空間を自然なムードに見せるための、緻密な演出。

―ショーはどんなふうにつくりあげていったのでしょうか。ランウェイで、そういったさりげないニュアンスを伝えるのは、難しかったのでは?
浅川: ショーの全体感としては、あくまでも自然なムードのなかにほんの少しニュアンスがあったり、上手くいえないけどムードを描くということを意識しました。言葉の伝え方然り、音楽然り、ライティング然り、演出家の籠谷さんや他のスタッフとも細かいところまで打ち合わせをしましたね。

浅川: 会場も自然光がいい感じに入ってくるような会場を選んだので、それを活かすよう、ライトの角度を何度も調整したり。スピーカーの数も、6個、8個、10個と変えた時に、音の伝わり方が微妙に違うんですよね。モデルの歩くスピードとか、立ち位置とかでも全然変わってくるので、細かく詰めてつくっていきました。
一見気がつかないくらいのスモークを10秒くらいかけてファンで回して、もやがかった光のバランスをつくったり、空間に対して、細かい粒子が包むようなムードや色味を表現してみたり。柔らかいけど伝わる強さというか、ミニマルに感じることができる空間や音を、細かく計算して足すことで演出しました。


―自然光のなかで、グレーのグラデーションが美しく映えて印象的でした。
浅川: 着想源となった写真集のなかで、自然光が織りなすベージュとグレーの見え方がすごく素敵な女の子のポートレートがありまして。今シーズンはこのムードを提案したいなというのがあって、グレーをメインカラーにしつつ、グレーからトープ、ベージュ、ブラウン、ネイビー。そして、ブランドのベーシックである黒へ移行していく、という流れをつくりました。

―シュタインのさりげない強さを引き立てる、山口翔太郎さんのスタイリングもよかったです。
浅川: 翔太郎さんは表現に対して真摯でストイックで、気も合うし、普段からずっとムードの大切さを話す間柄なんです。今回のショーに関しても、どうしたらブランドらしい新しいムードが出せるのか、長い時間、ミーティングをしました。

浅川: 色を重ねていくことで奥行きやグラデーションが生まれ、全体がミニマルに見えていくんじゃないか。とか、ショーのコーディネートのときも細かい部分を一緒に詰めていきました。
―ショーの後には、インスタレーション形式で発表されていましたね。
浅川: インスタレーションに関しては、服がよりよく見える方法を、プレス視点、デザイナー視点、海外視点と、それぞれの意見を合わせて、直前までディスカッションしました。

浅川: モデルの向きとか、一度に出る人数、どのルックをどの順番で出すのが美しいのか、こちらも「自分たちらしいムード」を伝えるために、細かく詰めていきました。