緊張感と居心地の良さのバランス。その絶妙な匙加減。
ーゆっくりと落ち着いて買い物を楽しんで欲しいという気持ちの裏側には、どんな想いがあるんですか?

児島: みんなそうだと思うんですけど、お店で服を買うときって試着がものすごく大事じゃないですか。フィッティングルームで、その服を買うか決めるというか。悩む時間も含めて、お客さまにはそこを大切にして欲しい。すこしでもゆっくりと考えてもらいたいんです。
ーいろいろと思いを巡らせますもんね。

児島: そうなんです。どうしよう、予算オーバーだけど欲しいな、とかね。そこで答えを急がずに寛ぎながら考えてもらえたらうれしい。だから入り口脇のフィッティングをプライベートな空間にしたんです。
スタッフとお客さまのコミュニケーションも大事なので、カウンターをつくったりとか、店内や外のテラスにはベンチをつくって、お連れのお客さまにもゆっくりと過ごしてもらえるようにしています。



ーサロン的な滞在の仕方がある一方で、アートギャラリーのようなムードもあって、いろんな要素を感じます。
児島: 個人的にはギャラリーの程よい緊張感も好きなんですよ。だけど、それを押し付けると居心地が悪くなってしまう。そこも二俣さんにお願いをした理由でもあるんです。緊張感と居心地の良さのバランスというか、その絶妙な匙加減を上手に形にしてくれました。

ー店内に置かれているテーブルや椅子、それに花瓶などもこだわっているんですか?
児島: 調度品に関しては自分がセレクトをしました。私物も結構持ってきていますね。
ーどういったものになるんですか?
児島: 家具はフランスやスイス、イギリス、フィンランド、日本のものに至るまで、いろいろ混ざってます。土器は日本の古いもの、李朝や沖縄琉球のものを置いています。ラグはアフガニスタンのものですね。自分好みの空間に仕上がったから、家具も自分が好きなものが合うだろうなと思って。
ー店内に配置しているオーディオもいいですよね。

児島: あれはディーター・ラムスがデザインしたオーディオで、〈ブラウン〉のものなんですよ。オーディオもいろいろと考えて、最初は〈JBL〉の古いスピーカーを入れてレコードもしっかりセレクトしようと思ったんですが、音が立ってしまうと買い物の邪魔をしてしまうので、空間に合うデザインを優先して選びました。だけど、天井の高い空間に音が反響して気持ちのいい音が鳴っているので、結果オーライでしたね。BGMはボーカルのないジャズやアンビエントを流して、あくまで心地よく買い物ができる音楽をセレクトしています。
