なんばグランド花月の舞台


いまはもう、緊張することはなくなったというくるまさん。舞台袖では相方のケムリさんと、出番中の漫才師を見ながら談笑し、リラックスムード。
前の漫才師が袖にはけてきて、くるまさんの出番がやってくる。そのときには一変、スイッチをONにして一気にギアチェンジ、漫才師の表情に。
舞台の上では軽々と笑いを攫っていく。さすがは王者、この日1番の笑い声が会場に響く。


お笑いをはじめとして、さまざまなことを考察するのが好きなくるまさんですが、自らの性格はこう分析している。
「ぼく、長期的な脳みそがないんですよ。プランとか立てられないし、先々のことは考えられない。その場で、思いついたことを口に出したりするのが得意なんですよ」
たしかに、テレビの中でも、舞台の上でも、くるまさんの瞬発力はハンパない。どんな暴投でも打ち返していく。
「だから貯金とかもできないんですよ。20代後半は改めなきゃと思ってましたけど、30歳になっても変わらなかったんで、いまはもう、できることだけ伸ばしていこうと思ってます。これからも、その場その場に行ってワーワーするひとでいつづけたいです。異物として存在するほうが、なんか意味があるだろうと思うんです」
各方面から、くるまさんの評判は聞こえてくる。現にM-1のほかにも、第45回ABCお笑いグランプリの王者にも輝いて、笑いの才と鋭さは同世代のなかでも頭ひとつ抜けている。その基礎となっているのは、何なのか。
「ぼくの地元は、ブックオフがふたつある街だったんです。駅前に1個と国道沿いに1個。そのふたつの間に、自分が住んでいるマンションがあって。で、算数と理科が嫌いだったんで、その授業があるときは、学校へは行かないでブックオフに行って、ずっと立ち読みしてました。その影響は間違いなくあると思います。そこでいろんな本を課金せず読んじゃったもんだから、いまは罪滅ぼしのように買ってます。立ち読みは褒められるものではないけど、お金のない少年たちにとっては大事なカルチャーのひとつだと思うし、セーフティーネットみたいな側面があったんだろうなとも思います」