俳優とはほぼ……。
ー今日撮影したような、自然のある場所はお好きですか?
割と好きです。今日のように撮影の合間に来ると気分転換になります。(俳優仕事で)外での撮影が多いですが、同じ寒さでも今日は気持ちよさを感じました。
ーもともとの出身地は、どういう場所なんですか?
兵庫県なので海や山もどちらもありましたが、うちの周りは山や田んぼでした。家の前の道路など近所の友達と外で暗くなるまでずっと遊んでました。
ーそんな場所から俳優を目指すようになったきっかけはなんでしょうか?
きっかけは、小学校4年生の終わり頃の転校です。引っ越した先が本当に好きになれなかったんです。その土地に着いたときからずっとそうで、自分でもわかるくらい、そこからどんどん性格がひねくれました(笑)。それなりに友達もいたけど、つまらないとどんどん思うようになって、そんな中BSテレビで映画を観たときに、この中ではいろんなことができるんだな、面白いなと。あまりにも日常が退屈すぎて、そういうのに憧れてしまったんでしょうね。その後、中学を卒業してからすぐ働くようになってからは、映画館に通うようになりました。
ー中学卒業後にすぐ働くというのは珍しいですよね。不安はありませんでした?
兄がいるんですけど、中学卒業してすぐ働いていた兄を見ていたので、普通に生きていけると思ってましたし、とにかく住んでいる町が好きになれなかったから、早く出て行きたかったんです(笑)。お金を貯めて、すぐにここから出ていきたいという、その一心でした。中学卒業したらお金を貯めて町を出るというのは、小学校6年生ぐらいの時には決めてました。それだけ嫌だったんですよ。
あんまりその町のことを言うと、そこに住む人に失礼だから言うな、と言われているんですけど、つい…。自分でも理由はわからないんです。何があったからとかじゃない。もう、町の色合いがなんか暗い、なんでお父さん、お母さんこんなところに引っ越したの……っていうくらいとにかく思いつめてました。
ー(笑)。その後住んだ場所でそれくらい嫌いになった場所はあるんですか?
あります。どうしても好きになれない場所がありました。私には関係のない街って感じがするんです。自分の好きな場所にいるというのは、本当に大事なことだなとつくづく思います。その場所に帰ってきて、そこから「いってきます〜」って行くわけだから。絶対的に自分の好きな場所に住まなきゃダメだと思いました。
ー「住めば都」みたいな言葉もあるけど、そうじゃなかったと。
その言葉は家の中のことだと思います。好きになれなかった町でも、家の中は大好きでしたから。家の中は大好きだけど、一歩外出たその町は許せなかったですね。
ー(笑)。普段の生活で一番気持ちの沸点が上がる瞬間はなんですか?
家で入る、お風呂は好きですね。
ー練習生時代も含めてずっと劇団・東京乾電池に在籍されていますが、柄本明さんはじめ先輩方から教わったことで印象的なことはありますか?
俳優として教わったことは、それこそたくさんありますが、でもやはり我慢することかなと思いますね。辛抱……、結局はそれに尽きるなと。
ー辛抱というのは、例えばどういう?
台本の読み方や身体のあり方など教わって、そういうことはある程度勝手に学んでいくものだけど、一番大事なのは、辛抱だと思いますね。どの仕事でもそうですが、言いたいことがあっても、ここはぐっと飲み込むとか。みんなでやる仕事ですから。長くやっていると、ここはこうすればいいのに、とか言いたくなるけど、そこはプロにお任せして私は言わなくていいとか。水商売だから面白い仕事もあれば、そうじゃないのもある。けどやり続けなきゃいけない。どれも我慢の一つだと思います。
ー俳優という職業は、想像以上に大変ということですよね。
俳優とは、ほぼ肉体労働です。本当に肉体労働。
ーそれでもその中に面白いと思う瞬間はあるんですか?
そうですね、自分がこれだけムキになって続けているということは夢中ということなんでしょうね。しんどいと思うことばかりですけど、夜寝るときに、ああ、あそこはこうすればよかったなとか思って、モヤモヤしたり。それだけ執着しているというか。でも、決して私はこの仕事が楽しくて好きだからやっているとは言いたくない。やはりしんどいこともあるというか、しんどいことがほとんどです。
ーこの中にわずかに……
本当にわずかです。
ー報われる時がある?
本当の本当にわずかです。
ー(笑)。俳優というのは呼ばれないと始まらない職業だと以前発言されていましたが、次も呼ばれるためにどうしたらいいかと考えますか?
それは今の仕事をちゃんとやることですね。今の仕事がオーディションでもあると思います。見た人が、あの人をまた呼びたいと、どんどん次に繋がるものですから。やはり繋がっていくものなので。