないとダメだ』って。それで美術館で一緒に絵を見ていたら、『この絵では髪の毛がこう描かれているけど、実際に作ってといわれたら、どうする? そうやって、自分のヘアスタイリストという仕事と照らし合わせながら、美術館を見て回るといいよ』とアドバイスをもらいました。で、じゃあウィッグで作る前に、そもそも自分で描けるのかなと考え、そこから絵を始めました。今は抽象的な絵を描くことが多いですね。好きな色で好きなように描いているだけですけど」

ヘアスタイリストという仕事にプライドをもつHiroさんは、自宅で過ごす時間も惜しみなく、その研鑽に注ぎ込むといいます。ただ面白いものが作りたい。その純粋な思いに突き動かされて、自身と対話するかのように手を動かし何かをつくりあげていく。その時間はHrioさんにとってのセルフケアですか?
「あえてセルフケアという意識はないですが、ウィッグ作りや絵描きに没頭して無心になるその時間が結果的にセルフケアになってるかもしれません。外で仕事をして、家でもヘアのことを考えて作っているから、周りからはなんでそんなにがんばれるの? と驚かれるけど、自分としてはただ楽しんでやっているだけなんです」