まずはじめに、〈THE モンゴリアンチョップス〉について教えてください。
山本 大阪・新世界を拠点に14SSシーズンからスタートしたブランドで、今年で4年目です。安藤が代表で僕がディレクターと言っているんですけど、あくまで形だけで、経営のこともデザインのこともふたりで一緒に考えています。
過去のコレクションをみると、「デニムの学ラン」をテーマにしたグラデュエータージャケットなど、日本的なモチーフを好まれている印象です。そうした流れからも、今回の企画はまさにドンピシャの指名ですね。
滝 〈THE モンゴリアンチョップス〉との最初の取り組みは、去年のFWシーズンのフォーカスアイテムである「フューリーライト」と「クラシックレザー」のプロモーション。リーボックが注目している4つのブランドと一緒にムービーをつくったなかのひとつでした。
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滝 今年の4月には、リーボック クラシックストア あべのHoop店のオープン限定で歌舞伎をテーマに「CLUB C」をデザインしてもらっています。すでに互いのクリエイションは知っていますし、今回のテーマに関してはおふたりが最適だろうというので、お声がけしました。
山本 なので、めちゃめちゃハードル高かったですよ(笑)。ぼくらのことを評価していただいての指名だったので、がっかりされたくないなとか、過去の仕事を超えなきゃいけないっていう気持ちはありました。ぼくらも特攻服をつくったことがなかったので、「次はこういう企画があるんだけど」っていう連絡をいただいて、いざやってみたら大変でしたね(笑)。
いまも刺繍が印象的な「BOKU HA TANOSHII」Tシャツの〈リーボック〉バージョンを着ていらっしゃいますね。〈THE モンゴリアンチョップス〉はコレクションで刺繍を用いることが多い印象ですが、特攻服の特徴でもあります。
山本 プリントにはプリントのよさがあるんですけど、“刺繍のありがたみ”みたいなものが、ぼくらのなかにはあるので。ハッキリ文字が出したいときは機械刺繡、もっと味を出したい商品は手振りなど、最終的な仕上がりによって刺繍屋さんを選んでいます。今回は、以前にもお願いしたことのある手振りができる職人さんにお願いしました。四国に住んでいるおばあちゃんなんですけど、機械刺繍にはない厚みが出せるんです。でも、ここまでこだわっておきながら、じつは僕らが勝手に用意した撮影スタッフ用のTシャツなんですけどね(笑)
平面の状態ですとバランス感がつかみづらいと思いますが、その辺りはどう意識されたのでしょう。
山本 刺繍を入れる実物の上に実寸でプリントアウトしたグラフィックを貼り付けて、その状態で刺繍屋さんに送って、このバランス感で作りたいっていうのをやり取りするんですけど、最終的な立体感は想像でいくしかない部分はありますね。向こうもプロですので、そこは汲んでいただけています。
特攻服は、ファッショントレンドとしても注目されていますね。
滝 〈リーボック クラシック〉のなかで、SSシーズンは継続の「続(ゾク)」だったんですけど、17FWはトライブの「族(ゾク)」がキーワードとして出てきたんです。暴走族って日本のサブカルチャー/ストリートカルチャーでもあるし、その点がリーボック クラシックのベースとも重なってくる。トレンドもおさえつつ、うまく着地した感じです。
山本 「ZOKU RUNNER」っていうシューズを日本の暴走族で表現するゾクゾクする感じであったり、いままでの〈リーボック〉の歴史みたいなところは大きく崩さずに、でも新しいことをぼくらも考えましたね。
リーボック クラシックの「リ」が「履く」っていう文字になっていたり、「イ」は「衣服の衣」になっていたりと、当て字の“履衣菩躯々疾駆”は、そうした物語ありきで出てきたんです。
資料によると、「“『ZOKU RUNNER』は身体、精神、これまでReebokが積み重ねてきた感覚までも包み込み、次の時代へと駆け抜ける”というイメージを軸にデザインした」とあります。当て字にもしっかり意味があるのですね。
履は“履物”を表し
衣は“おおい包むもの”を表し
菩は“心・精神”を表し
躯は“身体”を表し
羅は“時代のつらなり”を表し
疾駆は“速く駆け抜ける”
山本 先ほどおっしゃっていただいたように、ぼくらは日本人だからわかる面白さをデザインに取り入れているんですけど、特攻服はど真ん中すぎるというか、題材にするには難しいのでやったことがなかったんです。
ぼくらのものづくりは、普段からコンセプトを説明できるところまでつくり込むことを意識しているので、その先を掘っても何も出てこないっていうのは、ちょっともったいないなと思っていて。今回も実物や資料を見たりしていくなかで、背中の刺繍のバランスや内容を詰めていきました。
「日本人の誇りを胸にありがとうの気持ちを〜」など、当て字以外の言葉にも〈THEモンゴリアンチョップス〉らしさを感じます。
山本 そこも、特攻服には「ヤン詩」って言われる詩を書くんですけど。じゃあ、ぼくらはなにを書けるかっていうので考えたとき、スローガンに掲げている『BOKU HA TANOSII』という言葉が〈リーボック〉とも共通する部分かなというので提案させてもらいました。特攻服はどうしても怖くなりがちなので、ちょっと抜けているようなイメージに仕上げることも意識しています。撮影現場でも「かっこいい」って言ってもらえたのは、ありがたいですね。
特攻服だけでなく、ベクタージャージもデザインされていますね。
山本 テーマは同じで、刺繍の配置やサイズを変えたジャケットを青と黒の2色で用意しています。パンツは裾を縛ったニッカポッカじゃなくて、特攻パンツって言われるズドンとしたイメージがぼくらのなかにあったんです。ただ、それだと靴が隠れちゃうということで裾に細工をして、最終のバランスを現場で調整します。
撮影はこれからですが、ムービーの見どころとしてはどこになりますか?
山本 あくまで「ZOKU RUNNER」を引き立てるムービーなので、特攻服がうまいことスパイスになっていればいいですね。ムービーを観て、気になって掘っていったときに「ZOKU RUNNER」であったりだとか、特攻服やぼくらのことに興味が出る――。そういうところでゾクゾクしてくれたらいいのかなって思います。
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そうして、完成したスペシャルムービーがこちら! 特攻服に身を包んだ俳優の中川大志さんと女優/モデルの織田梨沙さんをメインキャストに据え、DATSのスリリングな楽曲でゾクゾクする仕上がりに。暴走族と「ZOKU RUNNER」という、日本のストリートカルチャーの時代を超えた融合を見事に表現されたムービーとなっています。