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ポッドキャスト「カルチャーと街づくりの経済学~カルチャースケーパーズ~」。二人目のゲストはシェフの原川慎一郎。

「フイナム」も番組作りに参加する、ポッドキャスト「カルチャーと街づくりの経済学~カルチャースケーパーズ~」。毎週火曜朝の週一配信でスタートしていますが、聞いていただけましたでしょうか?

ホスト3人(「グリーニング(GREENING)」CEO・関口正人氏、「ランドスケーププロダクツ(Landscape Products)」代表取締役の中原慎一郎氏、「フイナム」編集長の小牟田亮)による座談会に続き、いよいよ初ゲストの回がアップされています。

番組初のゲストは、レストラン「ビアード(BEARD)」の原川慎一郎さん。

目黒で「ビアード」をスタートし、その後はアリス・ウォータースの薫陶を受けた「ザ ブラインド ドンキー(the Blind Donkey)」を形にし、その後雲仙で新しい「ビアード」を、現在に至るまで切り盛りしています。

ポッドキャストでは、食が変える地方と未来をテーマに、#5~8が配信されています。未聴の方に向けて、各回の見どころをまとめました。気になる方はポッドキャストでぜひ本編をお楽しみください。


#5 フランスで学んだ「食」の本質

静岡のカトリック系全寮制学校からカナダへ留学し、帰国後に旅行会社やNHK関連会社での会社員生活を経て、27歳という少し遅いスタートで料理の世界へと飛び込んだ原川さん。その後、本場を体験すべくフランス・ブルゴーニュのミシュラン二つ星レストランに身を投じます。現地で言葉の壁にぶつかりながらも、ただの調理技術を超えた、現地の人々の食を通じたコミュニケーションや地域に深く根づいた食文化の豊かさに、強く感銘を受けました。

その後帰国し、名店での修行を経て2012年に目黒に自身の店「ビアード」をオープン。いわゆる“王道のレストラン”のあり方とは一線を画し、内装や空間づくりに多彩なクリエイター仲間を巻き込み、カルチャーが自然と交錯するコミュニティのような場をつくり上げました。「ニューヨークにありそうなフレンチビストロ」をイメージしたというその場所は、路地裏に佇みながらも、居心地の良さを求める人々で夜な夜な賑わう空間となっていきます。


#6 日本の食と農業を応援する「the Blind Donkey」誕生秘話

アリス・ウォータースがカリフォルニア・バークレーで創業し、世界のオーガニック・地産地消ムーブメントの源流となったレストラン「シェパニース(Chez Panisse)」。原川さんは2012年の「ビアード」オープン直後、わずか2週間で一時店を閉めて「シェパニース」でのインターンへと向かいました。そこで目の当たりにしたのは、半年働き半年休むシェフの自由なライフスタイルや、アーティストがパートタイムで働くような風通しの良い組織、そして農場と密に結びついた圧倒的なコミュニティの姿でした。

この経験が、後の「ザ ブラインド ドンキー」へとつながる大きな伏線となります。同店のヘッドシェフを長年務め、アーティスト気質でもあるジェローム・ワグズパック氏との出会いを経て、二人は「日本の有機農業を応援したい」という強い想いのもと、新プロジェクトを発足。神田というあえてサラリーマンの行き交う都会の中心を選び、一休さんの教えに由来する“謙虚さ”を意味する「ザ・ブラインド・ドンキー(盲目のロバ)」と名付けられた店は、日本の食のあり方に新たな問いを投げかけました。


#7 地方創生のリアル:1つの飲食店が寂れた温泉街の価値を2倍に変える方法

「ザ ブラインド ドンキー」の立ち上げから3年後、原川さんは東京での役割を次の世代や仲間に託し、自らが地方の点となって社会を盛り上げるべく、長崎県雲仙市の小浜温泉へと移住します。在来種や固定種の種を半世紀近く守り継いできた地元の農家・岩崎さんとの出会いに突き動かされたこと、そして1つの素晴らしいレストランができることで、寂れた温泉街がどれだけ変わるのかを自身の身をもって実験してみたいという強い好奇心が彼を突き動かしました。

外からやってきた原川さんが地元の素材の価値を改めて提示し、対価を支払う循環を実践したことで、街の景色は少しずつ変わり始めます。価格の安さだけに依存せず、価値に見合った価格設定を行うことで、周囲の宿や温泉、飲食店の価格や価値評価も自然と向上していったようです。20分圏内の畑から届く生命力あふれる在来種野菜を主役に据え、その皮や端材を湧き水で炊いたスープから始まる「ビアード」の料理は、いまや全国、そして海外からも美食家たちが目指す、唯一無二のディスティネーションとなっています。


#8 サステナブルな食と地方創生:激変する時代の中で次に向かう「ものづくり」のカタチとは?

そして2026年8月末、5年半にわたる雲仙での活動を経て、原川さんはさらなる次のステップへと動き出します。5年周期で新しい挑戦を重ねてきた彼が次に見据えるのは、全国の在来種や固定種、そしてそれらを守る若手農家をサポートするためのアーカイブ活動と、それらを発信するための新たな拠点の設立です。野菜という、お肉や高級魚に比べてまだまだ正当に価値が評価されにくい存在に光を当て、持続可能な対価を農家に還元する仕組みを模索し続けています。

さらに、まもなく50代を迎える原川さんがぼんやりと抱くもう一つの夢が「ものづくり(木工)」への挑戦です。普段から野菜を切る作業がたまらなく好きだと語る原川さんは、ゼロから形を作る陶芸よりも、自然の素材に自ら手を加えることで変化が生まれる「削る」という行為に深く惹かれているといいます。カリフォルニアのアーティストたちのライフスタイルにも刺激を受けながら、野菜から木へ、自然の力強さと謙虚に向き合う彼の新たな旅路は、すでに始まっています。

食という窓口から、農業、コミュニティ、そして地方のあり方までをも鮮やかに変えていく原川さんの実践の数々。単なる料理をつくる人という枠を超え、街や文化の風景をも描き出す姿は、これからの「カルチャーと街づくり」を考えるうえで、たくさんのヒントに満ちています。

番組では、こうした刺激的なトークを毎週お届けしています。まだお聴きでない方は、ぜひSpotifyやApple Podcastで「カルチャースケーパーズ」を検索して、原川さんとMC陣が織りなすディープな会話に耳を傾けてみてください。

毎週火曜日の朝、あなたの街づくりの視点をアップデートする新しいカルチャーの風をお届けします。

  • Photo_Masayuki Nakaya
  • Text_Shinri Kobayashi
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